共通のプラットフォームを使って、ピュアなガソリンモデルとピュアなEVを同時に開発。ほぼ横並びのデザイン性、実用性、安全性を持つ2台を「選ぶポイント」はどこにあるのか。(Motor Magazine 2021年10月号より)
ユーティリティ性能にも配慮したバッテリー容量
欧州を中心に電動化の気運が高まる中、プジョーも人気の「208」と「2008」それぞれ、100%EVを設定した。「パワー・オブ・チョイス」を謳い、内燃エンジン(以下「ICE」)もEVも対等な存在であり、あくまで動力源の選択肢のひとつである旨をアピールしている。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
それゆえ見た目の違いもあえてつけられていない。さらには当初からICEとBEVの両方に対応することを念頭に開発された新世代プラットフォーム「CMP」により、居住空間や荷室の広さ、各種機能や装備など自動車としての基本が同等とされたことで、ユーザーは好みやライフスタイルに応じて自由に選ぶことができる。
価格差についても、e-208はけっこうな金額の補助金が受けられるので、実質的な差はより小さくなる。プジョーの試算で3年3万kmでのおおよその所有コストが同等となり、ICEを購入するのとコスト感はさほど変わらない。EVをなんら気負うことなく、購入できるのだ。
208には100ps、205Nmの1.2L 直3ターボと、このクラスでは望外の8速ATが搭載され、e-208には136psで260Nmのモーターに、50kWhのリチウムイオンバッテリーが組み合わされる。後者の場合、JC08モードで403kmと知ると、もう少し航続距離が欲しいと思う人も少なくないことだろう。
むろん要となるバッテリーの容量を大きくすれば距離も伸びて動力性能も高められる。しかし現状で座面下やセンターコンソールなどに分けて搭載したバッテリーの総体積が計約220Lに達しているところ、さらに増やすとなれば、ICE車と居住空間や荷室が同じではなくなってしまう。加えて重量が増せば走りへの影響もある。
より高価な高効率バッテリーを使えばそのあたりは抑えられるかもしれないが、そうすると現状で130万円ほどある価格差がより広がる。将来的にはもっと航続距離が伸び、価格差も小さくなっていくことだろうが、現時点ではこれぐらいがベストバランス、という認識で良いかと思う。
航続距離について、プジョーでは、「日本の一般的な自動車の使用状況で十分な走行距離を確保できており、各充電設備で随時充電することで利便性を確保できる」とし、「最大走行距離が注目される傾向にあるが、シティコミューターとしてのランニングコストの低さ、運転のしやすさ、コンパクトさもまた重要」としている。
今回の取材でも途中、どちらも燃料計と残量計の表示が4分の3弱になった際に、e-208は走行可能距離が260km台だったところ、208は500km超が表示され、そこから先もe-208はみるみる下がっていったのに対し、208はなかなか減らない。こうした違いが受け入れられるかどうかは、使う側のライフスタイルによるということだろう。
スムーズなダッシュ力。その一方で落ち着き感も
乗り比べるとドライブフィールが異なることは言うまでもない。e-208もけっして性能を誇示するタイプのEVではないとはいえ、やはりモーターの力強くリニアなレスポンスは、とうていICEで得られるものではない。アクセルペダルを軽く踏み増すとスーッとなめらかに加速する。瞬発力を強調するのではなく、自然に車速が高まっていく感覚には、ICEっぽい伸びやかさを意図して調律したフシも見受けられる。
加速感は軽やかでも車両重量はそれなりにある。そのため操縦性は、外見からイメージするよりもどっしりと落ち着いた感覚がある。キビキビと身軽さが際立つ208とは趣を異にする部分だ。その208は、わずか1.2Lながらブーストが本格的にかかる2000rpm台の後半から5000rpmあたりにかけての中速域は、かなり力強い。このクラスのクルマではDCTの採用も多いが、208は8速のトルコンATを組み合わせている。多段化の強みとトルク増幅効果もあって低回転域も扱いやすい。
音や振動も3気筒としては抑えられている方だが、高回転域でのサウンドに3気筒らしさがやや残る。しかしそれなりに対策が施されているので、e-208との静粛性全般の差はそれほど大きくはない。ICEとBEVのの最大の違いは、アクセルペダルを踏んだ直後の反応にある。
リニアに応答するe-208に対し、208は加速体勢に入るまでにわずかにひと呼吸おいてからとなる。あるいはいったんアクセルオフにして再加速するような状況でも、208がしゃくるような挙動を伴うことがあるのに対し、e-208はほぼ姿勢を乱すことがない。そのあたりは走りの上質感を左右する。
また、208のスポーツモードはワインディングロードを積極的に走るには楽しいが、過敏すぎて街中で乗るにはあまり適さない。対照的に、e-208のスポーツモードではもともと良好なレスポンスがさらに良くなるが、リニアなので、街乗りでも意のままに操ることができる。
ついでに述べるとe-208はエコモードでもけっこう速い。Bレンジにすると、いわゆるワンペダルドライブに近い感覚になる。フットブレーキのフィーリングはそれほど悪くないが、やはり208の方が自然ではある。
音や振動については、EVが有利な印象がある。しかし実際は、BEVはモーターやギア、風切り音やタイヤの発する音がかえって目立つもの。ゆえに自動車メーカーは、むしろICEよりも入念に対策を施している場合が多い。
e-208も床下に搭載したバッテリーに遮音材としての機能を持たせたり、アコースティックガラスを採用するなどしているが、それでもタイヤがらみの音は目立つ。良路はまだしも不整路になると、それなりに気になる。
その点で208の方が、タイヤなどからのノイズが気にならない。とくに高速巡航時がそうだ。ただし、こうした一連の音に関する感覚は、我々がICEに慣れすぎているという事情もあるのだと思う。
ところで、208はスポーツモードに人工的なサウンドを付与している。近年の他モデルを見ても、プジョーはこうした演出に積極的な面がある。逆に他社のBEVでは音による演出も見受けられるが、e-208にはないあたり、何か理由があるのだろう。
2008系の走りは、さらにしなやかで上質
一方、208系から2カ月後に日本上陸を果たした2008系にも、より高出力な1.2Lが搭載される。車両重量は100kgあまり増えるが、印象は共通している。
セグメント中では最長クラスの2610mmというホイールベースを持ち、全高を1550mmにとどめながらも最低地上高は205mmとロードクリアランスを確保しているのが特徴で、おかげで足まわりがよく動き、入力を上手く受け流しながらも、適度にひきしまっていて無駄な動きを出さない。208系よりも、多くの人がイメージするであろう「猫足」のイメージに近い。
さらには、SUVゆえ入力が大きくなることを考慮して、208系にはないアルミ押し出し材による強固なサブフレームがフロントフロアに配されたことも効いてか、ハンドリングの正確性に優れることも特筆できる。
208系も2008系も、ICEもよくできているが、これまで電動化のイメージのなかったプジョーが、いきなりこれほど完成度の高いBEVを送り出してきたことには恐れ入る思いである。(文:岡本幸一郎/写真:永元秀和、小平 寛、井上雅行)
プジョー208/e-208ラインナップ
e-208GT(モーター<BEV>):432万8000円
e-208Allure(モーター<BEV>):396万1000円
208GT(1.2L直3ターボ):303万8000円
208Allure(1.2L直3ターボ):267万1000円
208Style(1.2L直3ターボ):253万9000円
プジョー e-208GT 主要諸元
●全長×全幅×全高:4095×1745×1465mm
●ホイールベース:2540mm
●車両重量:1500kg
●モーター:交流同期電動機
●最高出力:100kW(136ps)/5500rpm
●最大トルク:260Nm/300-3674rpm
●バッテリー総電力量:50kWh
●JC08モード航続距離:403km
●駆動方式:FWD
●タイヤサイズ:205/45R17
●車両価格(税込):432万8000円
プジョー 208GT 主要諸元
●全長×全幅×全高:4095×1745×1465mm
●ホイールベース:2540mm
●車両重量:1160kg
●エンジン:直3DOHCターボ
●総排気量:1199cc
●最高出力:74kW(100ps)/5500rpm
●最大トルク:205Nm/1750rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・44L
●WLTCモード燃費:17.9km/L
●タイヤサイズ:205/45R17
●車両価格(税込):303万8000円
プジョー2008/e-2008ラインナップ
e-2008GT(モーター<BEV>):472万4000円
e-208Allure(モーター<BEV>):433万2000円
208GT(1.2L直3ターボ):303万8000円
208Allure(1.2L直3ターボ):342万7000円
208Style(1.2L直3ターボ):303万5000円
プジョーe-2008GT主要諸元
●全長×全幅×全高:4305×1770×1550mm
●ホイールベース:2610mm
●車両重量:1600kg
●モーター:交流同期電動機
●最高出力:100kW(136ps)/5500rpm
●最大トルク:260Nm/300-3674rpm
●バッテリー総電力量:50kWh
●JC08モード航続距離:385km
●駆動方式:FWD
●タイヤサイズ:215/55R18
●車両価格(税込):472万4000円
プジョー2008GT主要諸元
●全長×全幅×全高:4305×1770×1550mm
●ホイールベース:2610mm
●車両重量:1270kg
●エンジン:直3DOHCターボ
●総排気量:1199cc
●最高出力:96kW(130ps)/5500rpm
●最大トルク:230Nm/1750rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・44L
●WLTCモード燃費:17.1km/L
●タイヤサイズ:215/60R17
●車両価格(税込):342万7000円
[ アルバム : プジョーe-208GT × 208GT & e-2008 × 208 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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