創立60周年を祝うクラシックモデルだけの公式ツアー
ランボルギーニ創立60周年を祝う数多くのイベントが開催されている2023年、美しいロケーションを愛車で巡る公式ドライブツアーも60周年を祝う特別なツアーに。9月にイタリアで開催されたポロストリコ(クラシックモデル)編に参加、その様子をお伝えします。
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マニア垂涎のクラシックモデルが勢揃い
ところはイタリア随一のスパークリングワイン産地として有名なフランチャコルタ。趣のあるヴィラタイプのホテルだった。あたり一面にシャルドネの畑が広がり、遠くには大きな湖がキラキラと輝いている。その向こうは険しい山岳地帯でさらに北へと進めばスイスやオーストリアまで行き着く。
はるばるやってきたのは、ランボルギーニ社の創立60周年を祝う公式ドライブツアーのポロストリコ(クラシックモデル)編がこのホテルを起点に開催されるからだった。最新モデル編は5月に企画されていたが、おりからの天災で中止されていた。
午後遅くにホテルへのチェックインを済ませ、モデナのトップモータース・サルヴィオーリから届いているはずのミウラP400SVを確認するべく専用のパーキングにおりてみれば、そこには60年分の宝物がひしめいていた。
台数は決して多くない。けれども参加車両は(いい意味で)一癖も二癖もある個体ばかり。マニアにとってはたまらない仕様の揃い踏みである。
激レアなイオタ・レプリカからヴァンヘイレン仕様まで
なかでも目についた個体を紹介しておこう。まずはゼッケン1、スイスからやってきた世界一のランボルギーニコレクターが持ち込んだしっとりとしたシルバーの350GTだ。ランボルギーニの市販第1号モデルが350GT、ということ自体はファンならば常識だろう。総計120台余りが生産されたが、この個体はなんと#17002で最初期の個体。#17004から始まる顧客向けよりも若く、例えばフロントグリルの形状が“市販”モデルとは異なっている。また、エンブレムが1964年に生産された最初の14台にのみ採用された2トーンカラーであることも珍しい。
ゼッケン5はご存じミウラSVJタルガ(スパイダー)。#4808のミウラSをベースに70年代末になって作り替えられたもので、イオタルックにオープンスタイル、ワイドフェンダーという人気アイテムてんこ盛り。1981年のジュネーブショーにて新経営陣のもと再出発したランボルギーニブースに、カウンタックLP400Sハイボディ(シリーズ3)やLM002などと共に展示された個体である。
ゼッケン8、鮮やかなブルーのカウンタックLP400は日本人オーナーの所有で、つい昨秋にポロストリコでフルレストアを終えたばかり。いわば新車同然の個体だったが、珍しいのは色がディノブルーというマラネッロ色であったことだけじゃない。なんとこの個体のボディパネルはアルミではなくスティール! しかもルーフには400の特徴であるペリスコープが見当たらない! 日本にはもう一台スティールパネルの400が存在すると言われている。謎に満ちたレア中のレア物である。
ゼッケン15は公式イベントにはあり得ない“改造ミウラ”。前述のSVJタルガのようなワイドフェンダーにシャコタン気味で変わったタイヤ&ホイールを履いている。どうして参加が許されたのだろう? スタッフに聞くと「ポロストリコでレストアを終えたばかりだから」。いやいや、その答えじゃナゾは一層深まるばかり。答えはこうだ。今は亡きエディ・ヴァン・ヘイレンの愛した改造ミウラだから。有名人が好みに仕立てた個体ということで特例的に“ヴァンヘイレン仕様”でのレストアが認められた。ちなみにこの個体のエグゾーストノートはヴァンヘイレンの名曲「パナマ」の間奏に挿入されている。
ゼッケン16のカウンタックLP400Sはミニカーで見たことのある人も多いだろう。1981年の5月に開催された39回モナコF1 GPのペースカーとして活躍した個体で、以来、ノーレストアで現在に至っている。8月に行われたペブルビーチ・コンクール・デレガンスにも出展されていた個体だ。モナコGPとランボルギーニの付き合いは古く、なかでも有名なシーンがマルツァルのデビューランであろう。ちなみにカウンタックのペースカーは39回のLP400Sのみならず40回、41回でもLP500Sが使用されている。
お隣、ゼッケン17のディアブロVTは1995年と96年にPPGインディカーシリーズにてペースカーとして使用された個体だ(もう1台ゴールドがあった)。イオタフードやロールゲージ、牽引フックなどオリジナルVTとは異なる仕様で、当初は600psのイオタエンジンも積まれていたらしい。そのエンジンは残念ながらラグナセカで使用中に壊れ、急遽、ノーマルエンジンに積み替えられて現在に至っている。イタリア本社へ一旦戻され、そこから新車としてウォルター・ウルフの会社へ販売されたという。
ゼッケン21もまた有名な個体。今はもう存在しない完全なるイオタ・レプリカだ。英国人オーナーがクラッシュしたミウラをベースに13年の歳月をかけてイオタ風に復元した。
ゼッケン23、オレンジのミウラSVは一見フツウのSVに見えるが、ディテールを見ると違いに気がつく。フィン形状のパーツ、フロントやリアのカウル、ドアのルーバーが全て“丸められている”。これはドイツの安全法規を満たすために施行されたスペシャルパーツである。
ゼッケン25のカウンタックは元トヨタのデザイナー氏が乗ってきた個体で、珍しいデザートカラー。サウジアラビアの王族が最初のオーナーだった。駱駝色の猛牛というわけだ。そしてゼッケン27のディアブロ6.0SEは最後にラインオフした個体で現在、ランボルギーニが所有する。
風光明媚な北イタリアを巡る珠玉のクラシックモデル
最初のランボルギーニからディアブロの最後まで、ランボのクラシック史が走馬灯ならぬ走牛灯のように蘇るマニア垂涎のラリーが始まった。フランチャコルタを出発し、北イタリアの湖水地方を周遊しつつ、ヴェローナからモデナ、そしてサンタアガータ・ボロニェーゼ本社へと至る2泊3日、全行程およそ600kmのツアーだ。
日本からの参加車両は4台。われわれの駆るミウラSVとブルーのカウンタック、そしてディアブロ2台だ。ラリーのようにコマ図も用意されているが、基本的には3グループに分けての編隊走行で、地図を見なくても行けるようにドカティのプロライダーが牛飼いよろしく見事に誘導する。町あり、湖岸あり、そしてワインディングありの風光明媚なコースを主体としてそれぞれのドライブを楽しんだわけだが、われわれのチームは2日目の朝、ちょっとしたトラブルに遭った。
ヴェローナの素敵なアートホテルをスタートしてものの数分でいきなりエンジンがストール。エンジンどころか電気がまるで通らず、何も動かなくなった。しばらく待っているとオフィシャルのサービスチームが到着し、数人がかりで原因を調べ始める。その間、代車として最新のウラカンテクニカもすぐさま用意されて近くにスタンバイ。修理に時間を要するなら乗り換えてとりあえずランチスポットまで向かうという按配だ。
これまた一興、ウラカンへ乗って出かけようとしたその瞬間、ミウラが息を吹き返した。ミウラで行けという。途中でまた止まったらどうしようと不安もあったものの、クーラーの効くウラカンを諦めミウラに乗り換える。半時間ばかり止まっていただろうか。当然ほかの参加者たちはかなり先だ。
ウラカンが次の休憩ポイントまで引っ張ってくれるという。ありがたい。そこからワインディングルートに入るとウラカンが俄然、かっとび始めた。いや、正直に言おう。われわれがミウラでウラカンを“突いた”のだ。プロの操るウラカンはミウラに迫られてどんどんペースを上げていく。2台は信じられない速度でワインディングロードを駆け抜けた。
似たようなトラブルは数台、特にミウラに多かったようで、それでも全車が無事にモデナへゴールした。最終日は本社工場での記念セレモニー。次は70周年だろうか。互いの息災を祈りつつ、仲間たちとの再会を誓ったのだった。
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