日産ノートに上級モデルのノートオーラが追加された。ノートはこの2車を合計したシリーズで月販台数1万2000万台程度の売れゆきを目標にしているという。近年、月販1万台オーバーという販売台数は、販売トップのヤリスシリーズなどに並ぶ台数でかなり高い目標といえそうだ。
オーラが加わったことで販売目標がさらに高くなったノートシリーズ。そこまで強気の販売目標を設定した理由は何なのか? そして、ノートシリーズはヤリスの牙城を崩して販売首位に立つことはできるのか?
ただの「ノート上級版」じゃない!!? 日産 ノートオーラの走りを試す
文/渡辺陽一郎
写真/NISSAN、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】ノートが再び販売台数年間No.1を獲るオーラが見えるのか?占ってみる
■2018年に達成した登録車販売台数1位を新型でも実現! という日産の思い
最近、話題の新型車といえば、2021年6月15日に発表されたノートオーラだ。日産は「発売は本年の秋」としているが、販売店では6月上旬から予約受注を行っている。一部の店舗にはノートオーラの試乗車も配置され、実質的に販売している状態だ。
そして販売店によると「納車の開始は2021年10月~11月頃」という。「本年の秋」という発売は、納車の開始を意味する。
ノートオーラのベースになる現行ノートについて、日産は2021年2月に「発売から1カ月で月間販売目標の2.5倍となる2万台以上を受注」と発表した。ノートの1カ月の販売目標は8000台で、その2.5倍だから2万台になる。
日本自動車販売協会連合会のデータでは、ノートオーラの登録台数はノートに含まれ、シリーズ全体で示される。ノートオーラの販売目標は3000~4000台と思われるから、ノートも加えると、最大で1万2000台前後が目標になりそうだ。
ノート「オーラ」は6月に発表されたが、発売は秋の予定。ノートと合わせ1万台オーバーの販売で、久々の販売台数1位獲りを目指す!!
ちなみに先代ノートには、ノーマルエンジンも用意されたが、現行型は廃止されてハイブリッドのe-POWERのみだ。開発者は「ノートとノートオーラは別の車種と考えているが、販売台数で捉えると、ノーマルエンジンの代わりにノートオーラを加えたと見ることもできる」という。
そして先代型の販売比率では、e-POWERが70%、ノーマルエンジンは30%程度だった。これをそのまま現行型に当てはめると、ノートの月間販売目標が前述の8000台(ノートシリーズ全体の70%)であれば、ノートオーラは3400台(ノートシリーズ全体の30%)と見積られる。
2代目ノートのマイナー時に追加されたe-POWER仕様。ハイブリッドで出遅れていた日産が捲土重来の一手として市場に投入。日産の読みは当たり、見事2018年の登録車販売No.1を奪取した
ノートの8000台とノートオーラの3400台を合計すれば、1カ月当たり1万1400台だ。この数字は先代ノートが小型/普通車の販売1位になった2018年における1カ月平均登録台数の1万1360台とほぼ等しい。
つまり日産としては「2018年のノート1位」をノート+ノートオーラで再現させたいわけだ。しかも2018年に小型/普通車販売1位を獲得した時のノートは、e-POWERと価格の安いノーマルエンジンだった。しかし現行型は、e-POWERとさらに価格の高いノートオーラだから、先代型の組み合わせよりも多額の利益を生み出せる。
■リーマンやゴーンショックで国内販売台数は下降線。今や5位が定位置に
それにしてもなぜ日産は、ノートと上級のノートオーラを用意して、大量な販売をねらうのか。この背景には、日産の国内販売が抱える切実な事情がある。
国内におけるメーカーの販売ランキングを振り返ると、2007年頃まで、日産はトヨタに次いで安定的に2位だった。ところが2008年に発生したリーマンショックによる世界的な不況の影響で、2011年以降の日産は、国内に投入する新型車の数を大幅に減らした。2年に1車種程度まで落ち込んでしまう。
その結果、設計の古い車種が増えて、国内販売も急速に減少した。2012年の国内販売ランキングは、1位:トヨタ、2位:ホンダ、3位:ダイハツ、4位:スズキ、5位:日産であった。2位から一気に5位まで転落している。
この後、販売ランキングの2~4位は年に応じて入れ替わったが、5位は日産の定位置だ。15年ほど前まで2位だった日産が、いつまでも5位に留まるわけにはいかない。
売れゆきと販売ランキング順位を高めるには好調に売れる商品が必要だが、前述のとおり日産の新車開発は冷え込んでいる。日本では5ナンバーサイズを中心にしたコンパクトな車種が売れ筋だが、日産では、堅調に売れていたティーダやキューブを廃止した。
日産はリバイバルプランの切り札として、サニーを改めティーダを発売。しかし思うように売れず、2代目ノートに「メダリスト」なるグレードを設定してティーダの後継とした
マーチは発売から10年以上を経過してサッパリ売れない。多額の投資をせずに、効率よく売れゆきを伸ばせる車種が求められていた。
■ノートは万能選手? メダリストに次いで、日産の車種統合意図のオーラが見える
そこで生み出された戦略が、日産の小型/普通車で最も多く売られるノートの有効活用だ。例えば1カ月に1万台販売される人気車をベースに派生車種を開発すれば、その売れゆきがベース車の20%でも、2000台の上乗せになる。
不人気車をベースに派生車種を開発して、人気の回復を試みるのは危険だが、好調に売れるクルマの派生車種なら成功する可能性も高い。それがノートオーラだ。今の日産にとって、絶対に成功させねばならないプロジェクトに位置付けられる
この意気込みは、ノートとノートオーラで、装備と価格の違いを比べるとよく分かる。ノートオーラG(261万300円)の価格は、ノートX(218万6800円)に比べて42万3500円高いが、ノートオーラGは装備も充実させた。
ハイビーム時に対向車の眩惑を抑える機能を備えたLEDヘッドランプ、後方の並走車両を知らせる後側方車両検知警報、車両の周囲を上空から見たような映像で表示するインテリジェントアラウンドビューモニターなどは、ノートXではすべてオプション設定だが、ノートオーラでは全車に標準装着される。
オーラには単なるノートの上級版というよりは、アリアにも通じる新しい日産のアイデンティティを余すことなく投入したいという思いも感じる
これらのノートオーラに標準装着される装備を価格に換算すると、総額は約26万円だ。そうなるとノートオーラで上級化された内外装、3ナンバーサイズのボディ、動力性能/走行安定性/静粛性の向上は、約42万円から26万円を差し引いた16万円で達成されている。
そうなるとノートオーラは、ノートの上級モデルでありながら、価格はノートと同等かそれ以上に割安だ。前述のとおり大量に販売して、ノートシリーズで国内市場を支える必要があるから、ノートオーラは価格にも魅力を持たせた。
それにしても、どのようなユーザーがノートオーラを購入しているのか。販売店に尋ねると以下のように返答された。
「ノートオーラは、ノートでは物足りないと感じるお客様が買われている。コンパクトカーのお客様であれば、先代ノートに加えて、質感の高かったティーダやキューブからの乗り替えが多い。またシルフィやティアナなど、セダンのお客様も購入されている」。
今の日産では、セダンの車種数も大幅に減った。シルフィはすでに生産を終えている。ノートオーラは5ドアハッチバックボディのコンパクトカーだが、上質な内外装により、セダンに近い価値を見い出しているユーザーもいるようだ。
ゴーン体制下の日本市場軽視が響き、新車は平均2年に1車種のスローペース。その影響で日産車全体の高齢化が進行。かつての売れっ子マーチも、タイ産となった現行型の販売は低調で、ノートが順調に売れれば退散か
先代ノートは写真上のマーチとプラットフォームを共有した兄弟車だった。しかし、ノートはもともとグローバルモデルであったこと、e-POWERで復活したことで、新型はプラットフォームも新世代に昇格。ライバルに対抗可能な戦闘力を身に付けた!
以上のようにノートオーラは、ティーダやキューブからティアナまで、日産が廃止したさまざまな車種の穴を埋められる商品に仕上げている。ノートをベースに開発できるコスト対応のしやすさも含め、ノートオーラは今の日産を救う商品だ。
■「ヤリス」強し。日産念願のランキング1位が獲れるか! といえば厳しい状況だ
ノートオーラが「小型/普通車の登録台数1位を獲得できるか」というテーマで考えると、一番の課題としてヤリスがある。日本自動車販売協会連合会では、ヤリス+ヤリスクロス+GRヤリスの合計台数を「ヤリス」として公表しており、その台数は2021年1~6月の1カ月平均で1万9852台だ。
昨年発売されたヤリスシリーズは絶好調! シリーズ計で月販約2万台近く売れている。ヤリスとヤリスクロスはノートとオーラとは異なるベースを共用する兄弟で、各々のモデルが月1万台近くとよく売れている
ボディタイプ別の内訳は、ヤリスの1カ月平均が約9800台、ヤリスクロスは9200台、残りの800台少々がGRヤリスになる。ヤリスはコンパクトカー、ヤリスクロスはSUVになることから別々に算出すると、両車とも1万台以下だ。ノート+ノートオーラが前述の1万1400台登録されると、小型/普通車の販売1位になる。
しかし実際に公表されるヤリスの登録台数は、シリーズ全体の合計台数だから、ノート+ノートオーラが追い抜くことは相当に難しい。
ではノートとオーラの天下獲りは夢で終わりか? と言えばそうでもない。7/19発売の新型アクアがフィーバーすれば、ヤリスは食われる可能性も!? 日産得意の隙間狙いだが、今のノートの売れっぷりから見ればそれも夢ではないか?
もっとも見方を変えると、販売台数とは、所詮そういうものだ。ヤリスが1位になる背景には、コンパクトカーとSUVを一緒にする矛盾が潜む。
N-BOXの販売は絶好調だが、同じ価格帯のフィットが影響を受けて伸び悩み、2021年1月~6月の販売ランキングでは、ホンダはトヨタ、スズキ、ダイハツに抜かれて4位であった。「N-BOXが売れている」と喜べる状況ではない。
「販売ランキング」の結果は気になるが、参考程度に留め、ご自分でライバル車を含めた試乗車を乗り比べて判断していただきたい。
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