究極的にスーパースポーツと強みは同類
レストモッドされたクルマが、BBDC選手権で優勝した過去はない。それでもアナログ・オートモーティブ・スーパースポーツなら、成し遂げる可能性はゼロではない。
【画像】刺激的な「ブリティッシュ」トリオ! スーパースポーツ vs アルトゥーラ vs ヴァンテージ 全100枚
そんな無垢な楽しさに満ちた元ロータス・エリーゼ S1と比べると、マクラーレン・アルトゥーラが積むパワートレインの複雑さは好対照。ところが、運転体験は高純度だといっていい。
V6ツインターボのプラグイン・ハイブリッドで、最高出力は700ps。電子制御技術を満載し、車重は倍以上重い。このマクラーレンがスーパースポーツと同じ土俵に登ることは、通常はないかもしれない。だが、ドライバーの充足度ではまったく劣らない。
シャシーバランスに非の打ち所はなく、ステアリングは最高水準に精緻。コミュニケーション力に長け、運転席からの視界は壮観なほど広い。極めて安定性が高く、多元的な動的能力が与えられた、角の丸いスーパーカーだ。
季節や天候を問わず、運転を思い切り楽しめる。リンカンシャー州の公道を、清々しく駆け回れる。直感的で流暢なコーナリングで、乗れば乗るほど中毒性が増していく。究極的には、スーパースポーツと強みは同類なことが顕になる。
ランボルギーニの純正色が似合うマクラーレン
マクラーレンの技術的な磨き込みも、効果的な成果を生んでいる。2022年の発表当初と比較すると、ステアリングは750 S級に感触豊か。回頭性の鋭さやダイレクトさも、アップデートされた感がある。
姿勢制御はタイトながら、加減速時のピッチや、旋回時のロールも感取できる。これが、ドライバーとシャシーとの意思疎通を助けてくれる。加えて、電気的にアシストされるパワートレインのレスポンスは、これ以上ないほど即時的でもある。
「路面の凹凸を越えた時のしなやかさ、ステアリングの素晴らしい重さと速さ、精度、コーナリング時の安定性へ、もの凄く惹かれました。ライバルのミドシップ・スーパーカーより、日常的にも使えるでしょうね」。ソーンダースが出色の印象を振り返る。
「もっと長く乗っていたいと思わせます。刺激が少し足りないという人はいるかもしれません。でもそれは、丁寧に磨き込まれた特徴を、充分に評価できていないのだと思いますよ」。とも続ける。
「このマクラーレンはクールにターゲットを絞り、ラップタイムを狙ったようなモデルとは違います。魂が宿っているように感じます」。ジェームス・ディスデイルが話す通り、アルトゥーラは、ランボルギーニの純正色でも似合うかもしれない。
背徳感混じりの無敵気分に満たされる
アルトゥーラとは異なる魂を見せつけたのが、アストン マーティン・ヴァンテージ。BBDC選手権の最終審査へ、このブランドが勝ち残るのは久しぶり。エレガントなスタイリングだけでなく、特徴的な動的能力で乗り手を強く魅了した。
姿勢制御のタイトさでは、対峙する2台に敵わない。しかし積極的にコーナーへ飛び込み、カウンターステアを当てながらの豪快な脱出は、フロントエンジン・リアドライブならではの喜びだろう。
21世紀初頭なら、この仕上がりは絶賛に値した。665psの最高出力とクイックなステアリング、太いタイヤの接地面積が高度に融合した、歴代最高のヴァンテージに違いない。
ストレートでの速さは、アルトゥーラと遜色なし。コーナーでは、悪ふざけも許容する。フロントアクスルはしっかりラインを掴み、リアタイヤはドライバーの意図通りに遊ばせられる。素晴らしいバランスにある。
イリヤ・バプラートが端的に表現する。「今回のノミネート車両では唯一、本当に自然なオーバーステアを楽しめますよね」
ラグジュアリーなシートへ身を委ねていれば、快適至極。だがその直後、右足を傾けた途端に怒涛のパワーを召喚でき、背徳感混じりの無敵気分に満たされる。
技術的な水準でいえば、確かにミドシップ・レイアウトには一日の長がある。とはいえ、リンカンシャー州の公道で経験した喜びは、他を圧倒するものだった。優勝の文字が頭にちらつくほど。
番狂わせを最新ヴァンテージは成し遂げる?
2023年のBBDC選手権は、優勝候補と目されていたポルシェ911 GT3 RSを破り、ランボルギーニ・ウラカン・ステラートがトップに輝いた。過酷な気象条件が、オフロードに対応したシャシーへ味方したカタチで。
しかし同時に、しなやかなサスペンションとイタリアンなスピリット、エンターテイメント性の高さは見事としかいいようがなかった。そんな番狂わせを、最新のヴァンテージが再び成し遂げるのだろうか・・。
この続きは、BBDC 2024(8)
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