2018暦年でのブランド別トップはダイハツ
1月10日に全軽自協(全国軽自動車協会連合会)が2018年12月の通称名(車名)別新車販売台数ランキングの速報値を発表した。2018年12月の販売台数が発表となったことで、2018暦年(1月~12月)での年間販売台数も速報値ながらまとまったことになる。
軽自動車での車名別2018暦年締め年間販売台数1位は24万1870台を販売したホンダN-BOX(スラッシュ含む)となった。2位のスズキ・スペーシアにほぼ10万台という大差をつけてのトップとなっている。N-BOXの2018暦年締めでの月販平均台数は2万台強、2位のスペーシアは1.2万台強となっている。
それではブランド別での2018暦年締め販売ランキング(軽四輪総数)をみると、トップはダイハツで61万1569台、2位はスズキで58万6867台、3位はホンダで36万9531台となっている。前述したように、N-BOXは2018暦年で24万1870台を販売しているので、ホンダの軽四輪車総販売台数に占めるN-BOXの販売比率は約65%となっている。つまりホンダの軽四輪車販売はほぼN-BOXで支えられているといってもいい状況にある。
もともと多種多様なラインアップの広さを誇るダイハツが、タントやムーヴ系などの中核車種はあるものの、N-BOXほど極端に突出して販売が偏ることなくバランス良くラインアップ各車を販売しており、2018暦年でもブランド別販売トップとなっている。
スズキはここのところダイハツとのブランド別販売台数争いではなかなかダイハツに及ばずに苦い思いをすることが多かったが、2018年はジムニーのフルモデルチェンジもあり、ほかのスズキの軽自動車販売にも大きな刺激となって、ダイハツ猛追傾向が目立っている。
暦年締めではダイハツが逃げ切っているが、スズキとの差は2017暦年比で半分ほどとなっているので、2018事業年度締め(2018年4月から2019年3月)でのブランド別販売台数トップ争いではさらにホットな“S&D戦争”が展開されていきそうである。
目立つホンダの普通車からN-BOXへの乗り替え
いまや販売台数で上位争いをする時は、ディーラー名義などで自社登録(軽自動車は届け出)をして販売台数の積み増しを行うのは常套手段。通常販売でもかなり台数を稼いでいるのに、トップ維持のために“ダメ押し”で自社届け出も積極的に行った結果、通称名別トップのN-BOXが2位のスペーシアに10万台ほど差をつけている結果になっているといってもいいだろう。人気の軽自動車で、しかもそのなかでも人気が高いとはいえ月販平均2万台というのは売れすぎといっていい数字である。
ホンダは軽自動車におけるN-BOXの販売比率が極端に高く、いますぐスズキやダイハツを追いこしてブランド別トップに躍り出ることはそう簡単にはできない。そこであえて、車名別販売ランキングにこだわって存在感を強調しようとしているようにもN-BOXの販売の様子を見ていると感じてしまう。
大ヒット車ともいえるN-BOXのアキレス腱ともいえるのが、ホンダ車ユーザーがN-BOXへ代替えするケースが目立っているということもある。つまり、フィットやフリード、ステップワゴンなどのユーザーが「これで十分」としてN-BOXへダウンサイズするケースが多いのである。ホンダからホンダへの代替えなので、他メーカーからお客を取りこんでいるわけではない。つまりN-BOXがバカ売れしている割には、そのままホンダユーザーが増えているというわけではないのである。
また、スズキやダイハツとの販売手法の違いにも注目したい。スズキやダイハツの場合は、街の整備工場や中古車専業店などのなかから、新車の紹介販売協力関係を結んだ“業販店”というものを多く抱えている。そして、とくに軽自動車の“業販比率”が非常に高いのである。紹介販売車両については、正規ディーラーではなく、紹介した整備工場や中古車専業店にて、定期的なメンテナンスを行うケースも多い。つまり、ディーラーとしても販売した車両すべてが正規ディーラーでメンテナンスを受けることを想定してビジネスを進めているわけでもないのである。
ディーラー以外に流れがちな軽自動車のメンテナンス
一方でホンダの場合は、登録車だけで見ればトヨタ、日産とともに“日系ビッグ3”といわれており、スズキやダイハツに比べれば強固な正規ディーラーネットワークが構築されている。それゆえ業販ルートを使っての紹介販売はスズキやダイハツよりは限定的なものとなっている。ということは、正規ディーラーで販売した車両がほとんどとなり、販売した車両の多くは正規ディーラーでメンテナンスを請け負うのが一般的な流れとなるし、それを見越した新車販売を行っている。ところが軽自動車ユーザーは維持管理コストにシビアなひとも多いので、割高イメージの強い正規ディーラーを嫌い、格安車検専業店やガソリンスタンドなどを利用するケースも目立つ。
つまり、ホンダディーラーは自社ピットにおける、点検・整備や修理などのメンテナンス収益も重視しているのに、軽自動車(おもにN-BOXだけど)が売れ続けている結果、アフターメンテナンス部門での収益が伸び悩み、ディーラー全体の収益悪化も招いてしまっているのである。スズキやダイハツのディーラーに比べれば店舗も大きいところが多く、人件費や光熱費などの一般管理費もかかるので、“N-BOXがよく売れて販売現場はホクホク”ということではかならずしもないのである。
スズキやダイハツは軽自動車販売で激しく競っているが、一方で収益改善の意味もあり小型登録車販売にも力を入れている。軽自動車に依存しすぎず、バランスの良い新車販売を模索するスズキとダイハツに対し、軽自動車販売(N-BOXメインだけど)にのめりこみ過ぎているように見えるホンダは対照的に映ってしまう。
現行スペーシアはN-BOXにキャラクターがよく似ている。単純に“売れているからまねした”という部分もあるかもしれないが、“スズキでN-BOXみたいな軽自動車があればね……”という声に耳を傾けたというほうが大きいかもしれない。
軽自動車とひとくくりにしても、ホンダや日産の軽自動車は登録車を乗り続けてきたひとが、「日産やホンダブランドならば」と、登録車から乗り換えたり、セカンドカーとして購入するケースも多い。一方で代々軽自動車を乗り継いできたというひとは、長年軽自動車をメインに展開してきたスズキやダイハツに信頼や愛着を覚え、それら以外のブランドの軽自動車には、なかなか目が向かないとも聞いたことがある。
ホンダはN-WGNやN-ONEもラインナップしているが、そちらはお世辞にもよく売れているとはいえない。N-BOXはホンダ渾身の力作であり、その完成度の高さから、たまたま“スズキ&ダイハツとその他”という垣根を超えて売れているのも、断トツトップにつながる一因ともなっているのだが、登録車販売の不振傾向などホンダの払った“代償”は結構深刻なものとなりつつある。
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