GAZOO Racing 86/BRZ Raceの2019年シーズン最終戦が岡山国際サーキットで、10月19~20日に開催され、プロフェッショナルシリーズでは谷口信輝(KTMS 86)が3連勝を飾って、2年連続4度目のチャンピオンを獲得した。クラブマンシリーズではEXPERTクラスで鶴賀義幸(栃木トヨタBS ED/T2F86)が連勝を果たし、チャンピオンは橋本洋平(カーウォッチBS 86revo)に。そしてOPENクラスでは山崎竜生(HT Garageレーシング86)と樋口千樹(othr86)が優勝を分け合い、チャンピオンは安藤正明(C名古屋86Racing)が獲得している。
GR 86/BRZ Raceは最終戦も2ヒート制。最大33ポイントの加算が可能とあって、多くのドライバーに王座獲得の権利が残されているかと思われたが、もっとも候補者の多かったプロフェッショナルシリーズで4人、クラブマンシリーズはOPENクラスが3人、EXPERTクラスは一騎討ちとなった。
86/BRZもてぎ:谷口信輝が優勝しランキングトップ浮上。全クラス王座決定は最終戦へ持ち越し
予選は3クラスともウエットコンディションで、特にOPENクラスは途中で雨が降り出すという、もっとも厳しい条件に。そのOPENクラスでポールポジションを獲得したのは、スポット参戦の山崎。「雨がどんどん強くなっていったので、急いでタイムを出して、もういいかなと思ったら、いい感じのところにいました」と語る。
2番手は第4戦・オートポリスで優勝の窪口綾(ACCESS 86)で、チャンピオン候補の安藤は6番手、志賀俊方(c.s.i GR水戸インター86)は9番手で、今井清則(すごいねBR-ROM 86)は24番手に。
EXPERTクラスもまた、スポット参戦のドライバーがポールを獲得。「最後の周にクリアラップが取れたので、死ぬ気で頑張りました」と語る石塚弘晃(トヨタカローラ三重86)が、鶴賀を僅差で抑えることに。
このクラスのチャンピオン候補は水野大(GRガレージ新大阪86 DL)が17番手、橋本がなんと21番手と、揃って中団に沈む大波乱も起きた。ともにコースインを遅らせ、コンディションの向上を狙ったはずが、まさに裏目に出てしまった格好だ。
プロフェッショナルシリーズだけは、ランキングトップが順当な結果を出す。谷口が今季3度目のポールポジションを獲得。「ウエットだと(阪口)良平がずっと速くて、『やばいな』と思っていたんですが、なんとかポールをもぎ取ることができて、非常にこのポールはでかいと思うんですよ。1点獲ったっていうのもあるんですが、チャンピオン争いしている他の3人に対して、メンタル的なダメージを与えたと思うので」と谷口。
その予選で序盤のトップだったのは阪口(大阪トヨタ86Racing)だったが、内圧調整でピットに戻った間に6番手まで後退し、やはり候補の堤優威(ADVICSカバナBS 86)のひとつ下に。もうひとりの候補である、近藤翼(神奈川トヨタ☆DTEC 86R)に至っては13番手。
セミウエットのままスタートが切られたOPENクラスの決勝ヒート1は、山崎が最初から最後までトップを譲らず。「会心の走りができました」と山崎。予選5番手だった樋口と4番手の松本翔太(OTG MSC 86)によって2番手が激しく競われたが、樋口が辛くも逃げ切り、逆に松本はスタート手順違反(グリッドを大きくはみ出す)で、30秒の加算で12位に後退。
日曜日になって、ようやくフルドライとなったヒート2では、樋口が好スタートを切って山崎をかわしてトップに浮上。最後までコンマ差の激しい一騎討ちが繰り広げられるも、「隙はまったくなかったです」と山崎に言わしめた、樋口の逃げ切りが成功した。「クルマはすごく速くて、タイヤもブレーキも最後まで良かったです。以前にもこんなレースがあって、その経験が活きました。北海道から来て、いい思い出ができました!」と樋口。
一方、安藤、志賀ともにヒート1では予選そのままの順位でゴールしていたため、安藤やや有利の展開の中、ヒート2では安藤が一時3番手にまで上がる。ところが、ラスト3周でバックマーカーが現れたのが、黄旗2本振動の区間。「どうしようと思って、ブレーキ踏んだところで、後ろの人にずいぶん抜かれて……」と安藤。そのため、6位でのゴールとなるも、志賀を従えたことでチャンピオンを獲得。
「もうちょっと楽な展開で行きたかったんですが、けっこう自分のミスで苦しい展開になっちゃって、岡山も苦手だったので、どうなるかと思っていたんですが、まぁまぁ……。なんとかうまいこといきました。ただ、せめて表彰台に立ちたかったですねぇ」と語っていた安藤ながら、先の黄旗区間での追い越しで3人がペナルティの対象となって、最終的には3位という結果も残すこととなった。
EXPERTクラスのヒート1は、オープニングラップのヘアピンで石塚を仕留めた鶴賀が、そのまま後続を寄せつけずに圧勝。「思い切ってオーバーテイクできました」と鶴賀。石塚は6周目に大島和也(Team MDI/P京都WM 86)にかわされるも、3位は最後までキープした。
一方、チャンピオン争いは意外な形で決着がついた。水野がミッショントラブルで1周を走る切ることなくリタイアしたためだ。ピットに戻ったことで、それを知る由もない橋本が「開き直って」激走、7位まで追い上げることに成功した。
ヒート2も鶴賀のひとり舞台。スタートを決めて大島の逆転を許さず、さらに3周目から3周に渡ったセーフティカーラン後のリスタートも完璧に、そのまま逃げ切っていたからだ。「リスタートは我ながら完璧でした。クルマはすごく良くて、予定どおり勝つことができたんですが、今となってはシリーズ序盤のつまずきが悔やまれます」と鶴賀。
一方、橋本は大島、宗藤昌太郎に続く4位でゴール。初のチャンピオンを決めた。「セーフティカーが入って周回が減ったでしょう、間隔は詰まったけど、それで抜く機会が減っちゃって。あれがなければ表彰台に上がれたと思うんですが、今はまぁホッとしています。バトル慣れしてきたのはあるので、その意味ではすごく勉強になったシーズンでした。今までは浮き沈みが激しく、本当に何やってんだって感じでしたから。7年かけてようやく!」と橋本。
プロフェッショナルシリーズのヒート1は、中盤にモスSでアクシデントが発生し、セーフティカーランが行われ、その最中にホームストレートでも追突があって赤旗で中断。セーフティカースタートでの再開となり、最後は2周の超スプリントバトルという、歯切れの悪い展開となっていた。
そんななかでも谷口が横綱相撲。蒲生尚弥(tomicaネッツ兵庫86 BS)との激しい先陣争いを制してからは、後続の激しいバトルを尻目に、ひとり逃げ切りに成功したのだ。阪口が2番手にまで返り咲いたものの、この段階でポイント的には谷口の連覇達成……のはずだったが、規定でヒート2をリタイヤすると、ヒート1で獲得したポイントがフイになるため、まだ予断は許されぬ状況に。
しかも、谷口のミッションは4速の入りが悪く、「毎回“ガリガリ”いっているので、それが明日心配なんだよね。何かが噛んだりしてゴールできなかったらまずいので」と明かしていた。
ヒート2はしっかりスタートを決めた谷口ながら、今度は阪口がピタリと背後について離れず。そこで「良平がグイグイ来ていたから、ヘアピンとかWヘアピンといった、抜かれないポイントでペースを抑えて、(堤)優威に良平の後ろへ来てもらおうと思ったの」と作戦を講じるも、堤もまた市森友明(大阪トヨタ86Racing)とバトルを繰り広げていたため、谷口の期待に応えられず。
しかし、阪口も「中盤ぐらいから僕も谷口さんも、(タイヤの)内圧がちょうどいいところに合ってしまって。序盤は明らかにこっちの方が良かったので、最初の3周で行くべきでした」と後に後悔。逃げ切った谷口がチャンピオンを獲得した。
「最後は良平が勝負できない距離をキープして走ることができました、少しゆとりあり。ただ、ミッションはずっとガリガリいっていて、たまに入らなかったから、そういう意味では余裕はなかったです」と谷口。
「今はもちろんうれしいです。チャンピオンを獲るためにやっているし、特に今年はレースを1回休んでいるんで、途中まで苦しかったけど、十勝で巻き返してからはガンガンガンと! まぁ、感無量ですよ」
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