この記事をまとめると
■世界中でクルマの電動化が活発化している
燃料計が動いて見えるほど大ガス喰い……でも楽しすぎる走り屋泣かせの国産スポーツ車5選
■日本の自動車メーカーからは今でも大排気量エンジンやハイパワーエンジンが登場している
■電動化に向いていないクルマもあるので、100%電動化になるのはまだ当面先と予想できる
ガソリン高騰やらカーボンニュートラルやらどこ吹く風
先ごろイギリスのグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでコースレコードを記録したEVファンカーの速さたるや! 度肝を抜かれた方も少なくないでしょう。わりと短いコースで最高速も伸びづらいとなると、スタンディングスタートが得意なEVは有利なはず。しかも、床下の気流をファンで吸い込むのもモーターですから、ダウンフォースだって最初からマックスに近いわけで、それならF1をぶち抜くのだってできないこたぁない。
でしょうが、コースサイドで聞こえてくるのはモーターの唸りと、でっかい掃除機みたいなバキューム音ですからね。速さこそ魅力的ではありますが、レーシングカーのカタチをした掃除機に惹かれるクルマ好きはそれほど多くはないかもしれませんね。
同じ理由かどうかわかりませんが、世のなかのEV促進運動に従うことなく、かたくなに内燃機関にこだわり続けているクルマたちがいます。悲しいかな、いつかはEVにとって代わってしまう運命でしょうが、今の今はとにかく「電気? いらね」とはねつけている彼ら。ややもすれば「悪あがき」と捉えられても仕方ありませんが、クルマ好きならそんな姿勢にシンパシーを感じずにはいられないのではないでしょうか。
たとえば、レクサスがリリースし続けている一連のスポーツモデル。いったいどこまで攻めるんだってくらい、速く走るための技術を突き詰め、ガソリン高騰おかまいなしに大排気量エンジンを搭載してくるのはクルマ好きの「こうでなくっちゃ!」という声が聞こえてきそうです。とりわけ、今度登場する以前のIS F的なパフォーマンスを有する新型セダン、IS500は例によってミドルクラスのセダンボディに5リッターの自然吸気V8エンジンですからね。
初代がデビューした2007年頃ならEVなんて鼻で笑われていたわけで「打倒M5!」とか「ビバリーヒルズのワイルドスピード!」なんて言ってられたんですがね。このご時世ともなると「残りのガソリン、全部オレのもの!」的な意気込みさえ感じられて、なんとも潔い!
電動化なんてこのクルマたちの前じゃ通用しない
潔いといえば、GRシリーズもまた「電気じゃ味わえない」エキサイトメントを提供してくれてます。ラリーのホモロゲーションモデルとしてリリースされたヤリスは言うに及ばず、同じく攻めてるベクトルがタップタプに滲み出ているカローラはともに限界性能が高められたシャシーが高い評価を受けています。
でもって、1.6リッターと小排気量ながらターボによって272馬力(ヤリス)とか304馬力(カローラ)を絞り出して、グイグイ走ってくれるわけです。EVによるレースイベントも盛んになりつつありますが、やっぱり過給する音やウェイストゲートが「プシュ!」と開くのを耳にするのは胸アツ。トヨタのスポーツカーを担うGRには、このほか86やスープラといった電動化に抗うマシンがラインアップするなど「悪あがき」のトップランナーといっても過言ではありません。今後も彼らの抵抗運動(笑)はぜひ応援していきたいものです。
GR同様、電動化の流れそっちのけで気勢を吐いているのがシビック・タイプRにほかなりません。宿敵ルノー・メガーヌR.S.とのFFニュルブルクリンク頂上決戦は末代までも語り継がれるエピソード。今度の新型もシックな佇まいに見えて、でっかいリヤウイングやら3本出しマフラーやら、大人げないまでのリアルチューンドマシンに仕上がっています。
もちろん、ハイブリッドとか眠たいパーツは一切なく、2リッターのVTECをターボでグイグイ締め上げて再びFFニュル最速マシンに輝くこと想像に難くありません。おそらくシビックも早晩EV化されるに違いありませんが、タイプRがもたらしてくれるワクワク感だけはどうにか続いてほしいものです。
と、ここまでEV化の波に抗うのは熱血スポーツだけかのようにお伝えしてきましたが、「電気じゃちと困る」モデルはほかにもあります。
速く突っ走るだけでなく、険しい山岳路や砂漠といった道なき道を行くクルマとなると、やっぱりガソリン車。タクラマカンやサハラ、あるいはアルプスにコンセントがあるとは思えませんからね。予備のタンクを背負うことこそできても、予備のバッテリーというのは今の技術ではなかなかの難題。
あるいは、筆者の思い過ごしかもしれませんがアマゾン川の激流を渡るにしても、緻密なコンバータ制御が漏電しないとも限りません。車内にビリビリきちゃって「これが噂の電気ウナギか」などと上手いこと言う場面でもないでしょう。想像するまでもなく、こうした特殊な目的、機能を持ったクルマのEV化はどう進んでいくのか心配でなりません。
もっとも、ご紹介したクルマたちも時代の趨勢には逆らえなくなる日もくることでしょう。それだけに、悪あがきというより内燃機関の「爛熟期」をもっともっと熱く彩っていってほしいと思う今日この頃ではございます。
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