質実剛健な道具感が強まった「ランドクルーザー250」
トヨタの新しいクロスカントリーSUV「ランドクルーザー250」には、ディーゼルターボ車と自然吸気ガソリンエンジン搭載車が存在します。
【画像】「えっ!…」これが奥深い“ランクル”の世界観を味わえる「ランドクルーザー250」のガソリン車です(30枚以上)
このうち後者は、乗る人によって意見が大きく分かれるクルマでしょう。今回、実際に「ランドクルーザー250」の自然吸気ガソリンエンジン車に試乗してみて、好みにマッチする人と、そうでない人とがハッキリ分かれる乗り味だと実感しました。
本題に入る前に、まずは「ランドクルーザー250」がどんなモデルなのか、おさらいしておきましょう。
「ランドクルーザー250」は2024年春に発売された“最新のランクル”で、従来あった「ランドクルーザープラド」の実質的な後継モデルです。
ポジショニングは「ランドクルーザー300」よりちょっと下。“プラド”は、“300”の前身である「ランドクルーザー200」などのワゴン系モデルよりもひと回り小さなフレームを使っていましたが、「ランドクルーザー250」は“300”と同じラダーフレームを採用しています。これにより車体サイズも、ラグジュアリーな“300”とほぼ同等に拡大されました。
ただし、全モデル6気筒エンジンを搭載する“300”に対し、「ランドクルーザー250」は全車とも4気筒エンジンとなるなど、やや格下の部分があるのも事実です。
一方、世代を追うごとに高級志向になっていた“プラド”に比べると「ランドクルーザー250」の内外装はラギッド感あふれる雰囲気で、質実剛健な道具感が強まっています。
このように、「ランドクルーザー250」は現行世代になって“300”との立ち位置が「上下に近い関係」から「キャラクターが異なる関係」になったのが大きなターニングポイント。“プラド”から「ランドクルーザー250」への車名変更は、そうした“キャラ変”も大きく関係しているのです。
●「ランドクルーザー250」のガソリン車はディーゼル車より非力だが
そんな「ランドクルーザー250」の日本仕様には、2種類のパワートレインがラインナップされています。
ディーゼルエンジンは2.8リッターのターボつきで、最高出力204ps、最大トルク500Nmを誇ります。
その印象は“不満のない動力性能”というもの。厚いトルクによるゆとりと8速ATの組み合わせは、2.3トンを超える車体をしっかりと加速させます。
一方のガソリンエンジンは、2.7リッターのターボなし=自然吸気仕様。最高出力は163ps、最大トルクは246Nmとなっています。
ディーゼル車と比べると、スペックはかなり控えめです。そこがなんとも気になりますよね。そこでここからは、ガソリンエンジン車の印象を中心にお伝えしていきましょう。
早速、試乗へいく前に、まずはグレードや装備内容も見ておきましょう。何を隠そう、ディーゼル車とガソリン車はグレード構成が異なるのです。
上級の「ZX」、中間の「VX」、そしてベーシックな「GX」と3つのグレードが選べるディーゼル車に対し、ガソリン車のグレードは「VX」のみ。中間グレードだけの設定なのです。
当然、装備は上級の「ZX」ほど充実してはいません。まずタイヤ&ホイールは「ZX」の20インチに対して18インチに。さらにヘッドライトのアダプティブハイビーム機能も省略され、「ZX」とは異なるルックスとなります。
加えて、悪路走破性向上のためにフロントスタビライザーを切り離す“SDM(Stabilizer with Disconnection Mechanism)”、悪路走行時の路面に合わせた制御切り替え機能、ドライブモード選択機能も非搭載となります。
また、メーターパネルやセンターディスプレイも、「ZX」の12.3インチに対して7.0インチとひと回り小さくなります。
一方、シート表皮は本革で、フロントシートにはヒーターだけでなくベンチレーション機能も搭載。さらに、全方位モニターつきナビゲーションやサンルーフも標準装備となります。
つまり最上級の「ZX」と比べなければ、装備は十分に充実しているグレードといっていいでしょう。
それでいて、ガソリン「VX」の価格は、ディーゼル車のベーシックグレード「GX」よりわずか25万円高の545万円(消費税込、以下同)。「VX」のディーゼル車は630万円なので、同じ装備レベルながらエンジンが異なるだけで“85万円も安い”と考えれば、割安感を覚える人も多いでしょう。もちろん筆者(工藤貴宏)もそう思います。
では、気になるその走りはディーゼル車と比べてどうなのでしょうか?
ストレートにいえば、2.2トンを超える車体に対してトルク不足は否めません。日常的な加速でもエンジン回転数が上がりがちで、その分、ややノイジーな印象。ディーゼル車の悠々とした走りに対して、「頑張っているなぁ」という印象です。
高速道路の合流時などは、アクセルペダルを深く踏み込む必要がありますし、燃費もカタログ値のWLTCモードで7.5km/Lと、昨今では珍しい数値です(ディーゼル車は11.0km/L)。
ただし、ディーゼル車に比べて車両重量(特に車両の前部)が140kgも軽い影響から、ハンドリングフィールはディーゼル車より軽快な印象です。
“ランクル”のルーツを感じさせるキャラクター
そんな「ランドクルーザー250」のガソリン車は、果たしてどんな人とマッチングがいいモデルなのでしょう?
まずはなんといっても、ハイコスパな「ランドクルーザー250」に求める人でしょう。
ディーゼル車のエントリーグレード「GX」に対し、25万円の価格アップで運転席電動調整機能や前席ヒーター&ベンチレーション機能つき本革シート、サンルーフ、電動開閉式バックドアなどが備わると考えれば、かなりお買い得。コスパ最強です。
また、軽快なハンドリングを望む人やディーゼル車が好みでない人にとっても、ガソリン車の「VX」は魅力的な選択肢となるでしょう。
高速道路や峠道はあまり走らず、街乗り中心で使うという人なら、力不足が否めない動力性能もさほど気にならないかもしれません。
さらに、かつての「ランドクルーザー」を知っているコアなファンとのマッチングも悪くないだろうと、筆者は考えます。
かつて主流だった「ランドクルーザー70」や、“70”から派生したばかりの“プラド”は、装備やインテリアが質素でエンジンもパワーにゆとりがなく、走行音もノイジーでした。
その頃の「ランドクルーザー」を知っている“玄人”なら、「VX」のガソリン車に対して「ランクルはこういうのでいいんだよ」という気持ちになるかもしれません。
「ランドクルーザー250」のガソリン車は、ある意味“ランクル”のルーツを感じさせるキャラを備えたモデルなのです。かつてのモデルに比べると、装備類は相当充実していますけどね。
はっきりいって、筆者が「ランドクルーザー250」でおすすめしたいのは、ディーゼル車です。しかし、上記のような明確な目的があるならば、あえてガソリン車を選ぶのも大いにアリでしょう。もしかすると、ディーゼル車よりも奥深い“ランクル”の世界観を味わえるかもしれません。
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みんなのコメント
少なくともそんな価格で買うクルマではない。
定価で買えぬなら手を出さん事だ、不満だらけになるぞ。