青木拓磨悲願のAXCR優勝まであと少し
アジアクロスカントリーラリーも、タイからラオスに入って2日目となるレグ5(競技5日目)を終えた。3日目に総合トップに立った青木拓磨組は、その後も好走を見せ、トップタイムをマークするものが毎日変わっていく中で、レグ3、レグ4と2日連続で2位を獲得。総合トップの座をキープし、自身初のアジアクロスカントリーラリー優勝を目指してひた走る。
初日から大荒れ! 正面衝突事故で大きく順位がシャッフルされた「アジアクロスカントリーラリー2023」の長い1日
5日目トップは三菱トライトンの106号車
1996年に初開催し、今回で28回目を数えるFIA・FIM公認国際クロスカントリーラリーのひとつアジアクロスカントリーラリー(AXCR)は、その名の通り、東南アジアを中心に開催されるクロスカントリーラリー。毎年、山岳地帯やジャングル、沼地、海岸、砂漠、プランテーション、サーキットなど、アジアの特徴あるコースが設定され、毎年8月に開催されている。
2020年からコロナ禍の影響で開催は2回キャンセルされ、2022年は11月に延期を余儀なくされたものの、2023年大会は無事に例年通りの開催となり、モト(バイク)22台(サイドカー含む)、オート(4輪)41台がエントリーしている。
2023年8月13日(日)にタイ・パッタヤーでのセレモニアルスタートによって開幕したアジアクロスカントリーラリーAXCR2023は、タイを東に移動しながら「SS1 Chacheongsao」、「SS2 Nakhon Ratchasima」、「SS3 Roi Et」と競技を行い、17日(木)にはラオスに入った。「SS4 Champasak」、「SS5 Paksong」、そして「SS6 Champasak」を走り、セレモニアルフィニッシュは世界遺産のワットプーの中で行われる。
8月18日(金)、ラオス2日目となる「SS5 Paksong」は、当初は167kmほどのコースが設定されていたものの、後半の川渡りもあるコースでは水量が多く、モトを中心に脱落者が多く予想されることからコースを短縮、SSの途中に設けられたパッセージコントロール(PC)までの120.76kmまでとなった。
そしてこの日のベストタイムをたたき出したのが、三菱ラリーアートチームが持ち込んだ新型三菱トライトン。なんと31番手スタートのRifat Sungkar/Chupong Chaiwan組(#106 Team MITSUBISHI RALLIART/MITSUBISHI Triton/T1D)がトップタイムとなる1時間5分1秒をマークした。レグ1でエアコンの不調から体調不良で下位に沈んでしまっていたリファット選手だったが、実力どおりの快走を見せた。
ぬかるんだコースが各車を悩ませた
そして前日トップタイムをたたき出している108号車のTheerapong Pimpawat/Jumpol DOUNGTHIP組(NEXZTER REST CLUB (NXRC)/TOYOTA Hilux Revo/T1D/1時間7分25秒)が、1分半遅れて2番手につけ、総合13番手から12番手に順位をひとつ上げた。
3番手には、Takuma Aoki/Ittipon Simaraks/Songwut Danphiphattrankoon組の105号車が入り(TOYOTA GAZOO RACING INDONESIA/TOYOTA Fortuner/T1D/1時間7分25秒)さらに4番手にはチームメイトのTubagus Moerinsyahdi/Jatuporn Burakitpachai(#121 TOYOTA GAZOO RACING INDONESIA/TOYOTA Fortuner/T1D/1時間8分27秒)と、この日もTOYOTA GAZOO Racingインドネシアの2台は強かった。
走行後に青木拓磨は「今日も危なかったのですが、幸運に恵まれました」とハードな様子を語ってくれた。当初からこの日のコースは今回のAXCRで最大の泥濘セクションとなっていた。SSスタート直後には深い川渡があり、60kmあたりではぬかるんだコースが各車を悩ませるという情報が入っていた。
「コース自体は言われていたほどではなかったですね。こちらもコ・ドラの2名が気にしていたんですが、実際に走ってみると雨の影響もなく、基本的にはスピードコースでした。105号車は40kmを過ぎたあたりからエアコンが効かなくなり、窓を開ければ泥水が入ってきて、汗をかきまくりで走行していました。ゴールまで残り10kmというところで、路面にケラレ、側溝に落ちてしまいましたが、なんとかコースには戻れましたし、SS自体は順調でした。
PCでゴールしてサービスに向かう途中でリアの挙動がおかしいことに気が付きました。側溝で落ちた際にアライメントが狂ったのかなと思っていたのですが、サービスまで残り30kmのところで右リアタイヤがガタガタし始め……。リアのハブボルトの脱落が原因でした。急遽修復作業を行うのですが、すでにサービスは出てしまっていたためチームのメカニックの手を借りるわけにもいかず、乗員総出で、うしろから来たチームのトゥバグスたちにも手伝ってもらって修理を行いました。
そしてサービスに到着したのが、設定された1時間半というタイムぎりぎり2分前で、タイムオーバーにならずに済みました。ハブボルトの脱落がSSで発生しなくて、さらにタイムオーバーにもならず本当に幸運に恵まれてます。この調子で、最終日も無事に走り切りたいと思います」
と青木拓磨選手は語ってくれた。
結果総合トップの青木拓磨組(11時間8分43秒)は変わらず。2位に121号車のトゥバグス・アディ・モレンシャディ組(11時間14分59秒)と、まだのTGRインドネシアのワントゥー体制は崩れていない。総合3位からTGRインドネシアを追いかける三菱トライトンの101号車 Chayapon Yotha/Peerapong Sombutwong組(#101 Team MITSUBISHI RALLIART/MITSUBISHI Triton/T1D)はこの日6番手(1時間9分18秒)とその差は17分(11時間25分46秒)とさらに広がる結果となった。残るは「SS6 Champasak(51.96km)」のみ。青木拓磨悲願のAXCR優勝まであと少しだ。
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