トヨタの新型「ランドクルーザー250」のデザインは、こだわり抜いた“作品”だった! 実車を見た小川フミオがリポートする。
原点回帰
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けっこう長いこと展開されていた、ランドクルーザー250のティザー広告。「新型LAND CRUISER」ってなんだろう? すでに300系があるじゃん? 新しいプラドじゃないの? という声が多かった。
はたして、2023年8月2日に発表されたのは、ホントに“新型”のランドクルーザーだった。2021年に登場したランドクルーザー300の下に位置する“ライトデューティ”のランドクルーザー250だった。
驚いたのは、同時にふたつのデザインがお披露目されたこと。3眼ヘッドランプのフロントマスクは、まさにウェブ上のティザー広告で観ていたもの。多少の既視感があった。が、丸型には驚いた。
「なんで2種類を同時に出すか? というと、最初は3眼のフロントマスクでいいじゃないか、と、進めていたのですが、途中、丸2灯式のデザイン提案が出てきて、『これもいいね!』と。ならば、同時に出してみようということになりました」
トヨタ自動車におけるデザイン統括のサイモン・ハンフリーズ取締役・執行役員は、会場で理由をそう語った。
新型ランドクルーザー250は、名称は変わったが、実質的には現行ランドクルーザー・プラドの後継となる。ただし、スタイリングはプラドからだいぶ変わった。
「いまのプラドにはファンが多くて、『変えてほしくない』という声もいただいていたものの、弊社の豊田章男会長から『ランクルにしか出来ないことを考えなさい』と、言われ、私たちが頭をしぼった結果が“原点回帰(のデザイン)”でした」
面質にこだわるランドクルーザー250のデザインを指揮したトヨタ自動車・MSデザイン部の渡辺義人主査は、そう言い、たとえば「40」と通称される1960年登場のモデルを挙げる。
「最初は1951年に、警察予備隊(陸上自衛隊の前身)のための“国産ジープ”みたいな位置づけて開発されましたが、40が出て、ユーザーが一般にも大きく拡がりました」
そこが、精神的な“原点”という。したがって、フロントグリルのいちばん上の空気採り入れ口などのモチーフを、40からもってきたそうだ。
会場では最初のモデル、“トヨタ・ジープ”と呼称していたBJ型にはじまり、歴代のランクルがずらりと並べられた。圧巻。そのなかで、ランクル250は、「面質にこだわりました」(渡辺主査)というだけあって、ひときわクオリティが高く見える。
「これだとオフロードに行って車体にキズをつけたらどうしよう、なんて心配になりますか? できるだけそうならないよう、ボディの四隅や車体下部を徹底的に面取りして、取りまわしをよくしていますし、ヘッドランプなど灯火類をすこし内側に入れたため、衝撃がくわわったときもある程度はボディパネルで保護し、破損を防ぎます」
実際は、機能を徹底的に突き詰めていったデザインだと、渡辺主査は解説。
車体が汚れたら、それだけでもイヤになりそうなぐらい、美しさを感じさせるエクステリアデザインですけれど……と、前出のハンフリーズ取締役に述べると、「汚れてもスタイリッシュに見えるようデザインしていますよ!」ということだった。
既報のとおり、2種類のフロントマスクで登場したが、途中で両デザインの交換は可能という。分割式バンパーも、カラーバリエーションが用意されて、やはり好きなタイミングでユーザーが交換できるようにするという。
「とくに北米では、たいていのユーザーがカスタマイズしますから、サードパーティのパーツなど組み込んで、自分仕様にできるのも前提としデザインしています」(渡辺主査)
ならば、もっと現代のジープのような路線も、選択肢のひとつとしてあり得た? その質問に対して、渡辺主査は言う。
「その役割は、今回、あらためて日本でも発売する70(ナナマル)に負ってもらっています。ヘビーデューティなオフローダーとして機能をしっかり持った70は、いわばランクルの存在を不動にする“文鎮(ぶんちん)”みたいなもの。それがあるから、ランクル250は、自由に開発できたともいえます」
デザインにこだわり抜いた新しいランドクルーザー250に、多くのユーザーが注目するのも納得だ。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)、トヨタ自動車 編集・稲垣邦康(GQ)
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他の日本車メーカーは居眠りしてるのでしょうか。