2023年7月11日(現地時間)、フェラーリは最新のワンオフモデル「Ferrari KC23」を発表した。「スペシャル・プロジェクト・プログラム」の一環として、情熱的なひとりのフェラーリ・コレクターの依頼で作られた、唯一無二のスペシャルだ。次世代のGTレーシングカーをイメージしているというそのデザインには、流麗でエレガントな「天使の顔」と、大胆かつ過激な「悪魔の顔」が融合している。
最強のGT3マシンをベースに、未来のGTレーサーをイメージ
フェラーリにとって「スペシャル・プロジェクト・プログラム」は、本当に重要な顧客の熱意に完璧な形で応えるための、妥協なき取り組みのひとつだ。第1号車は2008年に製造された、「フェラーリSP1」。F430をベースとしている。フェラーリクラブ・ジャパン元会長の平松潤一郎氏が、自らマラネロに赴いてプレゼンテーションを行い生み出した、まさに「夢のクルマ」だった。
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今回発表された「KC23」もまた、フェラーリを愛してやまない1人の顧客の情熱的かつ深い思いれに応えて開発された。フラヴィオ・マンツォーニが率いるフェラーリデザイン部門チェントロ・スティーレとのコラボレーションによる。
デザインは、「未来のクローズドホイールレーシングカーはこういった姿かもしれない」という大胆で過激なビジョンを具現化したもの。76年に及ぶマラネッロの歴史上、最多の勝利数を誇る488 GT3 の「Evo 2020」バージョンを変貌させて、極上の新作に仕上げている。
488 GT3は、2016年から今日に至るまで世界屈指の耐久レースシリーズを制してきた。通算での勝利数は530、制覇した選手権は実に119に上る、フェラーリ史上最も成功を収めたレーシングカーと言われるゆえんだ。
その究極のエンジン、シャシ、サスペンションセットアップを受け継ぐKC23 は、競技以外のサーキット走行に特化して設計されている。
静止状態と走行状態で異なる見た目を創り出す
最大の特徴は、静止状態ではエレガンスが香り立ち、ひとたび走り出せば見る者を興奮させるという二面性を1台のクルマにまとわせていることだろう。モーター駆動で開閉されるエアインテークや、脱着可能な大型リアウイングなど、最新の空力ソリューションによってその「離れ業」を実現した。
静止状態のレイアウトでは、クリーンに波打つ流麗なフォルムが際立つ。だがひとたびコースに出る時には、エッジ感を強調するエアインテークや堂々たるリアウイングが、強烈なインパクトを放つ。
フェラーリ自身はそれを「天使のようなクルマから悪魔のようなクルマへと、見た目の印象が変化する」とか、「シックなイブニング・ドレスから、ダウンフォースを追求するパンクロックの攻撃的なものへと、雰囲気と体つきが切り替わる」と表現している。
プロジェクト当初からチェントロ・スティーレは、クライアントとの合意の元、ホモロゲーションの制約を完全に排除したラディカルなワンオフを作り出すことに力を注いだ。そのために、488GT3 Evo 2020のあらゆる個性がリデザインされている。
たとえば、明らかに航空機のエアロダイナミクスとの関連性をイメージさせるガラスエリアのデザインは、ボディワークとシームレスに一体化されている。ピラーもフレームも、シール部分でさえも目立たない、きわめて巧みな処理だ。
ボディ表面もまた滑らかで継ぎ目のないよう処理されてている。鋭角な部分を極力廃することで、無駄のないしなやかさとピュア感が際立つアイコン性がもたらされている。
結果、KC23にはまるで1個の金属の塊から削り出されたような、力強さと一体感が備わった。その美しさはどこかノスタルジックでありながら現代的であり、同時に未来感まで漂わせるタイムレスなオーラを放つ。
大胆な先進性をアピールする、テールライト
機構的な先進性は、デザイン的にも非常にわかりやすい。両サイドのエアインテークは、ミッドリアに搭載するV8ツインターボエンジンを始動すると自動で開く。生き物が眠りから目覚めたような印象を与える演出ともいえる。
バタフライドアの構造的ソリューションは、LaFerrari(ラフェラーリ)と共通。 フロントヒンジ1か所でで上方へ開くもので、グリーンハウスや構造部には手を加えていない。
クラムシェル式ボンネットの開閉も、きわめてシンプルだ。2 本のピンを取り外すだけで、フロントの検査やメンテナンス作業を行うことができる。
最も大胆な先進性をアピールしているのが、実はテールライトだ。印象的なメタクリル樹脂製のライトブレードは、Ferrari Vision Gran Turismoをインスピレーションとしている。エンジン始動と共に輝きを放つそれは、ひときわ未来的な印象だ。
ボディの塗装色もまた、このクルマのためだけに特別に開発された。4層のアルミニウム塗装は、光の当たり具合や見る角度によって色味が変化する。それは「まるで生き物のように呼吸している」ように見えるのだとか。カラー名は「ゴールド・マーキュリー」と名付けられた。
お披露目は英・グッドウッドフェスティバル
キャビンは488 GT3 Evo 2020を極力そのまま引き継ぎ、無駄を削ぎ落としたデザインで、例外はパッセンジャー側のドアパネルとダッシュボードの仕上げだけとなる。
KC23 専用のシートはアルカンターラでトリミングされ、そこにロゴが電気融着されており、エクステリアと完璧に調和したエレガンスをキャビンにもたらしている。
伝統的なミラーは廃され、美しいフォルムを損なうことのないデジタルカメラシステムが装着された。もちろんエアロダイナミクス的なメリットも大きい。後方視界はビデオカメラシステムで確保されている。
ホイールは専用に設計された2種類を設定する。これもまた「天使と悪魔」に関連していると言っていい。18インチのホイールを装着すれば、世界のサーキットで目を見張る走りを披露する。一方、フロント21インチ+リア22インチのホイールは、静止状態での時に見るものを魅了してくれる。
この最新作は3年に及ぶ開発を終えて、マラネッロの全製品の中で最もエクスクルーシブなグループに加わった。たったひとりのクライアントの理想に応えるビスポークモデルであり、フェラーリのパーソナライゼーション戦略の頂点に位置する。
最初の一般公開は2023年7月13~16日で、イギリスで特に重要なモータースポーツイベントであるグッドウッドフェスティバルオブスピードで展示される。
また、8 月1日~10月2日にはマラネッロのフェラーリミュージアムで展示される予定だ。卓越した美しさとエンジニアリング・ソリューションを自分の目で確かめたい、という熱心なエンスージアストをきっと喜ばせることだろう。
コラム「スペシャル・プロジェクト・プログラムとは」
「スペシャルプロジェクト・プログラム」の目的は、いわゆる「ワンオフ」と呼ばれるユニークなフェラーリを生み出すこと。要望に沿ってエクスクルーシブなデザインが作り出され、そのクライアントが唯一無二のモデルのオーナーとなる。各プロジェクトはクライアントのアイデアを出発点とし、それをフェラーリスタイリングセンターのデザイナーチームが連携して発展させる。車両のプロポーションとフォルムを決定したら、デザインを詳細に検討し、スタイリング用クレイモデルを製作した上で、新ワンオフの製造工程に入る。全プロセスには平均約2年を要し、その間、クライアントはデザインの評価や検証プロセスに密接に関わる。こうして跳ね馬のロゴを装着し、マラネッロ生まれの全モデルと同じ卓越した水準で設計されたユニークなフェラーリが誕生することとなる。
[ アルバム : フェラーリ KC23 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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