当たり前のように高級車を目撃する都心部に住んでいると「お金持ちが増えた」「あのブランドはいま人気」などと錯覚してしまいがちだ。日本全体の販売台数のデータを知るとその乖離に驚くことも多い。そこで今回はJAIA(日本自動車輸入組合)が毎年発表している販売データを改めて見てみることにした。そこで分かったちょっと興味深い現象とは…。
文:古賀貴司(自動車王国) 写真:ベストカー編集部
え、34年前のほうが売れてたの!? ロールスロイスのバブル期と今の違いがスゴイ
【画像ギャラリー】バブル期に販売された時代を象徴するクルマたち(5枚)
■自動車の歴史にも大きな影響と与えたバブルとバブル崩壊
1990年に話題になったクルマといえばホンダのNSX。後継期が後押ししたこの時代は初代セルシオやR32GTRなど、日本車勢も豪華な顔ぶれが用意されていた。
1990年3月、不動産バブル解消のため大蔵省より、いわゆる総量規制が通達され、日銀も引き締めに動きバブル経済自体の崩壊への引き金となったとされる。
1989年12月に日経平均株価は3万8,915円87銭をつけたのをピークに翌1990年1月から暴落に転じ、同年9月には20,000円台まで下落した。わずか9か月あまりの間に半値近い水準にまで暴落した、というわけだ。
しかし、1989年に消費税が導入されたとともに高級車に課されていた物品税が廃止された。そのためか、1990年の「車名別輸入車新規登録台数」(日本自動車輸入組合調べ)はなかなか興味深い。当時、まだバブル崩壊の深刻さは世間に浸透しておらず、一時的な“調整”だと思われていたように感じるほどだ。
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■ロールスだけでなくBMWやVWも昔のほうが売れていた
1990年時のロールスロイス中核モデルになっていたのは写真のシルバースピリットやロングホイールベース版のシルバースパー(共に第二世代)。
ひとまず、1990年と2023年(最新データ)の車名別輸入車新規登録台数に目を通してみた。最も注目すべきは、ロールスロイスの新規登録台数である。
1990年には518台(前年比58%増)を記録したが、2023年は236台にとどまっており、実は34年前の記録を更新できていない。
都心部では現在でもロールスロイス車を頻繁に見かけ、需要が高まっているような印象を受けるが、実際の登録台数は当時を下回っている。
同じ超高級車セグメントのベントレーは、1990年に517台を記録。2023年は727台と増加している。これは、モデルラインナップの拡充による価格帯の多様化が寄与していると考えられる。
2023年の登録台数が1990年を下回るメーカーには、シボレー、キャデラック、ジャガー、ロータス、ランチアなど、市場環境の変化を反映した結果となっている。
特筆すべきは、現在の輸入車市場で主要ブランドとなっているBMWやフォルクスワーゲンも、1990年の方が登録台数が多かった点だ。
1990年時のフォルクスワーゲンはゴルフが3代目となったあたり。その後に続くVW黄金期の礎が徐々に出来はじめていた頃だ。
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■逆に大きな成長を遂げた高級スポーツカーブランド
1990年当時、ポルシェ911は3代目となる964型が発売されていた。ボクスターやカイエン販売前なので販売台数が大幅に少ないのも当然といえば当然だろう。
一方、高級スポーツカーブランドは大幅な成長を遂げている。ポルシェは1990年に4,589台だった登録台数が2023年には8,002台まで増加し、その存在感を高めている。マセラティも1990年の389台から2023年には1,734台へと約4.5倍の伸びを示した。
フェラーリは1990年の447台から2023年には1,395台と約3倍の成長を遂げ、ランボルギーニにいたっては1990年の38台から2023年には628台と、実に16倍以上の飛躍的な成長を達成している。
これらの数値は、富裕層における価値観の本質的な変化を映し出しているような気がしてならない。バブル期においては、ロールスロイスやベントレーといった、佇まいそのものが価値となるような超高級車が支持を集めた。
しかし現代では、ポルシェやフェラーリ、ランボルギーニといった、操る歓びを提供する高級スポーツカーへと富裕層の食指がシフトしているように見受けられる。
昨今、高級スポーツカーは新車でオーダーしづらく、リセールバリューを維持しやすい傾向にある。富裕層とてリセールバリューを気にして高級スポーツカーを積極的に選んでいるのか、気になるところではある。いずれにせよ、新規登録台数から若干、垣間見られる富裕層のテイストの変化に妄想を繰り広げてしまう。
90年あたり、フェラーリはV8シリーズは348、V12シリーズはテスタロッサや512TRなどを販売。スーパーカー&高級車の代名詞的存在なのは当時から変わっていない。
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誤字多いし、恥ずかしい