「カート、楽しいですよ!」
カートに乗るようになってから、何度この言葉を口にしてきただろう。大学生の時に初めてカートに乗った時の高揚感は未だ筆者の脳裏に鮮明に焼き付いているし、それを多くの人に体感して欲しいと思っている。しかし実際問題、カートの楽しさが世間……少なくともモータースポーツファンに対して十分浸透しているか? そう言われると、正直「ノー」と言わざるを得ないだろう。
■レース、始めてみる? レースデビューのハードルが“意外と”高くないワケ。初心者向けレンタルカート耐久で走る楽しさを知る
「カート」と一口に言っても、その種類は多岐にわたる。例えば、プロのレーシングドライバーを目指す少年少女たちが走らせるレーシングカート。そこはある意味プロフェッショナルな世界であり、我々一般人が休日のレジャーとして気軽に楽しめるジャンルかと言われれば、そうではない。
やはり一般的に「カート」と言って多くの人が想起するのが、遊園地などに置かれた子供向けゴーカートだろう。もちろんこのゴーカートでも、子供たちが走る楽しさを体感する上では十分だが、やはり筆者がオススメするのは、多くのカート場に置かれているレンタルカートだ。このレンタルカートは、世間の人々が想像するよりももっとエキサイティングでスリリングなものなのだ。
レンタルカートの最高速度は、60km/h~80km/hに達する。そう聞くと一般道の法定速度より少し速い程度なので大したことはないと思うかもしれないが、着座位置の低さもあって体感速度は乗用車のそれとは段違い。実際の速度の2倍、3倍に感じられるとも言われる。
気合い一発、コーナーを全開で駆け抜けられた時はアドレナリンが噴出。Gに耐えながら重いハンドル(パワステなし!)を動かし続けることは単純に“良い運動”となるため、走行を終えてヘルメットを脱いだ時には、ジョギングを終えた時のような心地良い疲労感が襲う。その日の夜はぐっすりと寝られるし、翌日手のひらや前腕、胸から脇にかけての筋肉痛に襲われるのもある意味思い出になる。
それでいて、操作はアクセル、ブレーキ、ハンドルの3つだけと至ってシンプル。ヘルメットやグローブといった装備は無料で貸し出してくれるところが多く(有料のフェイスマスク購入が必要な場合も)、長袖長ズボンに運動靴という出で立ちであれば、手ぶらで参加することができる。
ただやはり、カートが休日のレジャーとして人気を誇っているかと言われれば、そうではないという体感がある。もっとも、モータースポーツ好きでさえも、誰もがカートを身近なレジャーとして捉えているというわけではないだろう。ではどうすればカート人気が高まるのだろうか?
それについて改めて考える契機となったのが、昨夏にmotorsport.comの編集部員で参加したカートイベント『Masters 4 stroke(M4カートレース)』だった。
■“とにかく1回”体験してもらえれば……
M4カートレースは「安全に楽しく走って全チーム笑顔でチェッカーを受ける」ことをコンセプトとしたレンタルカートのエンジョイレースで、motorsport.comは昨年7月に新東京サーキットで行なわれたレースに『Exgel motorsport.com』チームとして参加。大学時代にサークル活動としてレンタルカートを楽しんでいた筆者と、先日初めてカートに乗ったという編集部員に、スーパーフォーミュラ参戦中の佐藤蓮とF4ドライバーの野村勇斗というトップドライバーふたりがありがたいことにゲストとして加わり、4人体制でエントリーした。
この新東京ラウンドでは、我々のチーム以外にも多くのエントリーが集まり、実に31台という壮観なグリッドとなった。しかも初心者の割合も高く、レース前に行なわれたカートの乗降や基本操作に関する初心者向けレクチャーでは多くの参加者が競技長の周りに集まり、説明を聞き入っていた。
関係者に話を聞くと、このイベントには協賛企業が社内広報的な意味合いで参加しているケースも多く、そういった背景からも初心者が多いという。ただ1度レースに出た参加者はその魅力に取り憑かれ、「次回こそはタイムを削る」との意気込みでその後も積極的に参加しているという話も聞かれた。とにかく1度走ってもらえば、カートの良さが分かるはず……そう考えている者も少なくないようだが、その“1度”に踏み切ってもらうまでのハードルがいくつかあるというのもまた事実だろう。
ハードルとして挙げられるものはいくつかあるが、よく指摘されるのがアクセス面と金銭面。カート場は、4輪レースの大型サーキットほどではないにしても、土地や騒音の問題もあって公共交通機関で行きづらい場所に多いことは確か。またレンタルカートで遊ぶとなると、10分前後の走行で数千円かかることが多い。例えば「カートの走行は10分で3000円です」と聞くと、初めてカートを体験する人はぎょっとしてしまうかもしれない。
ただ、「アクセスが悪くお金もかかるからカート人気の向上は難しい」と断じてしまうのも、いささか乱暴だと思ってしまう。ディズニーランドのようなテーマパークだって、大人の趣味の代表格であるゴルフだって、最近流行りのキャンプだって、皆それなりに時間と労力をかけて現地に向かい、安くないお金をかけて楽しんでいるわけであって、アクセス面や金銭面はあくまでひとつの要因に過ぎず、それが全てではない。やはり、いかに多くの人に「カートで遊ぶこと」に価値を感じてもらうかが何より重要であり、そこは前述の「とにかく1度走ってもらえれば……」という部分にも繋がってくる。
■求められる「きっかけ作り」
以上のことを考えても、やはりカート人気を一層高めるために求められるのは「きっかけ作り」であると感じさせられる。例えモータースポーツファンであっても、ある日突然「カートに行ってみよう」と思い立つ事はそうそうないはず。何かのきっかけが必要なのだ。
もちろん、M4カートレースも間違いなくそのきっかけ作りに寄与していると言えるだろう。例えばゲストドライバーに会いに行くためにレース好きの友人同士で誘い合ったり、協賛企業の担当者がカート未経験者に声をかけたり。そういったところで様々“きっかけ”が生まれていると言える。
M4の場合、基本的な参加費は1チーム6万円となっており、例えば3時間耐久レースに6人でエントリーした場合、1人あたり1万円で30分の走行が楽しめる、ということになる。走行時間と金額だけを聞くと高く感じてしまいがちだが、1日を通してレースという“イベント”を楽しむことができると思えば、それはある種テーマパークなどと同じようなものであり、「カートは高い」という見方も変わるのではないだろうか。
テーマパークにしても、常にアトラクションに乗っているわけではない。友人と何気ない話をしながら列に並んだり、食事をしたり、パレードを見たりといった時間が大半になる。カートレースでもそれは同じで、セッションの合間には他愛もない話をしながら、レース中はチームメイトの戦況を見守ったり、ピット戦略の相談をしたり、チェッカーを受けたドライバーたちをハイタッチで出迎えたり……そういった非日常の体験を含めての価格だと考えれば、他のレジャーと比べても遜色ない“コスパ”を感じられるはずだ。Exgel motorsport.comチームのドライバーとして参加してくれた現役高校生の野村も「僕はディズニーランドよりカートの方が楽しいです(笑)」とはにかむ。
野村と同じくExgel motorsport.comチームからM4に参加した佐藤も、同イベントが費用やフォーマットの面でも非常に手軽なものになっていると評価しつつ、そういったイベントの開催に加え、モータースポーツのファンがカートの世界に“入りやすい”ような方法で宣伝ができれば、もっと多くの人々にカートを楽しんでもらえるはずだと考えている。
佐藤は次のように語る。
「レンタルカートは入口として手軽ですし、このイベントも少しの参加料でモータースポーツを体感できるという点で、すごく入りやすいイベントだと思います」
「あとはもっと、モータースポーツに興味がある人が入りやすいような宣伝ができれば、よりたくさんの人に楽しんでもらえるのではないかと思います」
「モータースポーツを見るのが好きで、自分も(カートを)体験してみたいとなった時に、やはり繋がりがないと入りにくいというのが現状です。周りに人に(カートを体験した)きっかけを聞くと、やはり友人の紹介が多いです。自分ひとりでも行ってみたいと思えるようなきっかけが必要だと思います」
■期待される『シティサーキット東京ベイ』のポテンシャル
そして、カート体験への新たな“きっかけ”となることが期待される施設が昨年末にオープンした。それが『シティサーキット東京ベイ』だ。
東京・お台場のパレットタウン跡地に作られたこのシティサーキット東京ベイは、EVカートをメインとした東京23区で唯一となるサーキットであり、ゆりかもめの青海駅直結、りんかい線の東京テレポート駅から徒歩2分と、抜群のアクセスを誇る。関東圏に住む人々はもちろんのこと、国内の遠方や海外からの観光客にとっても好都合な立地。先に述べたアクセス面の課題は、ほぼクリアしていると言っていいだろう。
東京都心という好立地で最新のEVカートが楽しめるということもあって、屋外カートコースの走行料金は7分で3500円~と、価格設定は他のカート施設と比較してもやや高めとなっている。ただ、初心者向けの4分間1500円というお手軽な走行枠も用意されている上、走行チケット購入者はEVカートのシミュレータが無料で遊べるようになっているなど、参加への障壁を下げたり“コスパ”を高めるための工夫もなされている。さらに今後も様々な企業等と手を組むことで、無料体験などのお得なキャンペーンを展開していきたいとしている。
そして何より注目されるのが、このシティサーキット東京ベイは適宜施設を増築し、例えばバーベキューやサウナといったカート以外のコンテンツを増やそうとしているという点だ。その根底にある考えについて、シティサーキットの総合プロデューサーである田村吾郎氏はこう語っていた。
「考え方としては、ふたつほどあります」
「まず、(友人や知人の)グループで5人10人と集まった時に、全員がカートに乗りたいわけではないことが多いと思います。もうひとつは時間軸の話で、カートは疲れるので何時間もずっと乗っていられるわけではない。そこにサウナやバーベキューがあると、エクスペリエンス(体験)が変わってきますし、1日中楽しむことができます」
カート好きやレース好きを増やさなければいけないフェーズにある今、「カートができる」施設ではなく「カートもできる」施設を作ることは大いに意義があるだろう。これらは先にも述べた「1日かけてテーマパーク的な非日常的を楽しむことでコスパの良さを感じる」ことにも繋がるし、付随するコンテンツが多ければ多いほど、レースに明るくない友人もカートに誘いやすいはずだ。
モータースポーツ人気の向上を目指し、様々な人々が奮闘し、頭を悩ませている昨今。モータースポーツを真のメジャースポーツとするためには、その魅力を誰もが気軽に体感できる「カート」というアクティビティをより身近なものにしていくという作業も不可欠となるだろう。
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みんなのコメント
レースをするなら直結です。30数年前に少しやりました。お金掛かります。運ぶ車、タイヤは直ぐに減る。
ワタシもヤマハのストックカートでSLのレース(ローカルでしたけど)に
ちょこちょこ出ておりました。
新東京は昔の四街道にあった時代から通ってましたし、近隣の茂原の
コースがまだ1コースしかなかった時にもよく走りました。
もう無くなりましたが茨城のサシマとか…
当時お世話になっていたショップが千葉にあったので、走りに行くのは
だいたいその周辺のコースになっちゃうんですよね。
さすがにカネが無かったのと、カートを保管する場所に困ってしまい
4年位やってやめてしまいましたが。(カートのフレームは意外と幅が広い)
でもカートやってて、サーキットのルールからエンジンのメンテナンスの
イロハまで、いろいろ勉強になりました。
必死にカウンターを当てつつ4輪ドリフトでコーナーを攻める…こんなことが
できたのは、後にも先にもカート時代だけですw