LEXUS LS500h × BMW 740d xDrive × Mercedes-Benz S 560 4MATIC Long
レクサス LS500h × BMW 740d xドライブ × メルセデス・ベンツ S 560 4マティック ロング
ジャガーがポルシェ超えを達成? Fタイプ 400 スポーツと911カレラを長距離走で評価 【Playback GENROQ 2018】
頂きを目指して
レクサス自慢のGA-Lプラットフォームや新開発3.5リッターエンジンを採用し、世界のプレミアムサルーンに引けを取らぬ質感と性能を身に着けたという新型LS。実際に、ドイツのフラグシップたちに匹敵するポテンシャルはあるのか?世界の頂点に君臨する2モデルとロングツーリングに出かけてみた。
「ブランドの威信を背負って立つ大看板・フラッグシップを試す」
フラッグシップサルーンは、言うまでもなくブランドの威信を背負って立つ大看板だ。事実上の最高級セグメントだから、真っ向勝負には言い訳なし、隅々まで比べられて当然だが、敵は何しろメルセデスの象徴ともいうべきSクラス、さらにBMW 7シリーズも既に40年もの長い歴史を持つ。そこに新参者が挑戦するのはいかにレクサスでも簡単ではないが、タイトルマッチを避けて通ることはできない。しかも今度のLSは価格を含めて直接勝負する構えである。というわけで新型LSを含めすべて4WDモデルを揃え、全長5m超の全天候型高性能エグゼクティブサルーン対決を行った。
「試乗モデルはハイブリッドシステム搭載のLS500h」
主役はもちろんレクサス LSだ。5年ほど前にマイナーチェンジしているが、日本でもレクサス LSとして再登場した4代目(それ以前はセルシオ)は2006年デビューだから、新型に切り替わるまでに10年以上も経っている。待ちかねたぞ武蔵! 的なモデルチェンジを受けた新型LSのボディサイズは1種類。今回は先代ロングボディに比べても大きくなった。5235mmの全長は従来型LSロングに比べて+25mm、全幅1900mmは同じく+25mm、1450mmの全高(4WDは1460mm)は反対にマイナス15mmである。
レクサス LSにはハイブリッドとV6ツインターボの2種類のパワーユニットが用意されているが、ガソリン3.5リッターV6ツインターボのLS500は市場投入がちょっと遅れ、まずLS500hから発売された。LS500hはクーペのLC500hと基本的に同じ3.5リッターV6+モーターのハイブリッドパワートレインを積む。299ps/356Nmを発生するエンジンに加え、180psと300Nmを生み出すモーターのパワーを合わせたシステム最高出力は359ps、トランスミッションは10段疑似ステップ変速機構を持つ無段変速だ。
「真のラグジュアリーカーを目指すなら、LSは加減速のレスポンスを磨くべきだ」
4WDで2.4トン近くもある重量級ボディを停止からスイっと押し出す力強さはいかにもハイブリッドと言えるが、その先はいささか期待外れだった。試乗会でも不満に思ったが、スピードを緩やかに上げ下げしたい時に、もう少しだけ加速したいと思って踏み込んだ時のレスポンスにはちょっと不満が残る。日常使用を考えてみれば、少しだけ加速する、あるいはちょっとだけ減速することが多いが、そういう場合に微妙なコントロールが効くかどうかがラグジュアリー感を大きく左右する。そういう観点からすると、やはりCVTは不利である。
特に気になるのは、交通量が少ない山道や田舎道だ。自分のペースで快適に走りたいところだが、LS500hではそれなりのアップダウンが続くような山道、あるいは高速道路などでスピードを回復しようとして踏み込むと、すぐに回転数が上昇、ビーンという無味乾燥のノイズが耳につく。右足の操作に伴って気ぜわしく上下する回転計の針と、耳障りがいいとは言えないエンジン音が大きくなったり小さくなったりするのは落ち着かない。高速道路をゆっくり一定速で走る場合はいいが、それ以外の場面では繊細なスピードコントロールが難しい。重量に対して低回転域のトルクが足りない感じである。後席に偉い人を乗せて早朝のゴルフ場へ急げ! というような場面では運転手はかなり気を遣って運転しなければならないのではないか、と要らぬ心配もしたくなる。
「旗艦セダンに相応しい悠揚迫らぬ大人の立ち居振る舞いの740d」
現行G11型7シリーズに昨年追加された740dは直列6気筒ディーゼルターボを搭載、日本仕様はすべて4WDのxドライブとの組み合わせだ。B57型3.0リッター直列6気筒ディーゼルターボは例によって“ツインパワーターボ”と称されているが、実は低負荷用と高負荷用の2ステージターボを2基装備、つまり計4基のターボを使用してレスポンスと過給効率を両立させた凝った最新世代ユニットである。
スペックは320ps/680Nmというものだが、とにかく実用域での自由自在の力強さが見事である。LSとは対照的にほんの少し右足の親指に力を込めただけでスルスルと速度を増していく様子は、いかにも旗艦セダンに相応しい悠揚迫らぬ大人の立ち居振る舞いだ。極低速で走っている時は遠くでざわざわ風が騒ぐようなディーゼル音とビートが耳に届くが、スピードが上がればまったく気にならなくなる上に、滑らかで骨太で、しかも間髪入れないレスポンスが頼もしい。
しかも高速道路と伊豆山中を含めた行程中は常に車載コンピューターには13km/L前後の燃費が表示されていた(JC08モードは15.4km/L)。スタンドで軽油を満タンにすると燃料系の横に1000kmを超える航続距離の数字が表れるのは何とも心強い。一方のLS500h(JC08モードで14.4km/L)はだいたい10km/L前後に留まった。重いボディは山道では不利である。ちょっと遅れて発売されたV6ツインターボ仕様のLS500にはまだ限られた場面でしか試乗できていないが、あちらはまったく事情は異なるとはいえ、レクサスの金看板であるハイブリッドで同じようなラグジュアリー感を演出できていないのは何とも残念だ。
「S 560のV8は豊かな川の流れのように、いつでも滑らかに欲しいだけの力を溢れ出す」
昨年ビッグマイナーチェンジを受けたメルセデス Sクラスの主力エンジンは、4.7リッターV8ツインターボの従来型「550」よりダウンサイジングしながらパワーアップした4.0リッターV8ツインターボで、懐かしい「S 560」という数字が復活した。もちろん今ではエンジンの排気量や出力の数字とは何の関係もない。M176型V8は469ps/700Nmを発生、トランスミッションも9速ATとなった。
Sクラスともなれば静かでパワフルなのは当然、その上でパワーをいかに上品にエレガントに生み出すかが求められる。その点、S 560のV8はまったく文句なし。豊かな川の流れのように、いつでも滑らかに欲しいだけの力が溢れ出てくる。低負荷時にはV8のうちの4気筒を休止させる機構も備わるというが、JC08モード燃費は9km/リッターとさすがにハイブリッドやディーゼルには敵わない。
乗り心地に関してもLS500hは良ではあるが優とは言い難い。路面によってはコツコツという硬質の突き上げを感じる上に(20インチのランフラットタイヤの影響もあると思う)、ブルルンという振動が伝わることもあり、エアサスを備えたラグジュアリーセダンとしては、期待したほどのしっとり滑らかな感触は得られなかった。新しいGA-Lプラットフォームを採用してボディ剛性を大幅に向上させた上に、重心高や前後重量配分を最適化したというLSは、確かにステアリングの正確性が向上し、以前に比べて自信を持って道幅を目いっぱいに使えるようになった。ただし、その分ラグジュアリー感がやや疎かになったような気がする。ハンドリングについても大型化したせいか、回り込むようなコーナーの後半部でヨロリという感じでボディ後部が遅れて傾く感じが唐突にドライバーに伝わってくる。
「豊かなトルクが右足に忠実に溢れ出すドイツ勢2台の振る舞いは見事だった」
BMWやメルセデスは、より高速域でのコーナリングであってもそのようなことはなく、電子制御の助けが入る前にむしろドライバーに感覚的に限界に近付いていることを知らせてくれる。最も軽いLS500のRWDでも2150kg、最重量級のLS500hエグゼクティブ(AWD)だと2390kgに達する車重を考えると、自分でステアリングホイールを握るオーナードライバーよりもショーファーカー用途を優先させたサルーンと捉えるべきかもしれない。
そうなると、乗り心地はもっとブラッシュアップが必要だ。18インチタイヤのS 560はもちろん、LSと同じく20インチのランフラットを履いた740dでも全体的に乗り心地は勝っていたのである。また細かいことだが取り回しもメルセデスに一歩譲る。S 560 4マティックロングのほうが僅かにボディが大きいにもかかわらず、最小回転半径はSクラスが5.8m、LS500hは6m。実際に駐車場でも一番大きく感じたのはLSだった。数字としては小さな違いかもしれないが、毎日扱う運転手さんにとっては無視できない点ではなかろうか。
「厳しいようだが、現状の試合内容は大差だ」
運転支援システムの中のレーンキープの作動具合もメルセデスやBMWのほうがより繊細というか、ドライバーの意図に近いものだった。LSは車線に近づいてからグッと修正が入るので、ちょっとずつ修正を入れてできるだけレーン中央を維持するSクラスなどよりも左右に大きくふらつき気味。ステアリング上スイッチでの車速設定や解除・復帰といった操作もドイツ勢のほうがやりやすい。
またひとつ気になったのはLSが採用する後退時に静止している歩行者なども感知するブレーキ制御(世界初という)が、かえって面倒になる場面もあることだ。LSのようなクルマの場合、後方で誘導してくれる人がいることが多いと思われるが、予期せず突然ガツンとブレーキが作動することがあるので要注意。駐車場で親切に後ろに回ってくれる人に予め伝えておいたほうがいいだろう。
厳しいようだが、現状の試合内容は大差だ。後半から出場するツインターボ仕様の活躍に期待しよう。
REPORT/高平高輝(Koki TAKAHIRA)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)
COOPERATION/横浜国際プール
【SPECIFICATIONS】
レクサス LS500h バージョンL(AWD)
ボディサイズ:全長5235 全幅1900 全高1460mm
ホイールベース:3125mm
トレッド:前後1635mm
車両重量:2370kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHC
総排気量:3456cc
最高出力:220kW(299ps)/6600rpm
最大トルク:356Nm(36.3kgm)/5100rpm
システム最高出力:264kW(359ps)
モーター最高出力:132kW(180ps)
モーター最大トルク:300Nm(30.6kgm)
バッテリー種類:リチウムイオン
トランスミッション:電気式無段変速機
駆動方式:AWD
サスペンション:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前後245/50RF19
燃料消費率(JC08モード):14.4km/L
車両本体価格:1500万円
BMW 740d xドライブ Mスポーツ
ボディサイズ:全長5110 全幅1900 全高1480mm
ホイールベース:3070mm
トレッド:前1610 後1640mm
車両重量:2060kg
エンジンタイプ:直列6気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量:2992cc
最高出力:235kW(320ps)/4400rpm
最大トルク:680Nm(69.3kgm)/1750-2250rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後5リンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/40R20 後275/35R20
燃料消費率(JC08モード):15.4km/L
車両本体価格:1418万円
メルセデス・ベンツ S 560 4マティック ロング
ボディサイズ:全長5255 全幅1900 全高1495mm
ホイールベース:3165mm
トレッド:前1625 後1635mm
車両重量:2220kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
最高出力:345kW(469ps)/5250-5500rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/2000-4000rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前後245/50R18
燃料消費率(JC08モード):9.0km/L
車両本体価格:1699万円
※GENROQ 2018年 3月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。
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みんなのコメント
同じ車好きとしてどうしても看過出来ないのだろう
それは走りが全く出来てないのに価格だけは勝手にライバル視する欧州勢とタメを張るから
トヨタさん一人勝ちで儲かってるのだからコスト重視スケールメリットのみの汎用シャシありきではなくレクサスブランドとして一から基本骨格を設計調達し走りを磨いてこそ誰もが認めるプレミアムブランドと言われると思うのだが
唯一まともに開発したのがLFAだけというのはあまりにもお粗末だ