まだまだ数は少ないもののクルマの完成度は高い
ハイブリッドカーのバッテリー搭載量を増やし、家庭での充電も可能とすることで買い物に代表される普段使いは電気自動車として使用可能。さらに遠出などの時には燃料を給油すればどこまででも行けるプラグインハイブリッドカー(以下PHV)は、日本ではまだ普及しているとは言い難い販売状況であるが、次世代エコカーとして世界的に有望な存在として注目されている。最近ホンダからPHVの新顔としてクラリティPHEVが発売されたこともあり、何度かにわけ、日本で買えるPHVをいま一度紹介してみよう。
【噂の真相】クーラーは燃費が悪化するけどヒーターはしないってホント?
※PHVには一律20万円の新車購入補助金も用意される。
●トヨタプリウスPHV (EV走行距離68.2km、326万1600円~)
ハイブリッドカーのパイオニアであるプリウスには、先代モデルからPHVも用意されていた。しかし先代モデルはEV走行可能距離が短い、価格に割高感があるといった原因で不発に終わった。
その反省も含め開発されたプリウスPHVの現行モデルはハイブリッドのプリウスと同じ車名のクルマとは思えないほどスタイリッシュなエクステリア、EV走行距離の延長、発電用モーターも状況によっては駆動用に使うことによる加速力の向上といった魅力を持つ。
さらにテスラのような縦長の大型モニターや屋外駐車であれば1日2.9km走行できる電力をバッテリーに貯めるソーラー充電システムといった未来的な装備も備え、まとめると「よりいいプリウス」、「プリウスの本命はPHVだったのでは?」と感じるほどの仕上がりを見せる。しかし唯一の欠点はプリウスに対し50万円高の価格に見合う価値は感じられないことで、販売も伸び悩んでいる。
●三菱アウトランダーPHEV (EV走行距離60.2~60.8km、365万9472円~)
ミドルSUVであるアウトランダーの床下にバッテリーを積むプラグインハイブリッドカー。
アウトランダーPHEVのハイブリッドシステムは駆動用と発電用のモーターを持ち、搭載される2リッターエンジンは基本的に発電に徹するシリーズハイブリッドで、タイヤを駆動するのも基本的にモーターである。しかし郊外のバイパス道路以上のペースになるとエンジンが発電した電気を使うモーター駆動は効率(≒燃費)が悪化することに対応すべく、一定以上のペースになるとタイヤをエンジンで駆動するモードも持つ。
さらにプラグインハイブリッドカーでは数少ない4WDでもあり、4WDのタイプも前後輪をモーターで駆動するもので、駆動力の高さはもちろん、モーターはエンジン駆動よりも段違いに緻密な制御が可能なところに定評ある三菱自動車の4WD技術も加わり、4WDの性能でも高い評価を集めている。
それでいて価格は、もっともコストパフォーマンスに優れる特別仕様車のGリミテッドエディションであれば382万6440円。じつに静かでスムースな走りに代表される車格などを総合的に考えれば非常にリーズナブルで、アウトランダーPHEVにできないことは6人以上の多人数乗車くらいで、日本一万能なクルマともいえる。
また状況が決して良くない現在の三菱自動車にとっては宝のような存在だけに、登場から5年が過ぎながらも丹念な改良が行われており、近々発売されるマイナーチェンジモデルではエンジンの排気量アップ、バッテリー容量の拡大、モーター出力の向上などが施され、より魅力を高めるに違いない。
それだけに実力を考えれば低調な販売が他人事ながら不憫に感じるほどで、マイナーチェンジをきっかけに浮上を期待したい。
●ホンダ・クラリティPHEV (EV走行距離114.6km、588万600円)
クラリティは同じ4ドアセダンボディに燃料電池(=クラリティフューエルセル)、電気自動車(=クラリティエレクトリック)、プラグインハイブリッド(=クラリティPHEV)を持つエコカーで、クラリティPHEVはクラリティフューエルセルに続く日本におけるクラリティシリーズ第二弾として最近登場した。
※クラリティエレクトリックはアメリカではすでに販売されている。
以前日本でも販売されていたアコードPHVの後継車的存在となるクラリティPEHVは、日本ではラージサイズになるアコード級の4ドアセダンボディながら、1.5リッターガソリンエンジンにエンジン直結モードを持つ2モーターのシリーズハイブリッド。つまりハイブリッドの機構自体はアウトランダーPHEVと同じである。
しかし床下に置かれるバッテリーは現在販売されているアウトランダーPHEVの約1.5倍の容量と大きく、前述のとおり100km以上のEV走行距離を実現する。
好みが分かれそうなスタイル以外クルマ自体はそう申し分ないクラリティPHEVであるが、内容の良さを考えても600万円近い価格はあまりに高い。リース販売のみという制約はあるにせよ、国からの補助金を使えば宝物のような技術的価値を持つクラリティフューエルセルのほうが安いというのはどう考えてもおかしいだろう。
そもそもの年間目標販売台数が1000台と少ないが、このままでは遠くないうちに忘れられてしまい、「ホンダにもPHVがあったねえ」程度の存在になりそうな予感がする。
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