もくじ
どんなクルマ?
ー スタイリング以外の基本構成はX3と同一
どんな感じ?
ー 車内の広さはメルセデス-AMG GLCクーペと同等
ー レーザーメスのように鋭い直6ターボ
ー 余裕すら感じられる巧みなボディコントロール
「買い」か?
ー 本物のMらしさが宿る
スペック
ー BMW X4 Mコンペティションのスペック
BMW、X3のプラグインハイブリッド仕様を発表 燃費41.7km/ℓ ジュネーブ2019
どんなクルマ?
スタイリング以外の基本構成はX3と同一
BMWのMディビジョンによる、ハイパフォーマンスSUVに新しいモデルが追加された。それがX4 Mコンペティション。BMWとしてはSUVではなく、スポーツ・アクティビティ・クーペ(SAC)と表現している。
定員5名という点に変わりはないが、明確に傾斜したルーフラインと引き換えに車内空間は多少犠牲になっている。エクステリアデザインもスタイリッシュになっているが、その分、ラゲッジスペースもX3 Mコンペティションと比較すると小さくなった。
X4 Mコンペティションに搭載されるエンジンは、X3 Mコンペティションと同じ、新開発の3.0ℓ直列6気筒ターボエンジン。ドライブトレインやサスペンションも基本的には同一のものと考えていいだろう。だが、リアトレッドが僅かに広げられている。ほかにもX3 Mよりリアオーバーハングが長くなり、その高さもやや低くなっているが、BMWによれば車重や走行パフォーマンスは基本的に同一だという。
英国の場合、X3 Mとの素材の違いなどを理由に3000ポンド(40万円)ほど高い価格が設定されている。ボディの特別色やオプションなどを選べば、もちろんその分の差が出るけれど。ちなみに、X3 Mでは選択できた、ラゲッジスペースの保護ネットやリアシート背もたれのリクライニング機能、リアウインドウのサンシェードなどはX4 Mでは選択できない。
予習はこのくらいにして、走り出してみよう。
どんな感じ?
車内の広さはメルセデス-AMG GLCクーペと同等
国際的なX4 Mコンペティションの発表会では、X3 Mコンペティションと交互に比較試乗する機会があったのだが、正直いうと、両者を運転した感覚の違いは感じられなかった。
力強く極めてフレキシブルなストレート6や、任意に設定が可能な4輪駆動システムは、X3 Mと変わりなく搭載されている。また非常に反応がよく正確で、スロットル操作でも姿勢変化が可能な優れたハンドリングもそのまま。いずれも明確なストロングポイントだといえる。
一方で、路面の状態が悪いとロードノイズがうるさくなり、落ち着きがなくなることも同様。多彩なダイナミクス性能という点でも、ライバルとなるハイパフォーマンスSUVと比較するとやや劣っている。クルマとしての性格も少し単調な気もするが、乗り手によって感じ方は異なるだろう。
車内空間はX3 Mより狭くなっているものの、ラグジュアリーで実用性も高い。後部座席は、180cmを超える身長でなければ、大人でも快適に座ることができる。サイドサポートのしっかりしたスポーツシートは、見かけ以上に乗り降りしやすいうえに座り心地は柔らく、長距離運転でも快適。乗員空間で見ると、ポルシェ・マカンよりも優れた空間が確保されており、メルセデス-AMG GLCクーペと同等といえるだろう。
X3 Mと同様にX4 Mにも最新のマルチメディアシステム「iドライブ」とデジタル・インスツルメントを搭載。計器類の表示などは、新しい3シリーズよりも見やすくなっている。内装の素材オプションには、オレンジとグレー・レザーのツートン・カラーも選択ができ、今どきのスマートなMモデルっぽい雰囲気を更に高めることもできる。
レーザーメスのように鋭い直6ターボ
新開発となる直列6気筒エンジンの特性は、ライバルモデルが搭載する全回転域に及ぶハンマーのような力強さ、というよりも、レーザーメスのような鋭さ。だからといって、一般道でもサーキットでも、間違いなく速さは見劣りしないだろう。またメルセデス-AMGのV8エンジンやアルファ・ロメオのV6エンジンほどの音響面でのカリスマ性はないが、それにも負けない素晴らしい性格を備えている。
アクセルペダル操作とのレスポンスは秀逸で、質感もスムーズ。パワーデリバリーもフレキシブルながらリニアで、同等のターボエンジンの中でも群を抜いている。トランスミッションの段数に関係なく、負荷状況も問わず、中回転域でも高回転域でも、もたつくことなく常に優れた扱いやすさを備えている。
エンジンに組み合わされる、トルクコンバーター式の8速ATも素晴らしい。以前採用されていた7速デュアルクラッチATよりも、あらゆる面で改善したといえるだろう。
乗り心地やハンドリングは、ステアリングにレイアウトされたボタンである程度は設定の変更ができる。だが、ハイパフォーマンスSUVのライバルと比較すると、アダプティブダンパーやエンジンの出力特性などの調整幅や変化の効果は限定的だ。
余裕すら感じられる巧みなボディコントロール
わたしの好みでは、サスペンションとステアリングは穏やかに、パワートレインはスポーティに設定した状態で、ほとんどの時間を過ごすだろう。例えダンパーをコンフォートモードにしていてもストロークが短く、細かい振動が続くから、もう少し落ち着きが欲しくなるため。また、可変レシオのバリアブル・スポーツステアリングは標準のままでは重すぎ、穏やかに滑らかに走らせたいときなどは、反応が積極的過ぎることも理由だ。
もちろんX4 Mは、郊外の開けた道を素早く駆け抜けるのに相応しい、ボディのコンパクトさや機敏性を備えているとはいい難い。しかし道幅が広く滑らかな区間なら、フラットに引き締まったボディコントロール性に、緩やかな挙動が組み合わさり、思わずスピードも上がりがち。加えてグリップ力にも優れ、安心感も高い。
サーキットでグリップの限界領域までスピードを上げてX4 Mを走らせるようなドライバーは殆いないはず。だが実際に試してみると、巧みなボディコントロールには余裕すら感じられる。クルマの安定性が崩れてくるのは、極めて極端に横荷重がかかった時くらい。ダンパーの設定を硬い状態にしていても、クルマの姿勢を調整しようとすると、外側のリアタイヤが軽く弾むような挙動が感取されてしまった。
だが、グリップ限界以下で快適に走らせている限りは、現代のBMW Mモデルへ抱く期待を裏切らない。狙い通りの正確さに不足のないグリップ力、感覚の掴みやすいフィードバックは健在。加速も減速も強力で、ドライバーの意のままに走らせることができる。
「買い」か?
本物のMらしさが宿る
X4 MはX3 Mと同様に、高次元の徹底的とも呼べるパフォーマンスを備えた、SUV界でのドライバーズカーだといえる。加えてラグジュアリーでありながら、日常使用も前提のファミリカーに叶う内容も持ち合わせている。ジャガーFペースSVRやポルシェ・マカンなどのライバルたちは、Mディビジョンが生み出したモデルが有する、領域の幅の広さには到達できていないとさえいえる。
一方で、X4 Mのクーペスタイルのエクステリアデザインのために多少犠牲になった実用性をどう受け止めるかは、乗り手によるだろう。滑らかなルーフラインが生み出すスタイリングや個性が、目減りした実用性との天秤に釣り合うかどうかは、わたしには疑問ではある。
だがX3 Mとは異なる個性を欲し、このアピアランスが気に入ったのなら、X4 Mのステアリングホイールを握って得られるスポーティなドライビングには、きっと満足できるだろう。驚くことに、4輪駆動システムだけでなく、比較的背の高いボディプロポーションをまとっていても、本物のMらしさはきちんと宿っている。X4 Mコンペティションの実力は相当なものだ。
BMW X4 Mコンペティションのスペック
■価格 8万110 ポンド(1089万円)
■全長×全幅×全高 4752✕1918✕1621mm
■最高速度 249km/h(リミッター)
0-100km/h加速 4.1秒
■燃費 8.7-8.8km/ℓ(WLTP)
■CO2排出量 ー
■乾燥重量 1970kg
■パワートレイン 直列6気筒2993ccツインターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 510ps/5950-7200rpm
■最大トルク 61.0kg-m/2600-5950rpm
■ギアボックス 8速オートマティック
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