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記憶に残る「足のいいやつ」トヨタ カリーナの足跡【偉大な生産終了車】

掲載 更新 36
記憶に残る「足のいいやつ」トヨタ カリーナの足跡【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

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 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はトヨタ カリーナ(1970-2001)をご紹介します。

文/伊達軍曹 写真/TOYOTA

【画像ギャラリー】7代・30年。トヨタ カリーナの歴史を写真でたどる

■千葉真一、「足のいいやつ」のコピーとともに現れたカリーナ

 1970年に、プラットフォームとパワートレインを当時のトヨタ セリカと共用する「カローラより1クラス上のスポーティセダン」として誕生。

 アクションスターの故・千葉真一さんを大々的に起用したテレビCMは「足のいいやつ」というキャッチフレーズとともに話題となり、またその車自身の出来の良さもあって大ヒットを記録。

 その後、代を重ねながら2000年代まで生産され続けたが、折からの「セダン離れ」により2001年には終売に。

 後継となった「アリオン」に後を託したが、そのアリオンも2021年に生産終了となったことで、いよいよその命脈が完全に途絶えた“足のいいやつ”。

 それが、トヨタ カリーナです。

 トヨタ クラウンの下のクラスを受け持つファミリーカーとして1957年に登場したのがトヨタ コロナ。

 そのコロナとほぼ同サイズの「しかしコロナよりずいぶんスポーティなセダン」として1970年に発売されたのが初代トヨタ カリーナでした。

セリカとパーツを共用し、2ドアセダンと4ドアセダンを設定した初代カリーナ(1970-1977)

こちらは1957年に初代が登場したトヨタ コロナ。写真は初代カリーナと同時期のもの

 当時のトヨタ セリカとプラットフォームを共用し、途中からはセリカGTと同じ2T-G型1.6L DOHCエンジンも搭載。

 車としての出来の良さに加えて、「足のいいやつ」という非常に印象的なコピーも効果的だったのでしょう。初代カリーナはスマッシュヒットを記録しました。

 その後3代目まではセリカと歩調を合わせてモデルチェンジを行いましたが、4代目ではFFシャシーに変更。そして5代目以降はコロナと共通のプラットフォームを使うことになりました。

 それでもカリーナは「足のいいやつ」としてのイメージを保ち続け(※そのコピーが使われたのは4代目まででしたが)、派生モデルである「カリーナED」の初代および2代目も、当時の比較的若いユーザーからの支持を集めました。

1985年に登場したカリーナED。一大ブームとなった4ドアハードトップのジャンルを牽引した

 しかし1990年代に入ると、カリーナはコロナとともに輝きを失いはじめ、1992年から1996年まで販売された6代目カリーナは前作の半分ほどしか売れませんでした。

 1996年発売の7代目カリーナは、スポーティな4A-GE型1.6L DOHCエンジン+5MTの「GT」もラインナップするなどして奮闘しましたが、失地回復には至らず。

 そのためトヨタは2001年11月に7代目カリーナの生産を終了し、同年12月には販売も終了。

最終7代目のカリーナ(1996-2001)。その歴史は30年にも及ぶ

 後継モデルはカリーナの名を名乗らず「トヨタ アリオン」となりましたが、そのアリオンも特に売れないまま一度フルモデルチェンジを行い、結局は2021年3月、生産終了と相成りました。

■カリーナ後継のアリオンも消滅…生き残ったセダンが今消えゆく理由

 一世を風靡した――とまでは言えないのかもしれませんが、少なくとも「足のいいやつ」「きまってるね、千葉ちゃん!」などのフレーズとともに、昭和の人々の心には深く突き刺さった存在であるトヨタ カリーナが、廃番となった理由。

 それはもういわゆる「世の中セダン離れ」に尽きるわけで、そこについては特に付け加えることはありません。

 問題は、というかここで議題としたいのは、「ではなぜセダンは売れなくなったのか?」ということです。

 これについても議論し尽くされた感はあります。

 主だった見解は「1990年以降(つまり平成に入って以降)、ユーザーは車の走り云々よりも実用性や空間効率を重視するようになったため、箱型の車以外はあまり売れない時代になったから」という感じでしょうか。

 これについても特に異存はなく、「まぁそうなんでしょうね」以外の感想はありません。

 そのうえで筆者が付け加えたいのは、「セダンとは“ヘアリキッド”のようなものではないか?」という仮説です。

 お若い方はご存じないかもしれませんが、昔は「ヘアリキッド」という液状の整髪油がありました。

「ありました」というか今でもあって、男性用化粧品売り場の片隅で地味に、しかし確実に、陳列され続けています。

 1970年頃に生まれた筆者はさすがに「バイタリス」や「資生堂ブラバス」などのヘアリキッドで髪をビタッと7:3分けにする習慣は昔も今もありません。

 しかし筆者の父親世代、つまり現在70代から80代ぐらいの男性の多くは、若い頃から習慣としてバイタリスなどのヘアリキッドを使っていました。

 そして2021年の今も、彼らの家の化粧台には懐かしの「資生堂ブラバス」や「バイタリス」がフルセットで置かれてます。

 現在、男性用化粧品売場の片隅に陳列されているヘアリキッドは、主には70代から80代の男性によって購入されているのでしょう。彼らは、今流行りの「新感覚ヘアワックス」みたいなモノは基本的に使いません。

 ……何が言いたいかというと、「若い頃に獲得した習慣は嗜好は、年を重ねても継続される」ということです。

 今や完全に人気薄な整髪料となったヘアリキッドも、若い頃にそれを使うことを覚えた彼らにとっては「バリバリの現役」なのです。ヘアムースが登場しようが、ワックスが流行ろうが、関係ないのです。

 セダンとは、おそらくこれと同じです。

 日本の乗用車保有台数が急激に増えた昭和40年代から50年代頃に20代から40代ぐらいだった人、つまり今現在60代から80代ぐらいの人にとっては、「整髪料といえばヘアリキッド」というのと同じ感覚で「車といえばセダン」でした。

 それゆえ、世の中にRVブームが来ようがミニバンブームが到来しようが、あるいは現在のようなSUV旋風が巻き起ころうが、彼らによって「セダン」は買われ続けました。

 男性用化粧品店の片隅で、ヘアリキッドやヘアトニックが少数ながら確実に売れ続けるように。

 しかし車というのはヘアリキッドと違って安くても100万円以上はしますから、そう簡単に買い替えたり、買い足したりされることはありません。

 そして年齢を重ねることで必然的に購買力が落ちてくれば、「そもそも買えない」という事態も発生しやすくなります。

 そうであるからこそ、カリーナ(アリオン)に限らず、細々と命をつないでいた「5ナンバーサイズのセダン」はこのところ、相次いで生産終了となったのです。

2021年3月末でプレミオ(コロナの後継)、プリウスαとともに生産終了したカリーナの後継車種トヨタ アリオン

 もちろん、だからといってセダンというものの命脈が完全に途絶えることもないでしょう。お元気な年配の方も多いですし、セダンというフォーマルなスタイルを好む若年層も、少数ですが確実に存在しているからです。

 そういえばヘアリキッドも、おそらくは絶滅することはないでしょう。

 最近のお若い人でも髪型をスカッと横分けにしたり、おしゃれでトラディショナルなオールバックを好む人は一部にいて、そういった若秀には、今もヘアリキッドは愛用されているのです。バイタリスや資生堂ブラバスではないかもしれませんが。

■トヨタ カリーナ(初代)主要諸元
・全長×全幅×全高:4135mm×1570mm×1385mm
・ホイールベース:2425mm
・車重:945kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1588cc
・最高出力:115ps/6400rpm
・最大トルク:14.5kgm/5200rpm
・燃費:―
・価格:81万8000円(1971年式 1600GT)

【画像ギャラリー】7代・30年。トヨタ カリーナの歴史を写真でたどる

文:ベストカーWeb ベストカーWeb編集部
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THE EV TIMES

みんなのコメント

36件
  • 誤解を恐れずに書くと「独身者のセリカ」」「若夫婦のカリーナ」「子持ち家族のコロナ」って感じ?
  • 周囲にいたカリーナオーナーはみな、保守的だけどちょっと上を選ぶような人でした。
    拘りはあるけれど、トヨタ車は外せない、、、そんな感じです。
    私にとってのカリーナは、丸目でリヤ縦ランプの初代、他車と間違えようのない意匠でした。
    後の世代やカリーナEDを含め、今ではまず街で見ることがありませんね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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