一時はバッテリー電気自動車(BEV)の普及に及び腰とも評されていたトヨタ自動車。だがここにきて、そうした批判派もアッと驚くようなEV戦略を打ち出してきた。今回は、トヨタが公開した次世代BEVに関するこだわりの一端を紹介したい。
「ココロ揺さぶるBEV」をコンセプトに
「bZ4X」で世界に挑むトヨタ [トヨタbZ4X試乗記:その1]
自動車ファンならご存じの通り、トヨタがBEVに対して積極的になったといっても、それは欧州メーカーのようにBEV一辺倒を意味するのではない。トヨタは地域の実情に応じてプラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCEV)、そして通常のハイブリッド車(HEV)等、複数の技術を適材適所に採用し、カーボンニュートラルを目指して行く方針だ。
その上で、BEVに関しては今年5月に専任組織であるBEVファクトリーを立ち上げ、車両に関する技術開発はもちろん、新たな生産体制の構築から業務改革まで一体として取り組んでいく。なかでも注目は車両に関する技術開発で、2026年には現行の「bZ4X」等とはまったく別の次世代BEVを市場投入する予定だ。
トヨタはこの次世代BEVの特徴として、次世代電池の採用、航続距離1000kmの達成、電費世界トップ等々、登場まで3年とは思えない高い目標を打ち出しているが、クルマ好きとして期待大なのは「クルマ屋がつくるココロ揺さぶるBEV」というコンセプトを掲げている点だ。また、自社メディアでは「トヨタのBEVはコモディティにしない」とアピールしており、ともすれば味気ないフィーリングとなってしまう現状のBEVに強烈なアンチテーゼを放っている。
では、運転して楽しいBEVを実現するため、トヨタではどのような技術を開発しているのだろうか。まず、クルマを運転している感覚を高めてくれるのが「マニュアルBEV」。トランスミッションを持たないBEVでありながら、モーターの制御を工夫することで内燃機関(ICE)のマニュアル車と同じようにシフトレバーやクラッチペダル操作を再現しているのだ。しかも、ギアの選択次第で加速力が変化することに加え、上手に変速しないとショックが大きく出る機構まで備えている。もちろん、スイッチ一つで通常のATも選択可能とのことだから、ファミリーカーとしても躊躇なく購入できそうだ。
一方、BEVならではのシステムと唸らされるのが、その日の気分で自由に「乗り換えられる」クルマ。つまり、ソフトウェア次第で乗り味を大きく変えられるBEVの特性を活かし、TPOに応じてファミリーカーからスーパーカーまで走行特性を設定できるシステムを開発しているのだ。
トヨタでは実際に1台のBEVで小型ハッチバックの「パッソ」から、和製スーパーカーのレクサス「LFA」までを再現したプロトタイプを公開しており、複数台所有というクルマ好き庶民の夢が、EV化により実現できる可能性を示唆している。
>>>次ページ 操縦桿タイプのステアリングを拡大展開
操縦桿タイプのステアリングを採用展開
このほか、既にbZ4Xで実用化されているステアバイワイヤによる操縦桿タイプのステアリングも採用を拡大していくようで、機械的な連結部分がない特性を活かし、将来的には自動運転時にステアリングが格納されたり、左右好きな席で運転できたりするBEVが実現しそうだ。
さらに、走行性能に関しては、アイシン、デンソーなどトヨタグループの技術を結集した小型駆動システムを開発中。モーターはHEVの約40%、ギアトレーンは従来品から約53%、インバーターも同約58%の小型化に成功したとのことで、これにより、着座位置の引き下げ、室内空間の拡大、空気抵抗の低減、クールなルーフデザインなど多くの恩恵がもたらされるという。
以上はトヨタの次世代BEVに関するこだわりのごく一部。今後も、2026年に向け引き続き新技術が発表されるだろうから、トヨタからの発表に注目していきたい。
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みんなのコメント
純粋なマニュアルトランスミッションを積んだドライビングが楽しい車が欲しいんだよ。
物好きしか買わない