最近は日本に限らず海外でもスポーツカーの売れ行きが下降気味で、ユーザーは中高年齢層のクルマ好きが中心になってきた。
そこでフォードマスタングやシボレーカマロは、初代や2代目モデルを連想させるデザインに回帰している。この2車種は今も昔もV型8気筒エンジンを搭載する後輪駆動車だから、基本的なレイアウトは変わらずデザインも回帰させやすい。
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逆に往年のモデルがリヤエンジン・リヤドライブだったフォルクスワーゲン・ザ・ビートル、フィアット500などには無理が生じる。ホンダN-ONEはN360がモチーフだが、エンジンは先代N-BOXの搭載を考えて開発され、空間効率を高めるために前後長を詰めて背が高い。そこでN360に比べると縦長のボディ形状にならざるを得なかった。
このようにデザインの回帰には難しい面もあるが、上手にデザインすればマスタングやカマロのように魅力的なクルマになり得る。
日本車ではどうだろう。スバル360のようなリヤエンジンのクルマは難しいが、後輪駆動であれば実現しやすいのではないか。ここでは具体的に考えてみたい。
文:渡辺陽一郎
■マツダ初代ロードスター 1989年発売
最も現実的なのは1989年に発売されたマツダユーノスロードスターを現代に蘇らせることだ。
初代モデルのエンジンは直列4気筒1.6Lだから、現行型の1.5Lとほぼ同サイズになる。全長は初代ロードスターが3970mm(現行型は3915mm)、全幅は1675mm(1735mm)、ホイールベースは2265mm(2310mm)で、駆動方式も後輪駆動だから変わりはない。
従って現行ロードスターのプラットフォームを使って前後のオーバーハングを伸ばし(ホイールベースを縮めるのは技術的に難しい)、ボディに丸みを加えてリトラクタブルヘッドランプを装着すれば、初代ロードスターをリアルに再現できるだろう。現行型のプラットフォームを使うと、全幅を5ナンバーサイズに収めるのは困難と思われるが、外観の雰囲気はかなり近づく。
■トヨタスポーツ800 1965年発売
ロードスターと同様のコンパクトなスポーツカーとしては、1965年に発売されたトヨタスポーツ800も挙げられる。空冷水平対向2気筒OHVの790ccエンジンを搭載する後輪駆動の2シータースポーツカーだ。
全長は3580mm、全幅は1465mm、ホイールベースは2000mmと短い。全幅は軽自動車のサイズに収まるほどコンパクトだ。まさに日本の道路環境や峠道に最適なスポーツカーだろう。
そこでダイハツ製軽自動車のエンジンを縦方向に搭載して、トヨタスポーツ800を蘇らせる。トヨタスポーツ800の最高出力は45馬力(5400回転)、最大トルクは6.8kg-m(3800回転/いずれもグロス値)だから、今日の660ccエンジンを790ccに拡大すれば、同等以上の動力性能になる。また660ccのターボであれば、十分な加速力を得ることも可能だ。
プラットフォームは新規開発が理想だが、それが無理ならハイゼットトラックのフレームを使う手もある。ハイゼットトラックのホイールベースは1900mmだから、100mm拡大すればトヨタスポーツ800と同じ数値だ。フレーム構造では車両重量が増えてしまうが、トヨタスポーツ800の脱着可能なハードトップを可能にする上では都合が良い。
■日産初代フェアレディZ 1969年発売
もうひとつスポーツカーで蘇らせて欲しいのが、1969年に発売された初代日産フェアレディZだ。ボンネットが長く、後部を短く抑えた外観は、歴代国産スポーツカーでは最高のカッコ良さだろう。現行フェアレディZもその面影を感じさせるが、初代フェアレディZはフロントマスクを含めて現行型以上にシャープな造形だった。
現行フェアレディZの全幅は1845mmとワイドだが、同じプラットフォームを使う11代目のV35型スカイラインは1750mmだったから、全長が4115mm、全幅が1630mmという、初代フェアレディZの細身な外観を演出することも不可能ではないと思われる。
■三菱初代パジェロ 1982年発売
スポーツカーが続いたので、流行のSUVも取り上げたい。今に通じるSUVの元祖ともいうべき1982年に発売された初代三菱パジェロだ。3ドアボディはシンプルでカッコ良かったので、これを現代に蘇らせる。
問題はプラットフォームだ。アウトランダーやRVRは前輪駆動がベースだから外観のプロポーション(特に前輪とフロント ピラーの間隔)が違ってしまう。現行/先代パジェロはビルトインフレーム構造の後輪駆動車だが、全幅が1800mmを大幅に超えている。
そこでフレーム構造のトライトンやパジェロスポーツをベースにすると、全幅を1800mm以下に抑えることが可能になり、ボディの架装も容易だ。エンジンは直列4気筒2.4Lのガソリン、デリカD:5と同様の2.2Lクリーンディーゼルターボなどが考えられる。
☆ ☆ ☆
以上のような古いクルマをリバイバルさせることは、懐古趣味では片付けられない。走行性能、環境性能、安全装備などのメカニズムは常に進化を続け、新しいクルマほど基本的には優れているが、デザインは空気抵抗などを除くと進化というより「変化」になるからだ。善し悪しよりも、見る人の好みによって評価が左右される。
特に最近は、日本車、輸入車を問わず、サイドウインドーの下端を後ろに向けて持ち上げるウェッジシェイプが増えた。この造形は外観に躍動感を与えて速そうに見えるが、落ち着いた雰囲気は乏しい。フロントマスクも、今のクルマは「怒り顔」ばかりだ。
クルマの造形が画一化されると、往年のクルマが無性に懐かしくなってリバイバルを求めたくなる。私の老化現象かも知れないが……。
読者諸兄はどのように思われるでしょうか。
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