本田技研工業の100%子会社で、ホンダ車用の純正用品を開発、製造しているホンダアクセスは、今2024年30周年を迎えた。
9月29日、ホンダアクセスは東京都港区のHonda ウエルカムプラザ青山において、「Modulo 30thanniversary 特別展示/スペシャルトークショー」を開催した。当日は雨天であったにもかかわらず176名もの来場者が集まり、なかには韓国からのお客さんもおり、土屋圭市氏の人気の高さを裏付けていた。
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◆特別な4台が展示、実効空力と剛性最適化を狙ったパーツを装着
特別展示についてから説明しよう。車両として展示されていたのは4台。まず『Sports Modulo CIVIC TYPE R(スポーツモデューロ・シビックタイプR、FD2)。2008年、“実効空力”をはじめて提唱したシビックタイプR用のエアロパーツ。土屋圭市氏がホンダアクセスの開発にはじめて関与したモデルがこのシビックタイプRである。
『S660 Modulo X Version Z(S660モデューロXバージョンZ)』は、モデューロXシリーズの開発を通じて、ホンダアクセスの “実効空力”エアロパーツと“剛性最適化”アルミホイールの技術レベルが高まったという。このS660モデューロXはホンダアクセスが土屋圭市氏とともに開発に長い時間をかけ、実効空力性能に磨きをかけたモデルだとのこと。
『ヴェゼルe:HEV』純正アクセサリー装着車スポーツスタイルには、ホンダアクセスが“剛性最適化”技術を投入して開発した「アルミホイールMS-050」と、“実効空力”を意識した造形の「テールゲートスポイラー」を装着した新型VEZELの純正アクセサリー装着車。
新型「シビックRS」テールゲートスポイラー(ウイングタイプ)装着車は、ホンダアクセスがこれまで培ってきた“実効空力”のノウハウを投入して開発した純正アクセサリー「テールゲートスポイラー(ウイングタイプ)」が装着されていた(今秋発売予定)。
そのほか、モデューロブランドとして初の製品となる1994年発売となる3代目『ビガー』用のアルミホイールや1996年発売 ホンダアクセス初のスポーツサスペンション(5代目『プレリュード』用)といったパーツ類も展示されていた。
◆トークショーで秘話を土屋圭市氏が語る
さて、トークショーの話に移ろう。トークショーではモータースポーツアナウンサー、ピエール北川氏とカーライフジャーナリストまるも亜希子氏がMC役となり、元レーシングドライバーでモデューロ開発アドバイザーの土屋圭市氏、元ホンダアクセス開発統括の福田正剛氏が登壇した。
トークショーが始まってすぐ、土屋圭市氏が2008年ごろからモデューロとの関わりを持っていることが紹介され、当初の思い出について聞かれた土屋氏は「最初はほかのワークス系のようにしたいというような気持もありましたね。『NSX-R』をサーキットだけでなく普段使いでも気持よく、という提案をした研究所から怒られてたりしてね。でも、もともとサーキットを走るためのタイプRだけど、街中でも走りやすいし、それでいてタイムは同じものが出せるもの、というのが目標になってきたのです」
土屋圭市氏はモデューロ発足時に見せられたモデルに対して「こんなの下請け会社の社長さんしか買ってくれませんよ」というほど、辛辣なコメントをしたという。そうしたアドバイスを生かしながらモデューロは進化してきたということ。
『S2000』を例に土屋氏は「それまで車高調入れて走ってきたような人に、ちょっと大人になって別の楽しみ方を知ってほしい、というような気持ちを込めて開発したりしているんです。けっしてサーキットで何秒でるとかいう、そういうサスペンションではないんです」
S2000については福田氏も「S2000はオープンカーですから、オープン時とクローズド時で走りに大きな違いが出るのはおかしいと思っています。なのでそこを揃えていくことも大切だと考えました」と付け加えました。
さらに話は進み2008年に土屋氏が初めて関わったFD2型シビックの話題となった。このときのエピソードとして土屋氏は「このときはスーパー耐久に出そうって話になったんですよ。研究所から1台、モデューロから1台の2台体勢でね。でもね、モデューロは(展示車を指さしながら)この形でしなやかな足で市販タイヤでとかいうんですよ。もうフザケンナと思いましたよ。レースなんだからさ、市販車と違うでしょ、と思ったんだけど、十勝24時間では勝ちましたからね。研究所が作ったクルマをしなやかな足にしてもよかった、というのがこのクルマが最初の成功例ですよ」とモデューロの底力を感じさせるエピソードを伝えてくれた。
◆女性デザイナーの発案から突き詰められたテールゲートスポイラーの開発ストーリー
話はこれから発売される現行シビックRS用のテールゲートスポイラーとなり、ホンダアクセスでシビックテールゲートスポイラー開発を担当する山崎純平氏が加わった。テールゲートスポイラーの話を前に、山崎氏がホンダアクセスに入った当時のエピソードが語られた。
ホンダアクセスでは動画などを撮影する際に、カメラマンが乗った並走車をホンダアクセスの社員がドライブするという。山崎氏もそのドライバーを任されたのだが、デコボコした波状路のコーナーを走るクルマを追いかけて平坦な路面を走っていっても追いつけなかったという。これを悔しいと思った山崎氏は、自ら訓練を実施し並走できるスキルに達したとのこと。ホンダアクセスにはそういうスピリッツを持った社員が非常に多いとのことだった。
テールゲートスポイラーの開発は非常に難しかったという。テールゲートスポイラーにはシェブロンと呼ばれるギザギザ形状が施されている。このシェブロンは川口氏という女性デザイナーの発案が発端にある。
別のクルマの空力テストを行っている際に、川口氏の提案によりシェブロンを配置したところ、驚くほどスタビリティが低下したというのだ。そして同時に驚くほど静粛性が向上したという。スタビリティ低下なので普通は失敗で終わらせるところだが、これだけの形状でこんなに変化が出るのは凄いことだということになり、土屋圭市氏と実効空力(一般道を走るレベルの速度域で効果を発揮する空力性能をホンダアクセスではこう呼ぶ)をやっていくなかで生きてきたとのこと。
今回発売するビックRS用のテールゲートスポイラーは、シビックタイプR用とは異なるという。タイプRとはエンジンの性能も違い、ほかのボディパーツも異なり、あくまでRS用にデザインしたものだという。実効空力の効果を十分に体感できることを目標として作られているのは言うまでもないだろう。このテールゲートスポイラーはマイナーチェンジ後のシビックRSを対象車種としているが、マイナーチェンジ前に装着されたホンダアクセスのテールゲートスポイラーには、主翼部分のみを装着することも可能として、現ユーザーへの配慮もされている。
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