“イルムシャーR”なのにマイナーモデル!?
3ドアハッチバック奇跡のワンオーナー車
「新車ワンオーナーのジェミニイルムシャーRは奇跡的すぎる!」超レアな3ドアハッチをこよなく愛する男の愛機
ジェミニの歴史は少々ややこしい。1974年に登場したPF50/60系が1988年2月まで販売された一方で、1985年5月には駆動方式をFFとしたJT150/190系が登場するからだ。つまり、約3年間はFRモデルとFFモデルが併売されていたわけで、PF50/60系は単純にジェミニ、JT150/190系はFFジェミニと呼ばれた。
似たような例として、トヨタならマークIIとマークIIクオリス、プリウスとプリウスα、日産だとスカイラインとスカイラインクロスオーバーなど、生い立ちも基本設計も違うのに同じ(ような)車名が付けられた国産車というのは、意外に多かったりする。
話をジェミニに戻すと1990年3月に3代目(FFとしては2代目)となるJT151/191系が登場。そのホットモデルとして同年5月にラインナップされたのが、当時クラス最強の180psを誇った1.6Lターボエンジンを搭載し、フルタイム4WDで駆動するイルムシャーRだ。当初は4ドアセダンのみに用意されたグレードだったが、翌1991年3月に2ドアクーペに、5月には3ドアハッチバックにも追加されることになった。
この中で、もっとも印象が薄いだろう3ドアハッチバックのイルムシャーRが今回の取材車両。オーナーの上田さんは社会人となった1992年に新車で購入し、以来30年近く乗り続けている。
「それまでオートザムキャロルのATだったんですけど、MT車に乗りたいなと。そしたら、オートザム店長の旦那さんがたまたまいすゞの社員で、“ジェミニイルムシャーRならお得なのがあるよ”と言うんです。それがこのクルマでした。ターボ4駆動で、メーカーオプションのオートエアコンと電動サンルーフがついてて45万円引き。即決でしたね」と上田さん。
20年くらい前まではサーキット走行も楽しんでたそうだが、それ以降は日常のアシとして街乗りがメインとなっている。また、これまでラジエター電動ファンやイグニッションコイル、エアコンコンプレッサーにトラブルが出て交換しているそうだが、年式を考えれば「仕方ない」と割り切れる。
細部を見ていく。ただでさえ見かけないジェミニ3ドアハッチバックイルムシャーRだが、上田さんはノーマルの雰囲気を壊すことなく自分好みにモディファイしている。
まず、エクステリアはジオストームの日本版といえるPAネロのヘッドライトユニットを流用しながら、パネルをワンオフ製作することでフェイスリフトを実現。当初は、北米で販売されたジオストーム後期型のヘッドライト移植を考えたそうだが、パーツ代が高く、レンズカットも違うことから断念したそうだ。
メーカーオプションとして設定されたアウタースライド式電動サンルーフ。3ドアハッチバックに限り、ABSとの同時装着は不可とされていた。また、ルーフキャリアは純正アクセサリーとして用意されていたものだ。
センターキャップにイルムシャーのロゴが入る純正15インチアルミホイール。デザインは共通だけど、シルバー塗装の4ドアセダンに対して、2ドアクーペと3ドアハッチバックではグレー塗装となる。リム幅は6JJで、純正よりもハイトが高い195/55サイズのアドレナリンRE003を組み合わせる。
心臓部は、EK9シビックタイプRに搭載された185psを誇るB16B型エンジンの登場(1997年8月)まで、テンロククラス最強として君臨してた4XE1型。腰下はアルミ溶融鍛造ピストンに鍛造コンロッド、タフトライド処理済み鍛造クランクシャフトで強化され、ステンレス製EXマニを介してIHI製RHB52タービンが装着される。
キャビン全体を取り囲む滑らかな曲面造形を始め、低いダッシュボードとメーターナセル左右に配されたサテライトスイッチが特徴的なインテリア。ステアリングホイールは本革巻きのMOMO製コブラIIが標準となる。メーターは中央にスピードメーター、左にタコメーター、右に水温計と燃料計が並ぶ。
前席には、大きく張り出したショルダー&サイドサポートを特徴とするレカロSRが標準装備。センター部の生地やデザインはイルムシャーR専用となる。ちなみに、3ドアハッチバックは後席3人がけで乗車定員5名だが、2ドアクーペは後席2人がけの4人乗りというのが大きな違い。
SUV(ビッグホーンとミュー)やワンボックス(ファーゴ)を除くと、いすゞ最後の乗用モデルとなったJT151/191系ジェミニ。同じイルムシャーRでもレア度ぶっちぎりな3ドアハッチバックが、しかるべきオーナーのもとで実働状態にあることを嬉しく思った。
■SPECIFICATIONS
車両型式:JT191
全長×全幅×全高:4185×1695×1325mm
ホイールベース:2450mm
トレッド(F/R):1430/1405mm
車両重量:1210kg
エンジン型式:4XE1
エンジン形式:直4DOHC+ターボ
ボア×ストローク:φ80.0×79.0mm
排気量:1588cc 圧縮比:8.5:1
最高出力:180ps/6600rpm
最大トルク:21.2kgm/4800rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式:FRストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:FR195/50R15
TEXT&PHOTO:廣嶋KEN太郎/OWNER:上田純宏
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あれを超えるインパクトのクルマのCMは見たことがない。