「好きなクルマで行く妄想の旅!」(3) BMW 8クーペで音楽の聖地を巡る!
岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第212回
青学中等部の美人同級生は毎日、黒いアメリカ車で送迎されていた
今回は、ミュンヘンを出て、ザルツブルクに寄り、ウィーンを目指すプログラムにする。
、、、といったら、音楽好きからはすぐ、「いいね!」「サイコーだね!」「行きたい!」といった反応が返ってくるはず。
そう、この3都市はいずれも、世界の音楽ファンたちから「音楽都市」として愛され、憧れられている。
ミュンヘンはバイエルン国立歌劇場、ザルツブルクは祝祭大劇場、ウィーンは国立歌劇場と楽友協会ホールが知られるが、いずれも音楽ファンにとっては聖地だ。
僕は幸い、このすべてで、コンサートを聴くかオペラを観劇しているが、いずれも、素晴らしく印象的な時を過ごした。
バイエルン国立歌劇場は、市の中心部に近い立地で、僕の定宿にしているホテル、「バイエリッシャー ホフ」からも歩いていける。
その途中には、いいカフェもレストランもある。なので、夜の公演なら、行く前に食事をして、帰りにカフェで余韻を楽しむ、、といった心地よいスケジュールも容易に組める。
歌劇場からバイエリッシャー ホフまで、、ゆっくり歩いて15~20分ほどの道程にも、音楽の余韻を壊すものはない。なので、真っ直ぐホテルに帰り、バー(夏はテラスで、冬は暖炉の近くで)で余韻を味わうのもいい。
さて、音楽の聖地を巡る旅には、どんなクルマがいいのだろうか。いろいろ考えた末の答えは「BMW 840i クーペ」。
スマートな容姿、上質な空間、精緻な音 / 走り味 / 乗り味で包み込んでくれるBMW 840i クーペ、、、音楽の聖地を巡る旅にはうってつけの友だと思う。
ボディカラーはシックでありながら華やかさもあるブルーグレー。インテリアはアイボリーホワイトのレザーを選んだ。
格式ある場所でのコンサートやオペラの観賞には、それなりの心構えやマナーが必要だが、それは強制されるものではない。
最近は服装にしてもカジュアル化が進み、よほどマナーに反したものでない限りは、入場を断られることもなくなった。
でも、、素晴らしい劇場で、素晴らしいコンサートを聴き、オペラを観劇するのであれば、それなりの身繕いで臨みたい。その方が気分は昂まるし、より楽しめもするからだ。
スーツはダーク系でシャツは白か薄いブルー。でも、堅苦しくはしたくないので、軽快感のあるデザイン、素材、色味を選びたい。
シャツの襟はセミワイド、タイも明るめの無地かシンプルな色柄がいい。
旅はできるだけ荷物を減らしたい。なので、靴は一足ですべてがカバーできるオールマイティなものを選ぶ。
僕は、「とにかく楽!」な、コールハーンのゼログラウンドシリーズ、、茶系のウィングチップを旅の友にしている。
ソールは合成ラバーだが、ダークブラウン系辺りなら、コンサートやディナーの場で求められるマナーは十分クリアできる。
それに茶系のウィングチップなら、ジーンズとの相性もいい。これも選ぶ理由だ。
旅の時期だが、できれば「ザルツブルク音楽祭」に合わせた7月中旬から8月下旬にしたい。世界でももっとも、質、格式の高い音楽祭だけに、一度は観ておきたい。
僕は家内と共に、祝祭劇場大ホールでワレリー ゲルギエフとウィーン フィルの共演を観、聴いたが、最高の思い出になった。
世界中から音楽ファンが集まる音楽祭期間中のザルツブルク、、なんとも言えない明るく華やかな賑わいの中に身を置くことも、一生の思い出になるはずだ。
その時に泊まったホテルは、映画「サウンドオブミュージック」のロケ地になった「ホテル シュロス レオポルドスクロン」。
湖畔に建つホテルの佇まいは、まさに美しくエレガント。その物語性も含めて、選ぶ価値は大いにありだ。
ザルツブルク音楽祭の話が先行してしまったが、旅のスタートの地、ミュンヘンのバイエルン国立歌劇場に話を戻そう。
1653年に設立された歌劇場は荘厳な佇まいをもち、大きな平土間と5階層のバルコニー席をもつ。さほど煌びやかではないものの、巨大な抱擁感には圧倒されるものがある。
バイエルン国立歌劇場には、家内と共に3度訪れているが、2度がコンサートで、1度がバレエ公演。大いに楽しみ、素晴らしい時を過ごした。
バイエルン国立歌劇場での時間を楽しみ、ミュンヘンを楽しんだら、翌朝はウィーンに向けて出発だ。
最初の目的地であるザルツブルクまでは、寄り道しなければ1時間半ほどで着く。
でも、少し寄り道すれば美しい湖にいくつも出会う。なので、ボートで湖を楽しんだり、湖の畔でランチを楽しんだりしないのはもったいない。
ミュンヘンからオーストリア国境に向かうアウトバーンは快適。3車線で見通しもいいし交通量も多くない。飛ばそうと思えば、かなり飛ばせる。
ミュンヘンをベースにした個人的試乗で、最高速にトライするのは、大抵このルートだ。BMW 840i クーペなら、180~200km/hのクルージングが心地よく楽しめる。
340ps / 500Nm +8速ATの走りは、速さと強さと優しさをバランスよく併せ持ったもので、長距離の旅にも相性の良い選択だ。
パワートレインはドライバーの意思に忠実だし、フットワークはしなやかにしっかりコントロールされ、上質で心地よい。そして、望めばかなりの熱さで寄り添ってもくれる。
ザルツブルクにはすでに触れたので、ここからはウィーンの話に移ろう。
ミュンヘンからザルツブルクは1時間半ほどのドライブで着くが、ザルツブルクからウィーンまでは3時間ほど。
一気に走り切ってしまってもいいが、途中で一泊するのもいい。
オーストリアの田舎や山間部には、清潔で寛げる小さなホテルがあちこちにある。こんなところに泊まるのも、旅の思い出の厚みを増してくれる。僕の経験から言えば、「家族経営の小さな宿」がおすすめだ。
オーストリアのアウトバーンは有料。10日間用ステッカーが9.6ユーロ。サービスエリア等で買って、前窓上部中央か、外から見て左上部に貼る。罰金はけっこう高くつくので、これは忘れないように、、。
ウィーンはインペリアル ホテルに泊まる。その佇まいとインテリアは、まさに宮殿のよう。街の喧騒から離れた立地もいいし、楽友協会に来る人たちの多くが宿泊するので、コンサートの前後もいい雰囲気に包まれる。
ホテルに併設されたカフェ インペリアルもいい。僕は、ここで、ランチタイム、ティータイムを過ごすのが好きだ。
国立歌劇場も楽友協会もいいが、どちらか一つを、となったら、僕は楽友協会を選ぶ。独特の華麗な世界観は「他にとって代われるものはない」ほどの魅力を僕は感じるからだ。
楽友協会のコンサートを楽しんだら、その夜もインペリアル泊。さらに余韻を楽しむ。
そして、翌日はホテル ザッハーに移動。繁華街、ケルントナー通りの中程という絶好の位置にある華やかなホテルだ。有名な「ザッハー トルテ」の生みの親でもある。
ケルントナー通りは有名店が軒を連ねる通りで、歩行者天国。突き当たりの広場にはシュテファン大寺院がある。カフェも、レストランも、屋台も、、お好み次第。ミュージシャンの路上パフォーマンスも楽しめる。
2019年12月以来海外には出ていないが、コロナが完全に収まったら、今年のクリスマスはウィーンで過ごすつもりだ。
ミュンヘンまでの帰路は、アウトバーンで450kmほど。840 i クーペを思い切り楽しめばいい。途中でコーヒーストップを1回入れるだけで楽勝だ。
ミュンヘンでは、BMW ミュージアムとアウディ ミュージアムの見学も外せない。アウディ ミュージアムのあるインゴルシュタットまでは約80km 。1時間ほどで着く。
最後のディナーは、バイエリッシャー ホフのレストラン、「アトリエ」がいいと思う。
ミシュランの二つ星を獲得しているレストランだが、「BMW 840i クーペで音楽の聖地を巡る旅」の締めくくりに相応しい、アートライクなレストランでもあるからだ。
● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト
1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。
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