使い勝手はもちろん走りや安全面のトータルで評価
ミニバンの満足度を左右する決定的なポイントはなにか? 乗降性? シートアレンジ? 動力性能? 室内の静かさ?
じつはそのポイントは室内高にある。ワゴンでもSUVでもなく、あえて3列シートのミニバンを選ぶ場合、室内1-3列目席全体の広さはもちろんだが、子供はもちろん、大人でも背をかがめて車内を移動できる便利さや空間のゆとりこそ、満足度に直結する。
実際、売れているミニバンは室内高に余裕がある車種ばかり。では、満足度が得られる室内高とはどのぐらいの高さなのか? 答えは各自動車メーカーのミニバン開発チームの調査によって明白。室内高1400mm以上なのである。ゆえに同じクラスでも1400mmを境に売れ行きに大きな差が出てくるというわけだ。
ここでは室内高1400mmを超える車種がひしめく、サイズ、価格的にも買いやすいMクラスボックス型ミニバンのトータル満足度ランキングTOP3を紹介したい。
1位 ホンダ・ステップワゴン
ステップワゴンの室内高はクラス最大の1425mm(ライバルは全車揃って1400mmジャスト)。しかも、後席の乗降は大開口で、ステップ高385mmというごく低い。さらに両手がふさがっていても足先で開閉できるハンズフリーオートスライドドアも選べる。
また、スライドドアからだけでなく、わくわくゲートと呼ばれるバックドアの横開きのサブドアからも可能。
サブドアは大きく開くバックドアと違い、車体後方に約40~76cmのスペースがあれば開けられ(バックドアだと約120cm必要)、人や犬の乗降、荷物の積載性でライバル(セレナのデュアルバックドアよりも便利)を圧倒する。
走行性能も素晴らしい。標準車は軽やか、まろやかで上質な加速力、乗り心地が特徴で、例え高速走行中でも車内はじつに静か。1-3列目席間の会話もしやすいのである。
一方、オデッセイ譲りの2リッターエンジン+モーターのHVの組み合わせもあるエアロ仕様、専用サスペンション、17インチタイヤを奢るスパーダは、ボックス型ミニバンとは思えないホンダらしいスポーツ性能の持ち主。とくにガソリン車でそのキャラクターが明確になり、同時に姿勢変化が少ないことからクルマ酔いしにくいボックス型ミニバンの筆頭でもあるのだ。
唯一の弱点? と言えるのが、日産セレナやトヨタ・ヴォクシー&ノア、エスクァイア軍団と違い、2列目キャプテンシートがクラスで唯一横スライドせず、ベンチシート化できないこと(ベンチシートは標準車のみにOP)。HVも選べるスパーダは7人乗り、キャプテンシート仕様のみとなり、子育て世代、愛犬家の使い勝手によっては要考慮である。
とはいえ、より贅沢な居心地が味わえる2列目席キャプテンシート限定の選択なら、ステップワゴンはエコ派、スポーティ派にもうってつけな、使い勝手抜群、先進安全運転支援機能もまずまずの家族納得、子供が笑顔になれるトータルバランスに優れた1台と言える。
2位 日産セレナ
販売台数のほとんどがスタイリッシュなエアロ仕様のハイウェイスターという、同一車線での半自動運転を可能にしたプロパイロット&先進安全運転支援機能が用意されるセレナ。CMなどのイメージからファミリー臭が強いものの、じつは走行性能にも見るべきものがある。動力性能こそクラスでもっとも穏やかだが、フットワークはなかなかハイレベル。山道、高速レーンチェンジなども(家族の安心安全のため)安定感たっぷりにこなしてくれるのだ。
この記事を書いている時点のパワーユニットはマイルドハイブリッドと呼ばれる“S-ハイブリッド”がメイン。だが、間もなくノートに採用されている、モーターのパワーのみで走行してエンジンは発電専用として使われるe-POWERを搭載する。そうなれば一気にライバルのHVモデルを燃費、走行性能で凌駕する可能性大である。
そんなセレナの基本的実用性の切り札が、以前から採用されているスマートマルチセンターシートによる2列目席キャプテン&ベンチシート自在のアレンジ性。
さらに、この5代目から採用されている、バックドアのガラス部分が開閉する(日産としてはおなじみ?)デュアルバックドア。車体後方に約48cm(ハイウェイスター)のスペースがあれば、荷物を出し入れできるメリットがある。ただし、ステップワゴンと違い、人や犬が乗降することはもちろんできない。
セレナの場合は待望のe-POWER登場後に改めてライバル比較する必要があるが、いきなりベストバイになる可能性大である。
3位 トヨタ・ヴォクシー/ノア/エスクァイア
全3モデル合計の販売台数ではライバルを圧倒するのがトヨタのヴォクシー/ノア/エスクァイア軍団。2リッターモデルに加え、いち早く1.8リッターエンジン+モーターのHVをラインアップし、バリエーションの多さからも人気をリードしてきた。
ただし走行性能はガソリン、HVを問わず動力性能に力強さはあっても、全体的には平凡。とくにエンジンに起因するであろう室内のこもり音はライバルにない現象で、早期改善を望みたい部分。
また、バックドアにステップワゴンやセレナのような工夫はなく、開閉するには車体後方に約95cmのスペース(ステップワゴン約40~76cm、セレナハイウェイスター約48cm)が必要になり、バックドアを開ける際クルマを前に出さなくてはならないケースも多いはずである。
そして先進安全運転支援機能も遅れている。Vグレード以上に標準装備されるのはもっとも簡易なトヨタトヨタセーフティセンスC。ゆえにアダプティブ クルーズ コントロール(ACC)の設定もなし(ステップワゴンとセレナは設定あり)。今後、Lクラスミニバンのトヨタ・アルファード&ヴェルファイアから採用された第二世代セーフティセンスが用意されるまで、待ち……ということだ。
とはいえ、2段構えのヘッドライトが精悍なヴォクシー、まるで巨大な鏡のような大迫力グリルを持つノア、ミニ・アルファードと呼べる高級感ある顔つきのエスクァイアの存在感は大きな魅力。ステップワゴンと違い、2列目キャプテンシートでも中寄せ機構によってベンチシート化できる便利さも実際に使ってみると便利である。
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