■スポーツカー作りに長けたジャガーの電動SUV
ジャガーとランドローバーは、紆余曲折を経て、現在ではジャガー・ランドローバーとして、ともに成長への道を歩むイギリスの名門ブランドである。
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正確にはランドローバーにはさらにラグジュアリーを追求したレンジローバーが、そしてジャガーとランドローバーのいずれにも、パフォーマンスにフォーカスしたスペシャル・ビークル・オペレーション(SVO)から生み出された高性能モデルまでもが用意されているから、そのモデルラインナップはエンジンや装備の違い、すなわちグレードを含めると、日本仕様でも実に膨大な数となる。
今回は比較的価格が近いことと、400馬力であることに加え、ニューモデルとしての話題性にも富む2台のSUVをピックアップし、ジャガー流の、そしてランドローバー流の最新SUVの走りを楽しんでみた。
ジャガーが揃えるSUVラインナップは、「Eペイス」、「Fペイス」、「Iペイス」の3モデル。ジャガーもついにSUVの市場に参入するのかと思ったのは最近のことだろうと思っていたら、そのラインナップはいつのまにか完成されていたといった印象だ。
試乗するのはもちろん話題のBEV(Battery Electric Vehicle)SUVの「Iペイス」だ。90kWhのリチウムイオンバッテリーをアンダーフロアに搭載し、最長で438kmを走行することが可能だ。
これならばBEVを購入することを躊躇するもっとも大きな理由ともいえる充電スポットの問題を気にすることなく、長距離の旅行に出かけることも可能だろう。参考までにIペイスには「S」、「SE」、「HSE」の3タイプのグレードが設定されているが、その性能やサイズは全車ともに共通。今回試乗したのは、IペイスHSE(以下Iペイス)で、車両価格は1183万円ともっとも高額となる。
日本では世界に先駆けてBEVが日本メーカーから発売されていただけに、それに対するネガティブな反応は大きくはないが、それでもやはり、航続距離と充電に必要な時間は、BEVを購入する時には第一の懸案事項となる。
Iペイスの場合は、最長の航続距離は438km。充電は最大7kWの普通充電か、最大1000kWの急速充電の選択ができるが、実際には50kWのチャデモ(急速充電の規格)を使用することがもっとも現実的な選択となるだろう。チャデモからの急速充電ならば、計算上1時間の充電では270km分のチャージをおこなうことが可能になる。
エンジンがなくなるというのは、ここまで自動車のデザインに自由度を生み出してしまうのか。Iペイスとのファーストコンタクトで感じた印象は、今回も変わらなかった。
Iペイスのキャブフォワードなデザインは、SUVというよりはスタイリッシュな4ドアクーペのようにも見える。全長×全幅×全高は4695×1895×1565mmと、SUVとしては車高が低いという印象で、それが全体的な造形の美しさ、そして走りへの期待感を大きく高めてくれているのだ。
この個性的なスタイルが、長く新鮮さを失わずにいることができるのか、あるいはこれから続々と誕生してくる新型SUVのなかで埋もれてしまうのか。特別に強い個性を持つ造形は、ここに大きな難しさがある。
バッテリーをフロア下に搭載し、前後アクスルにエレクトリックモーターを搭載。トータルの最高出力&最大トルクは、400ps&696Nmを誇り、0-100km/h加速は4.8秒である。
満載されたバッテリーのために車重が2230kgにまで増加していることを考えれば、これは相当に魅力的なデータだ。実際に何回か加速を繰り返しても、加速感はその数字に相応の感覚だった。
さらに印象的だったのは、Iペイスのために専用設計されたアルミニウム製のアーキテクチャーの素晴らしさだ。そもそもバッテリーを保護するために強靭なフレームが必要という事情があったにせよ、その結果得られたボディ剛性や前後重量配分の完璧さは、さすがに長年スポーツカー作りを続けてきたジャガーならではのものだ。
そのノウハウをランドローバーに与え、逆にオフロードのノウハウをランドローバーからジャガーへ与えるというシナジーは、はたしてこれからどのようなニューモデルを生み出してくれるのだろうか。
BEVというだけで、未来的な感覚を期待してドライバーズシートに身を委ねてみたが、その期待は裏切られなかった。
ダッシュボードには10インチと5インチのデュアルタッチスクリーン「タッチプロデュオ」が据えられている。メインのモニターにはドライブに必要なさまざまな情報が表示でき、充電残量やナビ、バッテリー走行中なのか、あるいは逆にエネルギー回生をおこなっているのか等々、その表示を見るだけでBEVの楽しさに浸ることもできる。
ちなみにこのIペイスではブレーキの回生モードには「ハイ」と「ロー」があり、ローでは一般的なブレーキとほとんど変わらないフィーリングであった。ハイをチョイスすると減速Gはかなりの大きくなるため、最初は慣れが必要だが、そのうちこの回生ブレーキでバッテリーを充電しようなどと考えるようになってしまう。
高速道路でもワインディングでも、Iペイスは常に優れた安定感を見せてくれるモデルだ。その理由は、バッテリーの搭載位置と最適な前後重量配分にあることは間違いない。
アクセルペダルを踏み込めば、瞬時に最大トルクが出力されるエレクトリックモーターの特性もあり、ワインディングではかなりのハイペースで連続するコーナーをクリアしていくことができる。
Iペイスは、SUVとしての実用性も十分に考えられている。ラゲッジルームは、リアに656リッター分、そしてフロントにも27リッター分が用意されており、フロアセンターやドアポケットにも小物を収納するスペースが設けられている。
最新のBEVでありSUVでもあるIペイスで始める新しいライフスタイル。それはとても魅力的なものだ。
■ストレートシックスの優位性を打ち出したSUV
ランドローバーからのチョイスは、「レンジローバー」、「レンジローバー・スポーツ」、「レンジローバー・ヴェラール」、そして「レンジローバー・イヴォーク」と、4モデルが出揃うレンジローバー・シリーズのなかから、その名のとおり走りをもっとも強く意識するとともに、レンジローバーの名に恥じないラグジュアリーな内外観、そして装備を誇る、「レンジローバー・スポーツ・オートバイオグラフィー・ダイナミック」(以下レンジローバー・スポーツ)をチョイスした。
このモデルにはさらに3タイプのエンジンが選択可能だが、スペックとしては中間となる400psの3リッター直列6気筒エンジンを搭載するP400を選ぶ。価格は1272万円(消費税込み)。SUVとして現実的ではないという声も聞かれそうだが、その市場は確かにこの日本にもあるのだ。
まずはSUVの世界では、ジャガーとは比較にならないほどに長い伝統と多くの経験を持つランドローバーの新作、レンジローバー・スポーツのシートへと我が身を収める。
シートポジションの高いSUVだけに乗降性はさほど良くはないのだろうと予想していたのだが、座面は想像するより低く設計されており、予想するよりスムーズに着席、そして正確なシートポジションを得ることができた。
キャビンからの視界も悪くない。精悍で都会的、そしてスムーズな面構成が特徴的なボディは、外から見ているよりもずっと見切りが良い。
搭載されるエンジンは最新の3リッター直列6気筒ターボで、これはジャガー・ランドローバーによる完全自社設計、そして製造によるものだ。
「インジニウム」というネーミングで、このガソリンのほかにディーゼルも用意される最新世代のエンジンとなる。注目の最高出力&最大トルクは400ps&550Nm。48Vのマイルドハイブリッド・システムを組み合わせることなどで、8.9km/Lの燃費を実現するなど、効率の向上を狙っているのも大きな特長だ。
組み合わせられるトランスミッションは8速AT。駆動方式はもちろんフルタイムAWDとなり、オンロードはもちろんのこと、オフロードでも卓越した走行性能を堪能できる。
その楽しさを支えているのは、やはり電子制御のエアサスペンションやツインスピードトランスファーギアボックス&センターデファレンシャル、そしてテレインレスポンスなどによる、最先端のシャシー制御だろう。
エアサスペンションは、標準の車高から50mm低い設定から75mm(オフロードでは80mm)のアップが可能だ。さらにランドローバー独自のテレインレスポンスは、走行状況に応じて、エンジン、トランスミッション、デファレンシャル、シャシを自動的にセッティングしてくれ、安全で効率的なドライブを車両側が常にサポートしてくれる。
こうしたことが相まって、ドライバーとパッセンジャーには常に快適な空間を提供し、オフロードからオンロードまで、さまざまなタイプの道を確実に走破できるようになっている。
今回はオフロードでこのモデルの実力を試すチャンスはなかったが、オンロードでの走りは驚くほどに機敏で、そして快適なものだった。
そもそもノイズや振動に対して有利な直列6気筒というエンジンを搭載したことで、これまでのV型6気筒仕様よりも、走りの高級感が増したことは紛れもない事実である。
最初に触れたとおり、膨大なラインナップを持つランドローバーだが、このスポーツはそのなかでも新しさ、そして走りにおいては最も魅力的な一台といえるのではないだろうか。
●VAGUE編集部のジャッジ
同じ400馬力で、直列6気筒のガソリンエンジンとBEVの2台を、車両価格が拮抗しているという理由で比較してみたが、甲乙つけがたい2台であった。ランドローバーとジャガー、どちらも独自の世界観を持つブランドだけに、両社のエッジな2台は各々、個性的であったからだ。
つまり、どちらを選ぶかは、購入する人のライフスタイルによって決まる。
もし、本格的なアウトドアを楽しんでいる人なら、迷わずガソリンエンジンのレンジローバー・スポーツがオススメだ。充電設備の心配をすることなく、キャンプ先を選ぶことができ、オフロードを分け入っていくことができる。
しかし、新規感を求めるのなら、Iペイスを選んで間違いはないだろう。日常で使用するかぎり、その航続距離に不安なところはなく、レンジローバー・スポーツとの差額で十分に充電設備を自宅に設置することができる。
さらに、ランニングコストを考えると、Iペイスのほうが賢い選択であることは明白だ。また、BEVにあったライフスタイルに自分を持っていくのも、クルマとの新しい付き合い方かもしれない。
●ジャガーIペイスHSE
・車両価格(消費税込):1183万円
・全長:4682mm
・全幅:2011mm
・全高:1565mm
・ホイールベース:2990mm
・車両重量:2208kg
・駆動方式:四輪駆動
・最高出力:400馬力
・最大トルク:696Nm
・0-100km/h:4.8秒
・最高速度:200km/h
・航続距離(WLTC):438km
・ラゲッジ容量:656-1453リッター
・サスペンション:(前)ダブルウィッシュボーン式、(後)インテグラルリンク式
・ブレーキ:Φ350mmベンチレーテッド・ディスク、(後)Φ325mmベンチレーテッド・ディスク
・タイヤ:(前)245/50R20、(後)245/50R20
・ホイール:(前)8.5Jx19、(後)8.5Jx19
●レンジローバー・スポーツ・オートバイオグラフィー・ダイナミック
・車両価格(消費税込):1270万円
・全長:4855mm
・全幅:1985mm
・全高:1800mm
・ホイールベース:2920mm
・車両重量:2340kg
・エンジン形式:直列6気筒DOHCターボ
・排気量:2992cc
・エンジン配置:フロント縦置き
・駆動方式:四輪駆動
・変速機:8速AT
・最高出力:400馬力/5000-6500rpm
・最大トルク:550Nm/2000-5000rpm
・0-100km/h:5.9秒
・最高速度:225km/h
・公称燃費(WLTC):8.9km/L
・ラゲッジ容量:780-1686リッター
・サスペンション:(前)ツインロワーリンク、(後)インテグラルリンク式
・ブレーキ:ベンチレーテッド・ディスク、(後)ベンチレーテッド・ディスク
・タイヤ:(前)275/45R21、(後)275/45R21
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みんなのコメント
充電環境の観点から主力の量産車の開発に本腰を入れられないのはわかるんだけど
フラッグシップクラスなら外国メーカーの様に投入を考えてもいいと思うんだけど
例えばトヨタが導入した水素カーみたいにさ
フラッグシップとは言えないけど、大きいサイズで存在感を示して
展開していく上での第一歩を踏み出すと言うことはありだと思うんだよね
ガソリン車大好きだから俺は買わないけど、将来的なことを考えると
メーカーとしては早いうちから着手してたほうがいいんじゃないかなと
お節介を焼いてるわけですよ