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100万円で買える世界一美しいクーペとは?

掲載 更新 7
100万円で買える世界一美しいクーペとは?

4月9日~11日、幕張メッセ(千葉県千葉市)で、旧車イベントである「オートモビルカウンシル2021」がおこなわれた。そこで気になったクルマを武田公実がピックアップする。今回は、プジョー「406」のお話。

ピニンファリーナによるデザイン

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オートモビルカウンシル2021では“ヘリテージカー販売コーナー”もある。各クラシックカー/ヤングタイマー専門店がブースを出展し、自慢の販売車両を並べ、販売するのだ。

開催初日、会場をそぞろ歩きしていた筆者が思わず目を見張ったのが、フレンチブルーのプジョー406クーペ。その美しさで讃えられるヤングタイマー時代の人気モデルが、なんと“100万円”という驚きの価格で販売されていた。

プジョーは1960年にデビューした「404」以来、自社の4輪乗用車のデザインワークを、イタリアの名門カロッツェリア「ピニンファリーナ」に完全委託しつつ、自動車デザイン史に残る傑作の数々を生み出してきた。

ところが残念なことに、プジョーとピニンファリーナの素晴らしき伝統は今世紀初頭をもって幕を閉じることになる。その最終期に登場したのが、1997年にリリースされた「406クーペ」だ。当時の「406」をベースに、ピニンファリーナが流麗なクーペボディのデザインおよび架装を担当した。

2ドア・4シーターのクーペボディは、リュック・ベッソン製作の映画『TAXi』シリーズでおなじみの406ベルリーヌ(セダン)や、ワゴン版「406ブレーク」とはまったく別もの。このクルマの発表から4年後、白血病のため30歳の若さで逝去してしまったピニンファリーナ所属のスタイリスト、故ダヴィデ・アルカンジェーリが手掛けたスタイリングは素晴らしいプロポーションを誇り、デビュー当時には“世界一美しいクーペ”とも称された。

日本市場には、デビュー翌年の1998年1月から正式に導入。日本仕様のスペックはPRV製3.0リッターV型6気筒・24バルブエンジン+4速AT版のみとされたが、フランス本国をはじめとするEUマーケットでは、2.0リッター(のちに2.2リッターに拡大)の直列4気筒DOHC16バルブエンジンや5速MTなども設定されていた。

2003年、当時のプジョーの新デザイン言語にしたがってバンパーを一新するフェイスリフトがおこなわれたのち、2005年にはプジョー社内デザインとなる「407クーペ」にあとを譲るかたちで、惜しまれつつ生産を終えることになった。

そしてこの406クーペおよび、スライドドアを持つユニークなコンパクトカー「1007」を最後に、現在に至るまでピニンファリーナのデザインによるプジョーは創られていない。

その一点のみを見ても、きわめて重要なモデルなのである。

信頼性も上々

今回、406クーペを販売していたスペシャルショップは、オートモビルカウンシルで常連の東京都江戸川区にある「原工房」。プジョーやシトロエンルノーを得意とするガレージで、メインはあくまでも修理とメンテナンスとのこと。

フランス車が日本に根づく以前の黎明期から、プジョー・シトロエン・ルノーの販売・整備・修理に携わって約40年。スタッフもメカニックもこの道20年以上のつわものが揃うとの由で、とくに前世紀末のプジョーについては、国内随一のスペシャリストという評価を得ているそうだ。

訊くと、406クーペには前・中・後期の3世代があるそうだが、この日の出品車は中期型にあたる2001年モデル。左ハンドル仕様の正規ディーラー車だ。

ただ、このモデルに詳しい方ならお気づきかもしれないが、バンパーはラジエターグリルが大型化&逆台形デザインとなった後期型のもの。いずれかの段階で、また何らかの理由で交換されたという。

1980年代からプジョーの正規代理店メカニックとして働き、現在に至るまでプジョーと密接に携わってきた原工房代表・原誠二氏いわく、406クーペの魅力は美しいスタイルだけにとどまらないそうだ。たとえばカーブでスッとノーズの入るシャープなハンドリングや、3.0リッターV型6気筒エンジンの余裕のある走りなど、いくつもあるという。

またバンク角60度の新PRV-V6エンジンは、90度バンクの旧PRV時代よりもはるかに頑丈とのこと。このあとプジョー/シトロエンで数多くのモデルに搭載されたのもあってパーツが入手しやすいほか、4速オートマティック・トランスミッションも、それ以前のものと比べると、格段に信頼性が高いそうだ。

買うなら今がチャンス!?

今回の展示車両は、エクステリア/インテリアともに極上のコンディションで“100万円”というプライスボードで、にわかには信じられなかった。

こんなに美しくて魅力的なのにリーズナブルな理由について原誠二代表に訊くと、単に市場における人気をそのまま反映しているとのこと。おなじプジョー406でも、セダンやブレークはさらに安価という。

ただし安価ゆえに406セダン/ブレークは市場で淘汰されてしまう、あるいは辛うじて市場価格をキープしているクーペの部品取りに使用されてしまうケースもあるそうだ。さらに、一部の熱心なファンが大切に保有し続けていることも合わせて、国内マーケットでは慢性的な品薄状態となっているとのこと。

だから、この美しいクーペに魅せられてしまったファンならば、リーズナブルな価格で購入できるうちに、手に入れておくことを真剣に考えるべきだろう。

ただし、V型6気筒エンジンのイグニッションコイルや、エアコンのコントロールユニットに不具合が生じやすいなどの“持病”もあるそうだ。

ゆえに、もしも入手するならば、原工房のようなスペシャリストを訪ねることをお勧めしておきたい。

文と写真・武田公実

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みんなのコメント

7件
  • 楚々としたスタイリングが好印象のクルマですね。
    フェラーリに代表されるスポーツカーのデザインで名を馳せるピニンファリーナに
    高級パーソナルカーのスタイリングを任せると、こういうクルマが出来上がって
    くるんですね。(特に有名なのはロールスロイス・カマルグなど)
    サイドシル後部に掲げられた「f」の王冠マークは伊達じゃありません。
    こういうクルマは、やっぱり品のいいお方に乗ってもらいたいですね…。
  • 田舎の車好きなおじじが乗ってましたが、よくイグニッションのコイルがおかしいと言ってはしょっちゅう直してました。普段は小さく丸まって歩くのに、納屋で車をいじる時は少しだけいつもより背筋がピンとしてる姿が思い出に残ってます。おじじ最後の車もどこかでまだ走ってるといいな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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