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「普通の美意識」は通用せず? アストン マーティン・ラゴンダ ブリストル412 ロールス・ロイス・カマルグ(2)

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「普通の美意識」は通用せず? アストン マーティン・ラゴンダ ブリストル412 ロールス・ロイス・カマルグ(2)

ウィリアム・タウンズ氏による鮮烈な容姿

アストン マーティン・ラゴンダは、1987年にシリーズ4へマイナーチェンジ。デザイナーのウィリアム・タウンズ氏がボディへ手を加え、1990年1月まで生産は続いた。

【画像】超個性派な英国車たち アストン・ラゴンダ ブリストル412 ロールス・カマルグ 各ブランドの後継も 全113枚

ただし、シリーズ4のスタイリングは、本人が意図したものとは違っていたと噂されている。生産へ向けた製図の段階で、誤認されたとか。

シリーズ3からの変更点は、塗装されたフロントグリル・フレームやサイドシルに、新しいデザインのフロントスポイラーとホイールなど。ヘッドライトはリトラクタブル式から、スリムな固定式の6灯へ変更。テールライトも細身だ。

フェンダーのラインは丸みを帯び、ボディサイドのキャラクターラインは消されている。それでも、鮮烈な印象なことに変わりはない。ラゴンダ・シリーズ4は、105台がラインオフした。

久しぶりに実写を目の当たりにすると、若かった頃に受けた衝撃が蘇る。直線的なボディは、遠近感で一層大きく見える。全長は5283mmある。

他方、ブリストルで物議を醸したスタイリングをまとっていたのが412。イタリアの個性的なカロッツエリア、ザガート社と手を組み、フラットなボンネットに小さなウインドウ、柱のようなロールケージが与えられ、建築的な姿に仕立てられている。

今回ご登場願った412は、1977年式のシリーズ2。2007年から1年をかけて、ブリストル・カーズのクラシック・レストア部門でアップグレードを受けたという。

不格好に思える真正面 滑らかなマナー

アルミホイールは、オリジナルのエイボン社製より大きいコンポモーティブ社製。ホイールアーチを、ファットなタイヤが埋める。状態は素晴らしいが、印象へ大きな影響を与えている。

412で最も不格好に思えるのは、真正面からだろう。ライトが小さすぎ、大きく背の高いボンネットに押しつぶされたよう。路上を走らせると、箱型のボディが動きを強調して見せる。

コンバーチブルの412は、当時のブリストル・カーズのオーナー、トニー・クルック氏の要望で作られた。同社のAフレーム・シャシーをベースとし、シリーズ1では6.5Lのクライスラー社製V8エンジンに3速ATを搭載。以前のモデル、402や405の流れを汲む。

1978年のシリーズ2では、V8エンジンは5.9Lへ交代。ルーフの防水性や、ロールオーバー・バーの剛性が高められた。フロントグリルのエンブレムやバンパー、リアシートのヘッドレストなど、細かな改良も受け、1986年まで生産は続いた。

412 コンバーチブルの内装には、ウッドパネルとレザーがふんだんに用いられ、いかにもブリストル。全幅は1765mmと、この3台の中では細身で、段差を超えても身震いすることはない。ツーピースのルーフを取り外すと、ヘッドルームは無限に広がる。

最高出力は350ps。滑らかに仕事をこなすATと相まって、たくましい走りを叶えている。リジッドアクスルは横方向の安定性が高く、乗り心地も良好。滑らかなマナーで、地平線の先まで走ることも難しくない。

近未来的なスタイリングと見事にマッチ

ブレーキの制動力は優秀で、姿勢制御も落ち着いている。V8エンジンのサウンドは、聴き応えがある。ステアリングは、適度な重みがあり反応を予想しやすい。だが、切り始めにデッドゾーンがあり、その後も感触が豊かとはいえない。

コーナリングの印象は、412よりロールス・ロイス・カマルグの方がベター。ステアリングホイールは軽く回せ、反応はリニア。想像以上に扱いやすい。ふわりと漂うような快適性でも、大きな差をつけている。

カマルグのインテリアは遥かに上質。毛足の長いカーペットが敷かれ、ダッシュボード上のウッドパネルには、スイッチやメーター類が整列する。フロントから6.75L V8エンジンのささやきが聞こえ、リラックスした体験を生む。

コラムシフトのレバーをDへスライドさせ、右足を優しく傾けると、スポーツホイールが回転しだす。ベロア張りの車内で、甘美な移動時間へ浸れる。

積極的な旋回を試みると、ボートのように大きくボディロールしてしまう。タイヤからはスキール音が放たれる。そんな速度域で走ることは、重要視されていない。

一方、ラゴンダのインテリアは、当時の近未来的なスタイリングと見事にマッチしている。運転席へ腰を下ろすと、古いコンピューターと向き合ったような感覚になる。往年のSF映画のBGMが聞こえてきそうだ。

ステアリングは、この3台では1番感触が豊かで、レスポンスも良好。ボディロールは抑制され、動的な能力は明らかに高い。コーナーでも落ち着きは失わず、活発に運転したいと思わせる。

3車3様の他に紛れない明確な個性

5.3L V8エンジンは313psを発揮するが、車重は2023kgあり、瞬発力は際立つほどではない。それでも、速度が乗れば期待通りの走りを披露する。

メーターパネルでは、グリーンのLEDが灯る。エンジンの回転数がどのくらいなのか、細かくは読み取りにくい。沢山並んだボタンの機能は、最後まで理解しきれなかった。

それぞれの走りは、スタイリングと同じくらい個性的。カマルグは、湯船に浸かったように心地良い。ラゴンダはシャープに身をこなし、意欲的なドライバーへ喜ばれるだろう。ブリストルは、その中間に位置する、陽気で楽しいカブリオレだ。

予想外だったのが、カマルグ。巨大なボディからして、のっしり動くのかと想像していたが、遥かに引き締まった走りで驚かせてくれた。

今回の3台で筆者が選ぶなら、412。名の知れたブランドに媚びない、勇気ある選択かもしれない。自身の中で消化しきれない、クセのあるスタイリングをまとうことが、魅力といえる。好みや先入観を、見直す機会になりそうだ。

いずれのモデルも、ひと目で魅了されるような美貌とはいえない。一般的な美意識とは一線を画す。しかし、他に紛れない明確な個性を宿している。

周囲の意見がどうあれ、強い心象を残す。こんなクルマは、もう二度と作られることはないだろう。

協力:ポール・ウィルソン氏、マーク・グリフィス氏、デヴィッド・ウィロビー氏、ステファン・チェンブロヴィッツ氏、ブリストル・オーナーズ&ドライバーズ・アソシエーション、ロールス・ロイス・エンスージアスト・クラブ、ラゴンダ・クラブ

※この記事は、2013年3月に執筆されたものです。

超個性派な英国車 3台のスペック

ブリストル412(1975~1982年/英国仕様)

英国価格:1万4584ポンド(新車時)
生産数:61台
全長:4940mm
全幅:1765mm
全高:1443mm
最高速度:225km/h
0-97km/h加速:7.4秒
燃費:4.6km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1922kg
パワートレイン:V型8気筒5899cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:−
最大トルク:−
トランスミッション:3速オートマティック(後輪駆動)

ロールス・ロイス・カマルグ(1975~1986年/英国仕様)

英国価格:2万9250ポンド(新車時)
生産数:529台
全長:5160mm
全幅:1900mm
全高:1400mm
最高速度:193km/h
0-97km/h加速:11.5秒
燃費:4.2km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:2347kg
パワートレイン:V型8気筒6750cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:−
最大トルク:−
トランスミッション:3速オートマティック(後輪駆動)

アストン マーティン・ラゴンダ(シリーズ2~4/1977~1990年/英国仕様)

英国価格:3万3000ポンド(新車時)
生産数:645台
全長:5283mm
全幅:1791mm
全高:1295mm
最高速度:230km/h
0-97km/h加速:8.8秒
燃費:3.9km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:2023kg
パワートレイン:V型8気筒5340cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:313ps/5500rpm
最大トルク:44.1kg-m/4000rpm
トランスミッション:3速オートマティック(後輪駆動)

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みんなのコメント

3件
  • kmq********
    ブリストルは、他の2車に比べて半値以下でリーズナブルだ
  • mbh********
    写真の顔面だけならダットサンとルーチェの○○年モデルと言っても一瞬通用しそう。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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