現象が起きてから対処するパッシブに対して、事象が生じる前に用意、ないしは生じた瞬間的な直後に手立てを打つアクティブサスペンション。シャシーエンジニアにとっては夢の技術のひとつか。しかし実現搭載したクルマは数えるほどしかなく……その理由を探ってみる。 TEXT:安藤 眞(Ando Makoto)
僕がシャシーエンジニアになったばかりの1980年代後半、「油圧アクティブサスペンション」という技術の開発が、盛んに行われていた。通常のサスペンションは、スプリングと油圧ダンパーを使って受動的(パッシブ)に衝撃を吸収するが、アクティブサスは、路面入力に合わせて油圧を抜いたりかけたりすることで乗り心地を良くしたり、旋回時に外輪側の油圧を高めてロール角をゼロにしたりすることを狙ったものだ。
パンクしても走れるランフラットタイヤを考察する──安藤眞の『テクノロジーのすべて』第16弾
僕が在籍していた会社でも、提携関係にあった某社と共同研究が行われており、僕はその前段階として、ハイドロニューマチック(油空圧)サスペンションの量産開発を担当させられていた。そのプロジェクトは生産試作の直前で中止となってしまったのだが、アクティブサスそのものは、他社では日産がインフィニティQ45というセダンに、トヨタがセリカというスポーツカーに搭載して市販化された実績がある。
しかし、両社ともその技術を採用したのは一代限り。その後もメーカーやサプライヤーからアイデアは出されるものの、市販化されたのは、13年にメルセデス・ベンツがSクラスに採用した「マジックボディコントロール(MBC)」が唯一。それまでのアクティブサスは、ストロークセンサーやGセンサーがバネ下の動きを検知してから作動するもの(厳密に言えばパッシブ)だったのに対し、MBCはステレオカメラで15m先の路面を捉え、その情報も使って制御を行うという点で、より「アクティブ」に近づいたシステムである。
20世紀末に較べて、メカトロニクス技術や制御技術も大幅に進歩しているはずなのに、なぜベンツの最高峰モデル以外に、アクティブサスは採用されていないのか。理由のひとつにコストがあることは自明だが(僕が担当していたシステムも、一声「100万円」だった)、もうひとつの理由は、エネルギー消費が大きいことだ。
サスペンションの制御油圧は、走行中は常に作り続けなくてはならない。それにはエンジンか電気モーターで油圧ポンプを回す必要がある。その消費エネルギーは車重に依存するとはいえ、数kWは必要となる。一方で、クルマが平坦路を巡行する際に必要な出力は、40km/h巡航で5kW前後。100km/hでも、20kW前後だ(空気抵抗への依存度が高い)。そこに数kWが上乗せされたのでは、燃費が大きく悪化してしまう。Sクラスのように排気量が4.7ℓもあればともかく、小型大衆車には向いていないのである。
特に現在のように、CO2排出規制が厳しくなった状況では、今後アクティブサス搭載車が出てくるとしても、Sクラスやマイバッハのような特別なクルマに限られるのではないかと思う。
実はこのことについては、前記の装置を担当していたエンジニア時代に気付いており、「こんなものが大衆の役に立つ日が来るもんかよ」と思いながら仕事をしていたのだが、自転車通勤中の事故で背骨を折って救急搬送された際、救急車のあまりの乗り心地の悪さに「アクティブサスを付けてくれ~!」と思ったのは、ここだけの話にしておきたい。
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