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世界で広がる「歩車分離」 歩行者事故を減らすには都市開発レベルの施策が必要?

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世界で広がる「歩車分離」 歩行者事故を減らすには都市開発レベルの施策が必要?

■「名古屋走り」対策が結果的に役立った?

 日本の交通事故死者数は、昭和45年にピーク時(年間1万6765人)に比べて、平成30年は過去最小(3532人)と減少傾向です。しかし、依然として生活道路といわれる幹線道路ではない場所での死傷事故件数の減少割合は少ないです。

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 そんななか、クルマと歩行者の安全を考えるうえで、歩行者が安全に歩ける場所とクルマだけが走る道路を分離する「歩車分離(ほしゃぶんり)」という考え方があります。

 いま、歩車分離の考え方が歩行者の交通事故を減少させる施策として、広がりを見せています。どんな方法なのでしょうか。

 名古屋市の中心部では、片側二車線の道路の脇に自転車専用道路があり、その外側に歩道があります。ここまでしっかりと、歩車分離がされていれば安心だといえます。

 名古屋の場合、終戦後の道路計画の歴史的な背景によって、市街地に車線の多い道路を整備してきました。そのことが、近年になって新たに導入した歩車分離の道路構造への転換に役立ったとも考えられます。

 そのため、名古屋と同じようなことをこれから、全国の大都市で行う場合、道路整備に対する予算の問題はもちろん、町としての基本設計を大幅に見直す必要があり、実現までのハードルは高いです。

 そもそも、名古屋は東京や大阪と比べると、都市間の高速道路を含めて、市街地のクルマ交通量は少なめです。一方で、「名古屋走り」と呼ばれる、信号無視などの乱暴な運転の実態について問題になっています。

 名古屋走りの対策としては、交差点に最新の通信機器を設置して、クルマや歩行者に対する注意喚起を行う試みが進んでいます。

 歩車分離や名古屋走りの解消などによって、歩行者の安全をしっかりと守っているのです。以前取材した際には、地元自治体や自動車メーカー関係者から「自動車関連企業が多い愛知県で、交通対策をその自治体や自動車メーカーの関係者が積極的に考えるのは当然だ」というコメントがありました。

 ここに警察が加わっていることが、名古屋での歩車分離の後押しになっているといえます。

 また、クルマと歩行者の信号タイミングを分離し、交差点での事故を低減させる「歩車分離式信号」というものも存在。これは、歩行者横断中にクルマが横切らないように信号を制御するため、交差点の事故を減少させる効果があるものです。

 2002年には、警察庁が全国100カ所の交差点を抽出して歩車分離式信号を調査した結果、人身事故が約4割減少し、人対車両の事故も約7割減少していることが分かっています。

■世界中に広がる「歩車分離」

 海外ではさらにレベルアップした歩車分離が進んでいるようで、なかでもヨーロッパが進んでいるのです。もともと、ヨーロッパの古い町並みでは、石畳の路面が多く、馬車が通っていました。

 近代になるとクルマの往来が増えていったのですが、最近では市街中心部へのクルマの流入を規制する動きが活発化しています。

 こうしたクルマの流入規制には、さまざまな側面があります。ひとつは渋滞緩和です。ロンドンで実用化したことで有名になった、「コンジェスチョン・チャージ(渋滞税)」は、曜日や時間帯によって市街地の走行料金を変化させるものです。

 確かに、交通量が減ることで渋滞が減り、結果的には交通事故のリスクも減ることになりますが、歩車分離という考え方とは少し違います。

 歩車分離については、ベルギーのブリュッセルのように、中心市街地の一部の車道を廃止して、歩道や緑地帯にするという動きがあります。一般的に、「(歩行者が気軽に、楽しく)歩ける町づくり」と呼ばれ、地方自治体が中心となり大規模な公共工事をおこなっています。

 こうした動きが最近、アメリカでも活発化。市街地での観光客が多いカリフォルニア州サンフランシスコはもとより、クルマ社会の象徴ともいえるロサンゼルスですら、路面電車を広く導入することで、歩車分離の町づくりに積極的な姿勢を示しているのです。

 交通関連の国際会議で、ロサンゼルス交通局の関係者は「交通と町づくりを根本的に見直す時期にきている」と、都市構造の大規模な変革に着手する意欲を示しています。

 さらに、「究極の歩車分離」がいま、シンガポールで計画されています。シンガポール国の面積は小さく、全体で東京23区ほどとほぼ同じです。

 市街中心部では、ロンドンと同じように「コンジェスション・チャージ(渋滞税)」を導入していますが、近未来での実現を目指す計画として、地上を歩道と緑地のみとして、バスやトラックなどの大型車両を地下1階、そして一般乗用車を地下2階に走行させるような、地面から縦の方向の歩車分離が考案されています。

 欧州内でのモーターショーに出席したシンガポール政府の高官は「都市部の地下を活用する歩車分離の実現性は高い」と明言。

 別の視点では、シンガポール国内でEV(電気自動車)や自動運転などの最新技術を連携し、移動におけるビックデータを活用することで、社会における交通のあり方を根本的に考え直そうとしています。

 日本でも、国が進める「スマートシティ構想」のなかで、歩車分離を含めた未来の町づくりを真剣に議論する動きが、今年2019年から活発化しそうです。歩車の完全分離ができれば、歩行者事故ゼロを達成することは、事実上可能となるのではないでしょうか。

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