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ビートルズやボブ・ディランも選んだサルーン オースチン・シアライン ヴァンデンプラ・プリンセス(1)

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ビートルズやボブ・ディランも選んだサルーン オースチン・シアライン ヴァンデンプラ・プリンセス(1)

ザ・ビートルズやボブ・ディランも選んだ

ロールス・ロイス・ファントムVは、今でもスタイリッシュで紳士的。対して、4.0Lエンジンのオースチン・シアラインとヴァンデンプラ・プリンセスは、ちょっと垢抜けない派手さのような雰囲気を漂わせる。

【画像】適度な風格 オースチン・シアライン ヴァンデンプラ・プリンセス 同時期のモデルたち 全117枚

1940年代後半から20年間も作られたこの2台は、オーナー自ら運転するフラッグシップ・サルーンとして誕生。中古車は華やかなウェディングカーとして活躍したが、オフロードでのストックカーレースへ投じられ、無惨な最期を遂げた例も多い。

ザ・ビートルズは、世界的な人気を掴み始めた初期に、プリンセスへ乗っていた。ボブ・ディラン氏も、英国でのライブツアーの移動手段に選んだ。とある著名政治家がプロポーズした際に乗っていたのも、ロールス・ロイスではなくプリンセスだった。

どんなシーンにも対応する、強い印象のボディが与えられ、英国王室は1952年に2台を調達。生産終了を迎える1968年にも、2台が納入されている。

それ以外にも、王室では5台が所有されていた。1974年にアン王女が誘拐未遂事件へ巻き込まれた際に乗っていたのも、プリンセスだった。

オースチン・モーター社を創業した、レナード・ロード氏が抱いた野望がこのモデルの始まり。強力な6気筒エンジンを積んだモデルで、アメリカ市場を戦いたいと考えていたようだ。

プアマンズ・ベントレーと揶揄されたオースチン

グレートブリテン島中部のロングブリッジに拠点を構えたオースチンは、その頃、大型サルーン作りに長けていた。1930年代には18や20というモデルをリリース。英国のRAC規格で28馬力をうたう6気筒エンジンも投入され、一定の成功を残していた。

プアマンズ・ベントレーと揶揄されることもあった。ロードもそんな評価を耳にしていたが、意欲的な姿勢は変わらなかった。1946年には、コーチビルド・ボディを手掛けるヴァンデンプラ社を買収。彼の挑戦心には、一層火が付いたといっていい。

そこで生まれたのが、当時1278ポンドと高額だったA110型のシアライン(DS1)と、A120型のプリンセス(DS2)。前者は、ロングブリッジの工場でシャシーからボディまでを製造。後者は、ヴァンデンプラ社がボディを担当した。

ちなみに、プリンセスというモデル名は、その頃話題を集めていた若き王族、プリンセス・エリザベスとプリンセス・マーガレットにちなんで決められた。

シアラインのスタイリングを手掛けたのは、ディック・ブルジ氏。アルゼンチン出身で、ランチアでの経験を持ち、1929年に渡英した。シャープなラインと複雑なリア回りが特長で、48Wと明るいルーカス社製P100ヘッドライトが前方を照らす。

シャシーはボックスセクションで、ホイールベースは3023mm。長大なルーフパネルは、一節では、当時の英国車として最大の一体型プレス部品だったとか。

より優雅な容姿が目指されたプリンセス

対して、プリンセスのスタイリングは、ヴァンデンプラ社の技術ディレクター、ジョン・ブラッドリー氏が担当。ヘッドライトにフェアリングが付き、フェンダーはボディと一体にされ、より優雅な容姿が目指された。

スチールとアルミニウムが組み合わされ、深い艶を生み出すべく、塗装は合計14回。リアタイヤにはスパッツが備わる。

シャシーは2台で共有し、メカニズムもほぼ同一。2t前後の車重を受け止めるため、オースチンとして初めて油圧ブレーキが装備された。

フロント・サスペンションは独立懸架式。コイルスプリングとウィッシュボーンに、アームストロング社製のレバーアーム・ダンパーという組み合わせ。リアはリジッドアクスルで、半楕円リーフスプリングに、同じくレバーアーム・ダンパーが組まれた。

メカニズムを滑らかに保つための、グリスポイントは26か所と多い。1600km毎の注油が必要で、1940年代の基準でも手間のかかる仕様だった。そこで電動油圧式ジャッキをシャシーに内蔵。前後のタイヤを簡単に浮かせられ、整備性を高めていた。

キャビンには、まだ目新しかったヒーターとラジオを搭載。ウォールナットとレザーを贅沢に用いたインテリアは豪華で、オースチンとしては最も複雑な仕立てといえた。

発表は、1947年のスイス・ジュネーブ・モーターショー。当初のエンジンはオーバーヘッド・バルブの3.5L直列6気筒で、プリンセスにはトリプルキャブレターが載り、シングルキャブのシアラインより10ps強力だった。

フォーマル・サルーンとしての地位を確立

ところが、1947年の末に4.0Lへ変更。同時にシアラインとプリンセスの型式も、A110とA120から、A125とA135へ更新されている。英国の道路税制度の切り替えに沿ったものだった。

この直列6気筒ユニットは、GM傘下のトラックメーカー、ベッドフォード社製エンジンの設計へ強い影響を受けていた。だが、加圧潤滑システムやベアリング交換を比較的簡単にした構造を持ち、カムシャフトの改良などが施され、独自の特徴も備わる。

アルミ合金製でフィンの付いたオイルサンプや、ノイズを軽減するロッカーカバー、クランクの免震ダンパーなども採用。サルーンに適した上質さも目指されていた。

1949年には、ホイールベースを300mm以上伸ばし、3353mmとしたシアライン・リムジン(DM1)が登場。合計700台がラインオフし、上級モデルの選択肢が限られた英国だけでなく、海外でもフォーマル・サルーンとしての地位をある程度確立していった。

だが、肝心のアメリカでは充分な結果を残せなかった。それが、その後のブランドの運命を左右したといっていいだろう。

標準ホイールベースのシアラインは、1948年から1954年までに約7000台がラインオフ。競争相手の少なさと、ベントレーの半分以下という価格設定のおかげで、堅調に売れたといっていい。

シアライン終了後は、スタイリングで勝るプリンセスが、1968年まで需要を受け持った。シャシーの製造自体も、ヴァンデンプラ社で賄われた。

この続きは、オースチン・シアライン ヴァンデンプラ・プリンセス(2)にて。

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