すでに納期は2022年!? ホンダの人気コンパクトSUV、新型ヴェゼルの買い得度は?
2022年4月23日、通算2代目となる新型ヴェゼルが発売。そんな同モデルの注目は価格設定だ。ここ最近、日産などではハイブリッド専売としてガソリン車を設定しないモデルも増えてきているが、新型ヴェゼルもハイブリッド中心のグレード構成。それゆえ価格そのものはやや上級シフトしているようにもみえる。
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果たしてクルマとしての中身を加味した買い得度は? ライバルとの比較も踏まえてみていきたい。
文/渡辺陽一郎 写真/HONDA
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■やや独特な設定? 新型ヴェゼルの推奨グレードは
2021年4月より発売を開始したホンダ新型ヴェゼルは1.5Lハイブリッドのe:HEVを中心に構成される
新型ヴェゼルの特徴は、グレード構成が1.5Lハイブリッドのe:HEVを中心に構成されることだ。ノーマルタイプの1.5Lエンジンを搭載するグレードは、ベーシックな「G」のみになる。
2WDの価格は、ベーシックなe:HEV・Xは265万8700円で、従来型のハイブリッド・Xに比べると7万2682円高くなった。それでもハイブリッドが刷新されて加速の滑らかさや燃費が向上しており、衝突被害軽減ブレーキも進化している。これらの機能の進化を考えると、7万円少々の値上げであれば新型が割安だ。
主力グレードのe:HEV・Zは289万8500円で、先代型のZよりも13万8314円高い。
新型のZでは、ハイブリッドシステムや衝突被害軽減ブレーキの進化に加えて、従来型に設定のなかったブラインドスポットインフォメーション(ドライバーの死角に入る後方の並走車両を検知して知らせる安全装備)なども加わった。e:HEV・Xと同様、e:HEV・Zも新型が割安になる。
そして新型ヴェゼルは、最上級グレードとしてe:HEV・PLaYも用意した。大型ガラスルーフのパノラマルーフ、ホンダコネクトディスプレイなどを標準装着して、内外装の装飾も上級化する。そのために価格は329万8900円と高い。
e:HEV・PLaYで注意すべきは、価格が高まるうえに、e:HEV・Zに標準装着される装備の一部が省かれることだ。
新型ヴェゼルのラインナップと価格
カーブを曲がる方向を照らして安全性を向上させる「LEDアクティブコーナリングライト」、LEDヘッドライトの「オートレベリング機能」、エアコンの「左右独立温度調節機能」、荷室の荷物を隠す「トノカバー」などは、e:HEV・Zには標準装着されるのに、e:HEV・PLaYには採用されない。
これはユーザーを困らせる設定だ。一般的にパノラマルーフのような上級装備や上質な内外装を希望するユーザーは、LEDアクティブコーナリングライトやトノカバーも必要とするからだ。
今後はe:HEV・PLaYを選んでも、LEDアクティブコーナリングライトなどをセットオプションで装着できるようにしてほしい。
最もわかりやすく親切な方法は、e:HEV・PLaYを廃止して、パノラマルーフなどをe:HEV・Zにオプション設定することだ。「PLaY」という名称を使いたいなら、e:HEVに「PLaYパッケージ」を用意して、そこにパノラマルーフなどを含めれば良い。
そしてe:HEV・PLaYの価格は、e:HEV・Zに比べて40万400円高い。なおかつ前述の削られた装備の価格換算額が約10万円に達するので、e:HEV・PLaYの価格は、実質的にはe:HEV・Zを約50万円上まわる。相当に割高だ。
その一方で、ベーシックなe:HEV・XとノーマルエンジンのGでは、安全装備のブラインドスポットインフォメーションをオプションでも装着できない。
そうなるとヴェゼルで推奨できるグレードは、e:HEV・Zに絞られる。前述のアクティブコーナリングライトも唯一装備され、安全性を高められることも含めてe:HEV・Zは推奨度が高い。逆にe:HEV・XとGは安全装備が不満で、e:HEV・PLaYは割高だ。
そこで推奨グレードのヴェゼルe:HEV・Zと、ヤリスクロスを比べたい。
■ヤリスクロスとの比較で新型ヴェゼルの買い得度は?
トヨタ ヤリスクロス
ヴェゼルe:HEV・Zに相当するヤリスは、ハイブリッド・Zになって2WDの価格は258万4000円だ。
価格はヤリス ハイブリッド・Zが31万4500円安いが、ヴェゼル e:HEV・Zに標準装着されながら、ヤリスではオプションになる装備も見られる。
そこでヤリス ハイブリッド・Zにブラインドスポットモニター(4万9500円)、ステアリングヒーター(1万1000円)、パワーバックドア(7万7000円)を加えると、実質差額は17万7000円に縮まる。
その替わりヤリスクロスにはディスプレイオーディオや運転席の電動機能が装着されるから、最終的にはヤリスクロスが27万円ほど安いと考えれば良い。
見方を変えると、ヴェゼルの価格はトヨタ車でいえばC-HRに近い。C-HR ハイブリッド・Gは304万5000円、ハイブリッド・Sは274万5000円になるからだ。ヴェゼル e:HEV・Zは289万8500円だから、おおむね合致する。
ちなみにトヨタとしては、ヤリスクロスの価格がサイズの少し大きなC-HRと並んでは、車種間のヒエラルキーを保てない。
そこでヤリスクロス ハイブリッド・Zを258万4000円に抑える必要があった。ヤリスクロスの価格がヴェゼルよりも明らかに安い背景には、トヨタのSUVラインナップの価格的なバランスを整える事情もあったわけだ。
そして、両車のデザインや機能を比べると、内装の質はヴェゼルが勝る。ヤリスクロスのインパネは基本的にコンパクトカーのヤリスとほぼ同じだが、ヴェゼルの内装はフィットと同等ではない。上質に造り込んだ。
居住空間もヴェゼルが広い。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は、ヴェゼルが握りコブシ2つ半、ヤリスクロスは1つ半にとどまる。
荷室もヴェゼルが余裕を持たせた。しかもヴェゼルは燃料タンクを前席の下に搭載するから、後席を床面へ落とし込むように小さく畳めて、2名乗車時には大容量の荷室に変更できる。後席の座面を持ち上げて車内の中央に背の高い荷物を積めるなど、シートアレンジにも工夫を凝らした。
逆にヤリスクロスが優れているのは、街中や駐車場における取りまわし性だ。全長は4180mm、全幅は1765mmだから、ヴェゼルに比べると150mm短くて25mm狭い。最小回転半径もヤリスクロスは5.3mだ。
ヴェゼルの場合、16インチタイヤのe:HEV・XとGは5.3mだが、18インチのe:HEV・Zとe:HEV・PLaYは5.5mに拡大する。
WLTCモード燃費(2WD)は、ヴェゼルe:HEV・Zは24.8km/Lだが、ヤリスクロスハイブリッドZは27.8km/Lになる。狭い裏道や駐車場での扱いやすさと、燃費性能は、ヤリスクロスが優れている。
■【総合評価】両車のコスパは同等! 機能の優先順位が選択の鍵
ヴェゼルは後席の居住性や荷室の使い勝手を重視するファミリーユーザーにも使いやすい
以上を総合的に判断すると、ヴェゼルは後席の居住性や荷室の使い勝手を重視するファミリーユーザーにも使いやすく、ヤリスクロスは2名以内の乗車で移動する用途に適する。
そして価格は実質的にヴェゼルがヤリスクロスに比べて27万円高いが、その差額は後席の快適性、荷室の広さと使い勝手の対価になる。このように考えると、両車の買い得感は同等といえるだろう。販売店で両車を乗り比べたうえで、好みや用途に応じて選択したい。
なお納期は両車ともに長い。ホンダの販売店によると「ヴェゼルを2021年5月中旬に契約した場合、e:HEV・Zの納車は12月下旬、e:HEV・PLaYは来年(2022年)6月頃になる」という。
つまりヴェゼルの納期はe:HEV・Zでも7か月、e:HEV・PLaYは1年以上だ。顧客の反応を尋ねると「1年待ちでもe:HEV・PLaYを希望されるお客様が多い。それでも増産の予定はない」というから、これから納期がさらに遅延する可能性もある。
ヤリスクロスは「2021年5月中旬の契約で、ノーマルエンジン車の納期は10月中旬、ハイブリッドは11月中旬」という。
ハイブリッドの納期は約半年だ。今の新車需要の約80%は乗り替えに基づくから、納期が長いと、新車が納車される前に今まで使ってきたクルマの車検期間が満了する心配が生じる。
そうなれば納車を待つために改めて車検を受けるなど、ユーザーに余分なコスト負担を強いることになってしまう。今後は納期の短縮にも力を入れて欲しい。
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