仕事も人生も大きく変わったジュリエッタとの出会いと歩み
2024年5月19日に行われた「イタリアンジョブ2024」は古いイタリア車全般を対象にした展示イベント。毎年テーマとなる車種を決めていて、2024年はアルファ ロメオの「ジュリエッタ」シリーズと「2000GTV」をフィーチャー。8台がエントリーしたなかで、バンパーレスでレーシーな雰囲気を醸し出していたのが、千葉県から参加した小熊 聡さんの「ジュリエッタ スプリント」です。詳しく話を伺ってみると、そのドラマチックな愛車とのストーリーに驚かされました。
ポルシェやミニを乗り継いだベテランがたどり着いたのは…「醜い」といわれるアルファ ロメオ「ジュリア 1600スーパー」は機関好調です
ショップに通い詰めて愛車と出会い、ついにはそこで勤務するほどに
「イタリアンジョブ2024」の会場にはアルファ ロメオ「ジュリエッタ」シリーズが8台集まり、SZやSSといったスペチアーレなモデルも並び、さらに華やかさを増していた。ほとんどがオリジナル状態を残している個体の中で、異彩を放っていたのが、息子の瑠威(ルイ)くんと一緒に参加していた小熊 聡さんの愛車。25年前から乗っているという1959年式アルファ ロメオ「ジュリエッタ スプリント」だ。
あるとき、古いイタリア車が得意なレース屋があると人づてに聞き、千葉県木更津市にあるガレージゴトウに出入りするようになった小熊さん。仕事が休みになる週末になると作業を見学するために通うようになり、そこでアルファ ロメオの魅力を知ったそうだ、当初は「ジュリア」の1750か2000でチューニングカーを作るつもりでいたという。
「当時は段付きジュリアばかりがもてはやされ、他のモデルはまだ安価ということもあったので、車両代をチューニングに注ぎ込めるなと思ったんですよ」
ガレージゴトウ詣では続き、作業を手伝う週末、いつしか小熊さんのお弁当も用意されるようになった頃、代表の後藤新太郎氏より「一番好きなのはどれなんだ?」と聞かれた。ジュリエッタ スプリントと答えたところ、ボディのレストアは仕上がっているものの作業が止まっている状態で倉庫に保管されていたジュリエッタ スプリントを見せられた。それが現在の愛車である。
その後、とうとうガレージゴトウに勤務することになった小熊さんは、後藤氏に本格的に師事し、自身のクルマも数年かけて完成させた。
ジュリエッタとともに幸せの絶頂を歩んでいたときに起きた悲劇
まだ結婚前だった頃、現在の奥さまと「アルファ ロメオデイ」というイベントに行った時には、その夜に逆プロポーズされ、2004年に開催されたジュリエッタ50周年イベント「ピアチェーレ」の参加翌月に挙式するなど、奥さまとの思い出もジュリエッタに刻まれる。
そんな小熊さんを悲劇が襲う。転落事故に遭い頸髄を損傷、あと数ミリ上だと自発呼吸もできなかっただろうというほどの重傷を負うのだ。受傷当時は首から下の感覚は完全に失い、自分の手足がどこにあるのかすら分からない状態でぴくりとも動かせなかった。
「クルマがない人生なんて、考えられませんでしたから、死ぬ気でリハビリしました。医師からは、運転はもちろん、歩くこと、字を書くことももう無理だろうと宣告されていましたが、リハビリセンターに半年入院し、その後自宅でリハビリを続けて1年半後に運転復帰できたのです」
右手シフトのジュリエッタに乗るには、同じ左ハンドル車で訓練する必要があると感じた小熊さん。最初練習していた軽トラックからプジョー「106」へと乗り換え、さらに運転に不安がなくなるまで練習を続け、ついに受傷から4年と8カ月を経て、再びジュリエッタのハンドルを握ることができたのは2018年の6月であった。
「今も動かせるというだけで、以前のように走らせるという運転には程遠いですが……。怪我もあったので、息子の瑠威とは遊びも一緒にできませんでしたから、こうして一緒にロングドライブができたのは嬉しいです」
瑠威くんも「本格的なイベントは初めてなので、いろいろなクルマを見れたのが楽しかった」とはにかむ。小熊さんはこのイベントについても、こうコメントしてくれた。
「イタジョブは、まだ健常だったころからの知己も多くいるのと、アルファ ロメオが好きな人たちが同じく好きな仲間たちのために作った気持ちの良いイベントだから、自宅の千葉からは遠いですけれど足を運ぶ理由ですね」
>>>2023年にAMWで紹介されたクルマを1冊にまとめた「AMW car life snap 2023-2024」はこちら(外部サイト)
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