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オーバーステアか四輪ドリフトか プジョー205 vs シトロエンAX(2) 平凡な小型車から最高の面白さ

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オーバーステアか四輪ドリフトか プジョー205 vs シトロエンAX(2) 平凡な小型車から最高の面白さ

シトロエンの哲学が色濃く反映したシャシー

プジョー205 ラリーは、ステアリングホイールの感触が素晴らしい。フロントタイヤと、しっかりコミュニケーションを取れる。タイヤサイズは、13インチの185/60。荷重移動で小さくなる接地面積を、ラバーの幅で稼いでいる。

【画像】オーバーステアか四輪ドリフトか プジョー205 vs シトロエンAX 両ブランドの最新コンパクトも 全126枚

当初、フォード・エスコート Mk2を探していたというニック・ベイリー氏は、多くの時間を費やした結果として、この205 ラリーを選んだという。「車両価格は上昇の一途で、売りに出るとすぐに買い手が決まるような状況でした」

「かなり珍しいクルマです。車両代と整備費用を含めると、1万2000ポンド(約222万円)以上は掛かりましたね」。と、これまでを説明する。

オーバーフェンダーで拡幅されたホイールアーチに、ホワイトでワイドなスチールホイールが映える。低く構えたスタンスが、活発な走りをイメージさせる。

プジョーは、205 ラリーを3万台以上生産した。このクルマには、ディーラー・オプションのサンルーフが付いている。シリアスさから一歩引いた性格のおかげで、多くの例のように廃車から免れたのかもしれない。

かたや、シトロエンAX GTの1360cc 4気筒が発揮する最高出力は86ps。パワーウエイトレシオは205 ラリーへ遠く及ばないが、幅が165という細身のタイヤが、楽しい走りを生み出す。

サスペンション・スプリングは驚くほどソフトで、長いストロークを活かし、路面へしっかり追従。シトロエンの哲学が、色濃く反映している。インテリアのデザインは、少しおもちゃっぽい。

205 ラリーと同じくらい速いAX GT

思い切りコーナーへ突っ込んでも、内側のリアタイヤは205 ラリーのように浮き上がることはない。急にアクセルペダルを緩めると、テールが流れるオーバーステアではなく、四輪ドリフトへ転じる傾向がある。

ブレーキペダルの踏み心地にはコシがない。シフトレバーの操作感も、205 ラリーへ及ばない。それでも、シャシーのコミュニケーション力は同様に高い。小さなタコメーターの針を目一杯回せば、AX GTは同じくらい速い。レッドラインは7000rpmからだ。

ガンメタリックのAX GTのオーナーは、マシュー・ホッキング氏。数年前に、極上コンディションの1台を発見でき、非常に幸運だったと振り返る。ほぼオリジナルのままで、テールライト以外、目立った作業は必要なかったという。

「当初は、状態を維持するために購入を決めたのですが、走りの魅力へすっかり惹き込まれてしまいました」。とマシューが笑う。初期型でリアスポイラーが付いていないが、6000ポンドがお買い得だったことは間違いないだろう。

ストックカーレースのレーサーとして活躍し、フランス車マニアでもある彼は、1960年代から1990年代のシトロエンの大ファン。ホイールボルトが3本、ワイパーが1本というミニマリスティックな装備で、AX GTは一層の軽量化を叶えていると指摘する。

スチールホイールが標準だが、アルミホイールは当時の純正オプション。AXにはドアハンドルがなく、ドア横のクビレへ手を入れて、ラッチを外して開く。

助手席に1人座っただけで動きが鈍くなる

キャブレター・エンジンだから、温度によって始動性が悪くなる。アナログな時代のホットハッチだという実感を高め、ますます好きになる。

車内空間は、205 ラリーと同じく見た目以上に広い。AXなら、大人4名が快適に過ごせるだろう。しかし、それでは走りの魅力が大いに削がれる。助手席に1人座っただけで、重さは約10%増し。明らかに動きが鈍くなる。

この時代のホットハッチは、平凡なコンパクトカーから最高の面白さを引き出した、黄金期にあった。ドライバーには、一定の信頼がおかれていた。それでも、楽しいと絶賛された特性は、危険だという評価へ変化していった。

クラシックカーとして時効が成立したような今では、再びそれが魅力になっている。205ラリーへ最も近いシトロエンは、1991年限りのAX スポーツだという人もいる。数は極めて少なく、出てくれば相当にラッキーだ。

今回の比較では、優劣を付ける目的はないものの、205 ラリーが優れることは間違いない。ピニンファリーナ社が手掛けたスタイリングと相まって、急速にコレクターズ・アイテム化してもいる。

数年前の英国でも、TU24ユニットを積んだ本物の205 ラリーは11台しか存在しなかった。その中の数台は、サーキットやラリーステージで、まだ現役として駆け回っているようだ。

同時に、AX GTにも感銘を受けた。現実世界では同等に速く、乗り心地は快適。オリジナル状態を探し出すのは、205 ラリー以上に難しいかもしれないが、筆者も1台、ツインキャブレターのGTが欲しくなってしまった。

撮影:マルコム・グリフィス
※この記事は、2017年1月に執筆されたものです。

プジョー205 ラリーとシトロエンAX GT 2台のスペック

プジョー205 ラリー(1987~1992年/英国仕様)

英国価格:7810ポンド(新車時)
生産数:3万111台
全長:3708mm
全幅:1572mm
全高:1295mm
最高速度:189km/h
0-97km/h加速:9.6秒
燃費:10.6km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:790kg
パワートレイン:直列4気筒1294cc 自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:103ps/6800rpm
最大トルク:12.2kg-m/5000rpm
トランスミッション:5速マニュアル(前輪駆動)

シトロエンAX GT(1988~1992年/英国仕様)

英国価格:7399ポンド(新車時)
生産数:240万台(AX合計)
全長:3531mm
全幅:1600mm
全高:1340mm
最高速度:180km/h
0-97km/h加速:9.2秒
燃費:11.5km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:722kg
パワートレイン:直列4気筒1360cc 自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:86ps/6400rpm
最大トルク:11.8kg-m/4000rpm
トランスミッション:5速マニュアル(前輪駆動)

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