レクサスではこれまでCT、UXといったCセグモデルがあったが、ブランド上初めてのBセグモデルとして登場したのがLBX。今回、左ハンドル仕様のプロトタイプに富士スピードウェイで試乗したが、モリゾウ肝いりのLBXの真価とは!?
文/片岡英明、写真/ベストカー編集部、レクサス
レクサス「LBX」緊急試乗!! もう爆売れ確信!! 令和の「小さな高級車」は輸入車キラーだわ!
■都会的なレクサス初のBセグSUVがLBX
LBXのエクステリアは筋肉質でダイナミックなデザイン。ボリューム感のあるフェンダーや225/55R18サイズの大径タイヤがSUVらしさを引き立てる
レクサス初のBセグメントモデルとして送り出されたのがブランニューのプレミアムクロスオーバーSUV、「LBX」だ。2023年6月5日にイタリアのミラノでワールドプレミアを行い、熱い視線を浴びた。
エクステリアは、筋肉質のダイナミックなデザインだ。ボリューム感たっぷりのフェンダーや225/55R18サイズの大径タイヤを履いているからSUVらしい雰囲気も感じられる。
だが、隣に並べられていた新型レクサスGXのような土の香りはしない。というより、エクステリアからもインテリアからも都会的な香りが漂う。リアも低重心で、塊感を強く表現したデザインだ。
レクサスの新たな表情を見せるユニファイドスピンドルグリルは押しの強いデザインで、遠くからでも目立つ。また、切れ上がったヘッドライトの上にLEDのデイタイムランニングライトを引いていることもあり、精悍な印象が強められている。
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■ヤリスクロスをベースとしているが、上級感にあふれる
LBXのボディサイズは全長4419mm、全幅1825mm、全高1560mmでホイールベースは2580mm
L字型のキャラクターを引き、LEDによってワイド感と存在感を際立たせたリアコンビネーションランプも見どころのひとつだ。LBXはコンパクトサイズだが、上級のレクサス仲間と変わらない風格が感じられた。
最初に明かしてしまうが、LBXのパワートレーンやシャシーは、トヨタのTNGAプラットフォーム(GA-B)を進化させたものだ。似た性格のヤリスクロスも使っている。
LBXのボディサイズはヤリスクロスとあまり変わらない。スリーサイズは、全長4419mm、全幅1825mm、全高1560mmだ。全長はヤリスクロスより5mm長く、ホイールベースは20mm長い2580mmである。
ただし、世界をターゲットにしているから全幅は60mmも広い1825mmとした。また、全高は1560mmに設定しているが、日本仕様は立体駐車場に入れることを考慮してシャークフィンアンテナを取ってしまうようだ。
■同じBセグのSUV群がライバルとなる
今回は左ハンドル仕様のプロトタイプのLBXを短時間だったが、富士スピードウェイのショートサーキットで試乗することができた
LBXのボディサイズは、輸入車だとフォルクスワーゲンTロックと少し格下だが弟分のT-Cross、アウディQ2、イタリア車ではフィアット500X、フランス車ではルノーキャプチャーやDS3、シトロエンC3エアクロスSUVなどが直接のライバルに挙げられる。
日本車では日産のキックスやマツダのCX-3が同じクラスになりそうだ。だが、相手はレクサスだから直接のライバルにならないだろう。
LBXはサイズのヒエラルキーを超えた小さな高級クロスオーバーカーとして送り出された。キャビンはスポーティな味わいが基本だが、ラグジュアリームードにも仕立てている。
■LBXのインテリアはどうか?
LBXのインテリア。12.3インチのフル液晶メーターに9.8インチのセンターディスプレイを備えるLBXのインテリア
ドアトリムまで回り込んだ水平基調のインパネのドライバーの前には12.3インチのフル液晶メーターを配置した。大きなセンターコンソールの上段には9.8インチのディスプレイを組み込んでいる。ヤリスクロスと違って手触りのいいソフトパッドを多くの場所に張り込んでいるのも特徴のひとつだ。
ドアノブを握ってドアを開け、キャビンに滑り込む。ドアは電気信号で開閉させるe-ラッチシステムを奢っている。
全幅を広げた効果もあるのだろう。ドアの閉まる音も重厚だ。ドライバーの前に置かれたメーターは、とても見やすい。ヤリスクロスと同じかと思ったが、乗り込んでかなり違うことに気がついた。ステアリングの角度は違うし、着座位置も低いなど、ドライビングポジションはずっとスポーティだ。
スイッチは操作しやすいし、シフトレバーも手元で動かしやすい。さすがに後席は広いとは言えないが、170cmくらいまでの身長なら頭上にも膝もとにもミニマムな空間が残され、窮屈ではなかった。ラゲッジルームもそれなりの広さだ。
■搭載するパワートレーンは直3の1.5Lハイブリッド
LBXのパワートレーン。1.5L直3DOHC+モーターのハイブリッドを搭載
搭載するのは1.5Lの直列3気筒DOHCエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドである。これにアクアと同じようにバイポーラ型ニッケル水素電池を搭載した。
試乗したのはFF車で、前後のサスペンションはストラットとトーションビームだ。これに新構造のダンパーを組み合わせている。リアにモーターを搭載する4WDモデルは、リアサスをダブルウィッシュボーンとしている。
プロトタイプだったこともあり、ステアリングを握ったのは富士スピードウェイのショートコースだ。走り出すと、ヤリスクロスで気になった振動と不快なノイズが大幅に低くなっていることがわかる。
そしてアクセルを踏み込むと、シュンと伸びのいい加速を見せた。モーターならではの応答レスポンスのよさと滑らかさが際立っている。上級モデルにはパドルシフトも装備されているから、より気持ちいい走りを楽しめるだろう。ヨーロッパ勢と比べるとダイレクト感は少し薄いが、燃費のよさではライバルを圧倒だ。
■しなやかな足とリニアなハンドリングがLBXの魅力!
富士スピードウェイのショートサーキットで試乗したLBXだが、リニアなハンドリングと乗り心地のバランスのよさを筆者は指摘
サーキットを走ってもボディ骨格がしっかりしている。また、ロール剛性が高く、荒れた路面でも足がしなやかに動いた。装着タイヤはヨコハマ製のアドバンV61だったが、接地フィールがよく、上りのコーナーでもトラクションのかかりがよかった。
リニアリティの高いハンドリングも魅力のひとつだ。クイックな操舵レスポンスで、身のこなしも軽やかだから狙ったラインに乗せやすかった。スポーティな味わいに加え、ハンドリングと乗り心地の妥協点も高い。走りの質感が高いと言われるドイツ勢やフランス勢と比べても、ハンドリングの気持ちよさが光っている。
プレミアムカジュアルを売りにするLBXは、インテリアで5つの世界観を提案した。試乗した「COOL」は本革にウルトラスエードの組み合わせで、赤いステッチがアクセントだ。
展示車の「RELAX」はサドルタンカラーの上質なセミアニリン本革シートに美しい刺繍をあしらっている。これらで満足できない人にはオーダーメイドシステムが用意され、シート表皮だけでなくステッチ糸やトリムなども自由に選ぶことが可能だ。
LBXの販売価格は現時点では公表されていないが、ヨーロッパ勢と比べてもプレミアムコンパクトとしての資質は高いと思う。
■惜しかったのはボトムにとどまったインテリアの質感か……
筆者とレクサスLBX。質感の点では惜しかった面もいくつか指摘していた
だが、惜しかったのはサイズのヒエラルキーを超えると言いながら、インテリアや装備にグレードでの差があり、レクサス内でもボトムの質感にとどまっていることである。試乗したCOOLにはパワーシートやパドルシフトが装備されていない。
また、プレミアムを謳うなら、シートヒーターはもちろん、ベンチレーションシートも装備して欲しいところだ。ボンネットを開けると、ダンパーがついていないことにガッカリさせられた。
インテリアの質感と洒落っ気はDS3に遠く及ばないし、C3エアクロスSUVやT-ROCと比べると後席を割り切ったことがわかる。レクサスに期待するのは、トヨタ車では望めない上質感と走りの爽快感だ。
レクサスを名乗るなら、ボトムのクルマでも上級クラス並みに上質で快適性と安全性も高いことが価値基準のひとつになる。小さいクルマこそ投資を惜しまず、真剣に作らないとヨーロッパ勢を振り切ることはできないだろう。
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