この記事をまとめると
■フェラーリでもっとも価値のあるモデルといえばそれは250GTOだ
「フェラーリ」と「ランボルギーニ」はガチライバル? 2社の気になる販売台数を比べてみた
■250GT SWBをベースに1962年から1964年までに39台が生産された
■フェラーリ250GTOはレースの世界で大成功を収めた、まさに歴史的な遺産だ
コレクターの誰もが憧れるフェラーリ250GTO
フェラーリのファン、そして何よりコレクターにとって、もっともバリューのあるモデルといえば、それは1962年から1964年にかけて生産され、コンペティションシーンで大活躍した、250GTOであることに異論を唱える者は少ないだろう。
その人気を絶対的なものとしている第一の理由は、もちろんレースにおける華々しい戦績で、さらにその流麗で機能美の象徴ともいえるスタイリング、わずかに39台が生産されたのみという希少性が、コレクターの心を常に刺激して止まないのだ。
つい先日、2台しか存在しないメルセデス・ベンツの300SLRプロトタイプ、いわゆるウーレンハートクーペが、オークションで約189億円という落札価格で売却されたというニュースが世界を駆け巡ったが、この250GTOも、一時は当時の邦貨で58億円相当の価格で落札。オークションにおける自動車の落札価格で最高の数字を記録したことは、いまも記憶に新しい。
250GTOのベースとなったのは、1959年にデビューした250GT SWB(ショートホイールベース)だった。それまでの250GT TdF(ツール・ド・フランス)のホイールベースを200mm短縮し、コーナリング性能をより高めた250GT SWBはロード用とレース用の両モデルが製作され、後者はアルミニウム製の軽量ボディを与えられた。
搭載エンジンもまたそれまでの3リッターV12を継承しつつも、250TRで得たノウハウをもとに、吸気ポートやコイル式のバルブスプリングを採用。最高出力は280馬力を発揮したと記録されている。組み合わせられるミッションは4速MT。わずか955kgの車重で266km/hの最高速を達成するとともに、1960年からさっそくそれは実戦投入され、優秀な戦績をフェラーリに与えたのだった。
レーシングシーンでの活躍が250GTOの価値を上げた
だが、続く1962年シーズンのマニファクチャラーズチャンピオンシップは、連続する12カ月間に100台以上の生産を義務付けたGTで競われる新たなレギュレーションとなり、フェラーリはここでこれまでの250GT SWBの進化型という説明でニューモデルの公認、すなわちオモロガートを得ることに成功する。それこそが250GTOであり、車名の末尾に添えられたOの文字は、このオモロガートを意味するものにほかならなかった。
とはいえ、実際に誕生した250GTOは、250GT SWBとはまったく異なるといってもよいモデルだった。全長は165mmも延長され、エアロダイナミクスをさらに向上させるために風洞実験もデザイン時には採り入れられた。リヤエンドは垂直にテールを切り落とす、コーダトロンカと呼ばれる手法。ボディはごく薄いアルミニウム製で、サイドウインドウとリヤウインドウにはプラスチック製樹脂が用いられている。全高は同様の比較で90mmも低下した。
搭載されたエンジンは、やはり3リッターのV12だが、バルブの大径化を始め、クランクシャフト、コンロッド、ピストンなどは再設計。また、カムプロフィールはテスタロッサのそれに等しい。エンジンブロックやシリンダーヘッドはアルミ合金製だが、さらに軽量化が可能なパートにはマグネシウム合金も使用されており、潤滑方式もドライサンプとなった。また、ギヤボックスが5速MTとなったことも250GTOでの大きな変化といえるだろう。注目の最高出力は、ストックで300馬力を発揮したとされる。
250GTOは、初めて挑んだ1962年のル・マン24時間レースで総合2位、GTクラスで1位の成績を残したことを始まりに、世界各国のレースで、その圧倒的な戦闘力を発揮していった。1964年シーズンの前にはそれまでのGTOを大幅にモディファイした250GTO/64も登場。それは3台が製作されたほか、1963年モデルをベースに1964年仕様へとモディファイされた63/64仕様も存在する。
フェラーリ250GTO。それは1960年代のフェラーリを象徴する、そして創始者のエンツォ・フェラーリがもっとも重要なビジネスと考えていたレースの世界で大成功を収めた、まさに歴史的な遺産にほかならないのである。
それがオークションに出品されることも珍しく、そのたびに高額な落札価格が大きな話題となるのも当然の話なのだ。
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