2022年7月15日、16代目となるトヨタ 新型クラウンがついに発表された。クロスオーバー、セダン、スポーツ(SUV)、ワゴン一気に4モデルが登場。今後1年半をかけて徐々に販売していくとのことだが、クロスオーバーは早くも明日9月1日より発売となる。
今回は幕張メッセで行われた発表会の様子をお伝えすると共に、発売開始間近に迫った「クラウンクロスオーバー」について、さらに残る3モデルの今後の展開について探ってみた。
「クラウンクロスオーバー」いよいよ明日発売!! まさかの4モデル展開「新時代」への船出を今一度振り返る
※本稿は2022年7月のものです
文/ベストカー編集部、写真/TOYOTA、ベストカー編集部、撮影/奥隅圭之
初出:『ベストカー』2022年8月26日号
■「4車すべてクラウンです!」の衝撃
次期型クラウンはSUVになる! そんな衝撃的な第一報が飛び込んできたのは今から2年以上も前の、2020年1月のことだった。それから2年半、その情報の真偽を巡ってさまざまな憶測や情報が飛びかった。
そしてついにこの日がやってきた。2022年7月15日13時30分。幕張メッセの特設会場で16代目となる「新型クラウン」はその姿を現わすべく、その時を待っている。
67年にわたる歴代クラウンの足跡を豊田章男社長が自らの口で伝える。そこからは「クラウン」という車名がトヨタ自動車にとっていかに大切で、重く、深いものであるかがヒシヒシと伝わってくる。
1987年にデビューした8代目が販売の絶頂期で、月販1万台をゆうに超えていた。しかし、ミニバンが新たなファミリーカーとして定着すると、ラグジュアリーカーにもミニバンが進出し、さらに2010年代以降になるとSUVが台頭する。
クラウンは常に革新的なモデルチェンジを繰り返し、新しい世界を切り拓いていくけれど、販売面ではかつての栄華を取り戻すことができずにいたことは、今さら改めて言うまでもないだろう。
「新型クラウンです!」。満を持して豊田章男社長が紹介すると、ステージ奥から4台の新型クラウンが現われた。
最も象徴的な「クロスオーバー」の存在はこれまで本誌でもお伝えしてきたとおりだ。思っていたよりもSUVテイストは薄く、新たな車形ジャンルだな、と感じさせる存在感。その右にはスポーティなSUV「スポーツ」がいる。
さらに、4ドアセダン! 新型クラウンにも「セダン」がしっかりとラインナップされているではないか! そして一番右にはワゴンタイプの「エステート」が並ぶ。
向かって左が16代目クラウンの開発を担当したチーフエンジニア。中央は豊田章男社長、右が中嶋裕樹ミッドサイズビークルカンパニープレジデント
「4車すべてクラウンです!」。豊田章男社長の力強い声が響く。
まずはクロスオーバーが今秋発売を開始。その後、順次セダン、スポーツ、エステートが市販開始される計画。
またこれまで基本的にドメスティックだったクラウンだが、16代目となる新型は世界40カ国での販売を予定。年間20万台規模での生産を計画している。
いろいろな意見があることは承知しているが、自ら変わっていかなくては、クラウンに未来はない。豊田社長の言葉からはそんな思いがあふれていた。
「クラウンらしさ」とは何かを考えると、明確な答えは見つからないものの、しかしそこには「クラウンとしての“型”というものがあり、それをしっかりと踏襲しながら、しかしその型を破っていくことが大切だ」という豊田社長の決意を感じた。
■まさかのセダンもラインナップ! 今後1年半で4モデルを市販
ステージに並ぶ新型クラウンは向かって左から「クロスオーバー」、「スポーツ」、「セダン」、「エステート」の4タイプ。
2022年7月15日に幕張メッセで行われた新型クラウンの発表会。「新型クラウンです!」と、豊田章男社長が紹介すると、なんと4台ものクルマが現われた。そのすべてが「クラウン」だ
2代目から6代目の時代には2ドアやステーションワゴン、時代によってはバンやピックアップなどもラインナップされたクラウンだが、11代目、S170系のエステートが2007年6月に販売を終了すると、それ以降のクラウンは4ドアセダンのみとなっていた。
開発を主導したミッドサイズビークルカンパニーの中嶋裕樹プレジデントは、当初15代目クラウンのマイナーチェンジを計画していたのだが、豊田社長は「マイチェンは飛ばしていいので、もっと本気で考えてみないか」と、クラウンの抜本的な改革を指示したのだという。
さまざまなアイデアを出していくなかで、常に意識していたことは「クラウンとは何か?」ということ。つまり、車体サイズであるとか、駆動方式に決まりなどはなく、大切なのは「お客様の笑顔」。
車高の低い、これまでの常識内でのセダンでは乗降性に難があり、ドライバーの視点も低く決して使い勝手に優れたものではない。
開発側が勝手に作り上げてしまっていた固定観念を取り払い、自由な視点で「これからのクラウン」を考え抜いた結果、真っ先に16代目クラウンとしてでき上がったのが、まず最初に発売が開始されるクロスオーバーだったのだ。
クラウンクロスオーバー。バイカラーを選択すると、エンジンフード、ルーフに加えてトランクリッドからリアエンドが光沢のあるブラックとなる
クラウンの変革、その覚悟を示すには全高1540mm、最低地上高145mmの「クロスオーバー」はシンボリックな存在となる。
エンジン縦置き、プロペラシャフトで後輪を駆動する、というドライブトレーンにもこだわりはない。
クロスオーバーはエンジン横置きで前輪を駆動。後輪はモーターで駆動する4WDを全モデルに採用する。
■9月1日より販売開始となるクロスオーバー
16代目クラウンとして最初に正式発表され、明日9月1日より発売開始となるのが、この「クロスオーバー」。
最低地上高を145mmに高めた「クロスオーバー」。前席ヒップポイントは630mm、後席ヒップポイントは610mmと高くなった。上の写真は「バイカラー」と呼ばれ、ブラックをフードやトランク周りに配したカラー
先代型まで頑なに守ってきた全幅1800mmを超える1840mmとしたことで、プロポーションのバランスがよくなった。
最低地上高は145mmと高く、ヒップポイントが610mmと高くなったことで乗降時の身体の動きが自然で楽。運転席に座るとアイポイントの高さを実感する。
プラットフォームはカムリやレクサスESなどの「GA-Kプラットフォーム」をベースに大幅改良。特にリアのマルチリンクサス周りは完全新開発となる。
後輪をモーター駆動する4WDを全モデルで採用。
また、リアアクスルは最大4度ステアするDRS(4輪操舵)を全モデル標準装着。最小回転半径は5.4mと小回りが利く。
■クラウンクロスオーバーRS アドバンス主要諸元()内はG アドバンス
・価格:640万円(510万円)
・WLTCモード燃費:15.7km/L(22.4km/L)
・全長:4930mm
・全幅:1840mm
・全高:1540mm
・ホイールベース:2850mm
・車両重量:1920kg(1770kg)
・最小回転半径:5.4m
・最低地上高:145mm
・エンジン:直列4気筒DOHCターボ、2393cc(直列4気筒DOHC、2487cc)
・最高出力:272ps/6000rpm(186ps/6000rpm)
・最大トルク:46.9kgm/2000-3000rpm(22.5kgm/3600-5200rpm)
・フロントモーター出力/トルク:82.9ps/29.8kgm(119.6ps/20.6kgm)
・リアモーター出力/トルク:80.2ps/17.2kgm(54.5ps/12.3kgm)
・システム出力:349ps(234ps)
・サスペンション:ストラット/マルチリンク
・タイヤサイズ:225/45R21(225/55R19)
■「スポーツ」「セダン」「エステート」それぞれを大予想
ショートホイールベース(2770mm)のSUV「スポーツ」の存在は予測できた。
しかし、これ、昨年(2021年)12月14日の「EV戦略発表会」の場でずらりと並んだ「登場予定電気自動車」の1台ではないか!
新型クラウンの発表会の場で豊田社長は今後のパワートレーンについては明らかにはしなかったが、当然EVを念頭に置いていることは想像に難くない。
そして注目はセダンだ。サイドプロポーションを見ると、5030mmの全長、3000mmというロングホイールベースもさることながら、フロントアクスルとAピラーの延長線の位置関係、ダッシュパネル(Aピラー付け根)との距離の長さなどが、他の3車形とは明らかに異なっている。FR的なパッケージングにも見える。
もちろん詳細は明らかにされることはなかったが、クラウンセダンはMIRAIと関連があるのでは? とみることもできる。燃料電池を搭載する後輪駆動、さらにはプラグインハイブリッドなども考えられるパッケージングだ。セダンは「クロスオーバー」の基本コンセプトが固まった時点で豊田社長が自ら「セダンも考えてみないか」と提案したのだという。
エステートはクロスオーバーと同じ2850mmのホイールベースであることからも、プラットフォームを共用する派生モデルであることが予測できる。
イエローのボディカラーをまとうのは「エステート」と呼ばれるステーションワゴン。ホイールベースは「クロスオーバー」と同じ2850mmで、全長も4930mmで同寸だ
これら3モデルのクラウンは、今後1年半の間に順次市販モデルとして登場することになる。
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みんなのコメント
部品点数が減ったからぼろ儲けだね