■グッドルッキングなホンダ車を振り返る
クルマのデザインは千差万別ですが、優れたデザインのクルマはそれだけでもヒット要因になります。
現在、日本市場でもっとも売れているクルマといえばホンダ「N-BOX」ですが、性能や室内の広さに加え、外観のデザインも定評があります。
そこで、過去に販売したホンダ車のなかから、N-BOX以上に秀逸なデザインと評されたモデルを5車種ピックアップして紹介します。
●初代トゥデイ
1974年に生産を終えたホンダの軽自動車「ライフ」以来、11年の歳月を経た1985年にデビューした初代「トゥデイ」は、軽商用車という限られたサイズで、居住性や走りなどクルマに求められる性能、機能を最大限に発揮することを目指していました。
外観の特徴は、最小限のスペースに格納された550cc直列2気筒水平横置エンジンに、下方配置デフの採用で実現した大胆なショートノーズです。
このボンネットのラインがそのままフロントウインドウを経て、1315mmという低い全高に位置するロングルーフにつながるフォルムは、サイズ以上に伸びやかな印象をつくりだしています。
また、新開発のサスペンションによってタイヤをボディの4隅に配置することができ、内装はシンプルなデザインながら大きな居住空間を確保。
初代トゥデイは、それまでにないデザインの軽自動車を実現したことが高く評価され、1986年度にグッドデザイン賞を受賞しました。
●初代シティ
初代ホンダ「シティ」は1981年に発売され、それまで「クルマは車高が低いほどカッコイイ」という世間一般の認識に真っ向から挑んだクルマです。
コンパクトなボディはそのままに、いかに室内を広くするかという課題に対する解答が屋根を高くすることでした。
ルーフを高くすると空気抵抗や操縦安定性などさまざまな影響がありますが、ホンダはそれらを解消し、全体のフォルムは台形を意識してデザインして視覚的な安定感も表現しています。
さらに広い室内による積載性の良さを強調するために、「モトコンポ」という原付バイクを車体後部に載せるというアイデアを実現。
エンジンは最高出力67馬力の1.2リッター直列4気筒SOHCで、決してパワフルではありませんが、軽量な車体によって十分な加速性能と、低燃費を達成しています。
後にターボエンジンを搭載した「シティターボ「シティターボII」、オープンモデルの「シティカブリオレ」、ハイルーフ仕様とバリエーションを増やすなど、話題が尽きなかったクルマです。
●3代目シビック
1983年に発売された3代目「シビック」は、スポーティな走りと低燃費といった基本性能の高さに加え、新しい時代のFF2ボックスカーとして、居住性や安定した走りなど、クルマに求められる性能、機能を最大限に発揮することを目指しました。
外観は初代のデザインイメージから脱却し、空力を意識したスポーティなロングルーフのフォルムとなっています。
室内は、100mmのスライド量を持つリクライニングシートや、内装の自然な一体感を与えるインパネまわりなど、隅々までスペースの有効活用を追求した設計がされたことにより、使い勝手が良く広い空間を実現。
メカニズム部分を最小に、居住スペースを最大にというホンダの「M・M思想」(マンマキシマム・メカミニマム)が初めて提唱されたのが、この3代目シビックです。
なお、こうしたコンセプトが評価され、自動車として初めてグッドデザイン大賞に輝いています。
■美しいフォルムをまとった2台のクーペとは!?
●3代目プレリュード
1987年に発売された2ドアクーペの3代目「プレリュード」は、外観は2代目からのキープコンセプトとしながら、より洗練され、デートカーとして若者から高い支持を得ます。
外観は、エンジンを後傾して搭載することで実現した低いボンネットが特徴で、2代目と比べてボンネット中央部が30mm低く設定。そのボンネットのラインが、そのままドアのライン、トランクまで続き、美しいウエストラインを描いています。
エンジンは全グレードとも2リッター直列4気筒で、トップグレードの「2.0Si」には145馬力を発揮するDOHCエンジンが搭載されました。
また、3代目プレリュード最大のトピックスは、量産車世界初の4輪操舵が設定されたことです。
この4輪操舵は前輪の切れ角に応じて後輪の向きが変わり、前輪の切れ角が小さいと同位相、切れ角が大きくなると逆位相になる仕組みで、高速走行時のレーンチェンジや、市街地の取り回しで威力を発揮しました。
●2代目レジェンドクーペ
ホンダがアメリカで展開する高級車ブランド、アキュラのために開発されたフラッグシップセダン「レジェンド」は、1985年に国内で発売されました。
2年後の1987年には、2.7リッターV型6気筒エンジンを搭載する3ナンバー専用ボディの2ドアクーペを追加ラインナップ。
そしてセダンは1990年に2代目にモデルチェンジされ、1991年にはクーペも2代目が登場しました。
2代目レジェンドクーペのボディサイズは、全長4880mm×全幅1810mm×全高1370mmと、ワイド&ローが際立つスタイリングで、大きなボディを活かした伸びやかで美しいフォルムを実現。
内装もホールド性を際立たせたシートや本木目パネルの採用により、スポーティでありながら高級感あふれる空間を演出しています。
エンジンは最高出力215馬力を発揮する3.2リッターV型6気筒を搭載し、入念にチューニングされた新開発の4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションの採用と相まって、上質な走りと高い運動性能を獲得。
また、フラッグシップにふさわしく安全装備も充実しており、「A.L.B.(アンチロックブレーキシステム)」、「TCS(トラクションコントロールシステム)」、運転席助手席SRSエアバッグシステムなどが標準装備されていました。
※ ※ ※
デザインに正解は無いといいますが、長い歳月が経っても陳腐化せずに色褪せない魅力を保っているのが、良いデザインだと評されます。
今回、紹介した5車種も、まさに色褪せない魅力があるクルマたちです。
近年のクルマは流行を追っている感じが否めませんが、10年後、20年後には、我々の目にどう映るのでしょうか。
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クーペとは背丈が低くて、2ドアであるべき。最近の4ドアやSUVなど論外。