マイナーチェンジを受けたレクサスのフラグシップセダン「LS500h」に小川フミオが試乗した。高度な運転支援システムを搭載したハイブリッドモデルの魅力とは?
6年目でも魅力的
2022年10月13日、レクサスLSは一部改良を受けた。いまも“ブランドの頂点にはセダンを”というレクサスの価値観とともに、大きく評価したい1台だ。
改良の眼目は、ひとつはサスペンションシステムのチューニング。「初代から一貫して突き詰めてきた乗り心地を向上させたほか、高い操縦安定性を実現した」と、レクサスはいう。
もうひとつ、注目すべきは、高度運転支援技術を謳う「Lexus Teammate Advanced Drive」(2021年4月に初採用)の性能向上。レクサスによると「周辺車両の動きへの配慮」だそうだ。
制御があたらしくなったアドバンストドライブは、隣接レーンを走行する車両の死角領域に自車が走行し続けることを回避するように減速制御をおこなう。
たしかに、運転していて、「いま隣りの車線で斜め前を走っているクルマがいきなり車線変更をしてきたら……」と、気になるときがある。
加速してそこから抜けだそうとするひともいるだろうが、LSの新しい制御では安全方向の制御をおこなう。
さらに、車線変更支援できる場面を拡大。こちらは、使い勝手を向上するため、と説明される。
私が乗ったのは、「LS500h“EXECUTIVE Advanced Drive”」なる豪華仕様。3456ccV型6気筒ガソリンターボ・エンジンにハイブリッドシステムを組み合わせ、前後の車輪を駆動する。
いまの5代目LSが2017年にデビューしたときは、重心高が高いのか、上屋部分の動きが落ち着かなくて、乗っていると、頭がちょっと揺れるような感覚を味わったのをおぼえている。
レクサスの言葉を借りると「Always On」という絶え間ない年次改良を受けて、LSの走りの味は、だんだんよくなってきた。いまのが最終形でなく、このさき、ひょっとしたらもっとよくなるのかもしれない。
じっくりと熟成2022年10月に発表された今回のモデルは、足まわりに手が入っている。具体的には、リヤサスペンションメンバー取り付け部のブレース形状を変更し、剛性を高めた。たしかに2017年の初期モデルとは別ものに進化した印象だ。
高速道路での走行を含めた印象は、加速性能がよく、素直な操縦性とともに、乗っていると、どんどん好きになれるのでは? と、感じる乗り味が特徴的だと私には思われた。
凝った造型のインテリアは、はっきりいって、個性が強いぶん、経年による印象の劣化が避けられないけれど、ここまで贅沢に素材を使いまくるプレミアムセダンはいまや希有だ。
いっぽう、メルセデス・ベンツやBMW、あるいは米国キャデラックといった海外の競合車は、デジタル技術をふんだんに採用してのインフォテインメントシステムの充実ぶりがいちじるしい。
上記の点では、LSは後塵を浴びせかけられていて、すくなくとも、対話型コマンドシステムの性能をさらに高めていけば、ライバルより優位に立てるのでは? と、運転して思った。
アドバンストドライブは、状況次第ではハンズオフ運転を可能とする。
最高速の上限は120km/hであるものの、クルマが走行中の道路の制限速度を認識。制限速度のプラス15km/h 程度までは作動し、それを超えるとシステムが停止するなどなかなか細かい。
設定された速度の範囲内では、期待以上にスムーズだ。私が走ったときは、高速道路は比較的渋滞していて、ときおり、先行車がいなくなる(空く)という繰り返し。まさにテストにうってつけだ。
速度コントロールはスムーズで気持よく、ドライブしている私の気持ちにあらがわない。もうすこし速く走りたいと思っても、安全が優先される。
ほかにも、先行車のスピードが遅いとき、車両が追い越しを提案する。ステアリングホイールのスイッチを押すだけで、操舵とアクセルの操作が自動で行われる。
アドバンストドライブは、日常で使っていると、ドライバーにクルマとの一体感を感じさせてくれたシステムだった
LSのようなトップクラスのセダンは、モデルチェンジも容易ではないだろう。今、あたらしいモデルは、目あたらしい技術を搭載して登場するので、キャッチアップもむずかしいはず。
でもまぁ、クルマにとってもっとも重要な、走らせる楽しさとか、好きになれる存在感とか、その点で、LSはいまだに負けていないのだ。
Always Onの精神でもって、じっくりと熟成され、さらにいいクルマになっていくことを、私としては期待している。
文・小川フミオ 写真・田村翔 編集・稲垣邦康(GQ)
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