マツダが投入した「CX-60」は、なにもかもが新しかった! マツダの“情熱”を感じるクロスオーバーSUVに迫る。
イギリス車っぽい感じがする
意外なほど高級でした──新型メルセデス・ベンツBクラス試乗記
最初に驚いたのは、“ゴオオオオオオッ”というガソリン・エンジンのような力強いサウンドを発する点だった。
ディーゼルなのに。しかもレッドゾーンの始まる5000rpmまでじつにスムーズにまわってみせる。さすが完全バランスの直列6気筒である。
試乗した日は曇り空で、東京湾をまたぐレインボーブリッジを走行中、ふと気づくと、そのエンジンが停止していた。壊れたわけではない。ドライバーがアクセルをゆるめると、エンジンを止めて、いわゆるグライダー走行をすることで燃費を稼ぐのだ。今回の試乗車のマツダCX-60 XD-HYBRIDは、マイルド・ハイブリッドだから、である。
目地段差ではボディがいささか揺すられる。「ドライビングエンターテイメントSUV」をうたうCX-60の純機械式足まわりは、はっきり高速セッティングなのだ。
ボディ剛性はメチャクチャ高いわけではない。どっちかというと、しなやかにショックをボディ全体でいなすような、イギリス車っぽい感じがする。
2座オープンのスポーツカーをつくり続けているメーカーとして自然な方向であるように思われる。
話が前後するけれど、興味深いのは、「自動ドライビングポジションガイド」という新しいデバイスである。ダッシュボード上部のディスプレイに運転者の身長を登録すると、運転席の角度、前後位置、高さ、それに前端高さ、さらにドアミラーの角度とステアリングホイールの位置まで、自動的に調整してくれる。
マツダが推奨する理想の着座位置は筆者の好みよりも高めで、座面がみるみる上にあがった。おかげでボンネットの両端がよく見え、着座位置が高いことによるSUVの長所を再認識した。
CX-60のエクステリアは、好みの分かれるところかもしれないけれど、基本的にはプレーンで、イヤミがない。
インテリアはごくオーソドックスな乗用車風で、好感が持てる。デジタルメーターのデザインもシンプルだし、スイッチ類の配置もわかりやすくて操作しやすい。センターコンソールが幅広いのは、フロントミドシップとまではいえないものの、エンジンをなるべくキャビン寄りに配置する後輪駆動プラットフォームの証である。
ロードスターをちょっと想わせる走行中、駆動系からときおり小さなショックを感じる。直6のディーゼル・エンジンが停止したり再始動したり、それに伴って、48Vのマイルド・ハイブリッド・システムのモーター兼ジェネレーターを内蔵する、トルコンレスの8速ATが、クラッチを切ったりつないだり、複雑な仕事をやっているから、なのかもしれない。
新開発の3.3リッター直6DOHC24バルブのディーゼル・ターボエンジンは、最高出力254ps/3750rpmと 最大トルク550Nm /1500~2400rpmを発揮する。これにマイルド・ハイブリッド・システムの、16.3ps/900rpmとパワーは大したことないけれど、200rpmで153Nmという1.5リッター自然吸気エンジン並みのトルクを生み出すモーターが加速時に加勢する。
全開にすると、2000rpmあたりからワイルドなサウンドを発し、レッドゾーンの始まる5000rpmまで滑らかに回る。とんでもなく速いわけではなくて、直6ディーゼルの駆動系のスムーズさでもって、胸のすく、心地よいフィールで味わせてくれる。
100km/h巡航は1500rpm程度で、エンジン音はほとんど聞こえてこない。
ブレーキは低速でも高速でも、じんわり効く。街中では信号で止まるときに、ひゅうううっという電子音が、耳をすましていると聞こえてくる。MHEV(マイクロ・ハイブリッド)の証左ということだろう。
路面がよければ、ドライビング・フィールは爽やかで、その爽やかさはマツダ「ロードスター」をちょっと想わせる。もうちょっと曲がった道のあるところで試乗すれば、もっとドライビングをエンタテインできたかも……。たとえば、イギリスのカントリー・ロードみたいに、中低速コーナーのアップダウンが続くような環境だったら。高速道路の出口のゆるいカーブを走りながら、ふと、そう思った。
こんなことを思わせる国産SUVがあっただろうか? マツダCX-60は、おそらく日本車初の直6のクロスオーバーSUVである。歴史を紐解くと、ほかにもある可能性もあるので、ここではこう定義しておく。マツダCX-60は、直6ディーゼルを搭載した日本初のクロスオーバーSUVである、と。
イヤイヤ、○○があります。ということもあるので、慎重な筆者としてはさらにこう付け加えておきます。マツダCX-60はストレート6のディーゼルのMHEVもあるクロスオーバーSUVとして、日本車初である。2.5リッターの4気筒ガソリン・エンジンとモーターを組み合わせたプラグイン・ハイブリッド(PHEV)も、モーターなしの2.5リッターもある。
直列6気筒のディーゼル・エンジンも新しければ、トルコンレスの8ATも新しい。エンジン縦置きの後輪駆動ベースのプラットフォームも、AWD (全輪駆動)システムも新しければ、MHEVもPHEVも新しい。2.5リッター直4の縦置きも、自動運転アシストのシステムも、500万円以上の高価格帯商品のビジネスも、マツダにとっては新しい。
なにからなにまで新しい。だから、開発はタイヘンだったことが想像できる。実際、CX-60は2022年春に発表され、同年秋には発売予定だったけれど、一部車種の発売が後ろにズレている。
e-SKYACTIV D 3.3、すなわち、今回試乗したCX-60 XD-ハイブリッド(という名前のMHEV)にしても、もうちょっと「作り込み」の時間があったらよかったかも……と、思う点がないではないことは前述のごとくである。とはいえ、これが国産中型クロスオーバーSUVとしては稀有なドライビング・プレジャーを持っていることもまた確かだ。
同じ直6ということで、筆者も含めて、BMWを対抗馬に思い浮かべてしまうけれど、価格的にいえば、マツダCX-60はその半額以下であることも明記しておく必要もある。
しかも、かたや直6の大横綱。こなた直6の新入幕である。ポルシェとスバルの水平対向エンジンを、おなじ水平対向だからといって同じ土俵で較べるようなことを、ついしているわけである。
さらに申し上げると、好角家ならぬ好自動車家にとって、クルマ選びで肝心なことは、ハードウェアの完成度云々ではなくて、人生観とかライフスタイルとか、自分を表現できるか否かにある。
「こよなくクルマを愛しています」と、宣言する、広島に拠点に置く、年産100万台の、小さな独立メーカーが、この大変換期に、世界の高級車市場に果敢に打って出たわけである。そんな「新世代ラージ商品群の第1弾」に、世の好自動車家が関心を抱くのは当然のようにも思える。
ちょいとばかし大きなこころで、マツダCX-60をとらえてみよう。お金持ちが大好きなメルセデス・ベンツ「Gクラス」だって、オンロード用の乗用車として完璧ではない。乗っていて自分を表現できるかどうか……。
だとすれば、CX-60ほど、いま、それができる国産車はそうあるものではない。駐車場の隣にロードスターが駐まっていたら、完璧である。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
この車は、評論家泣かせだな。