エンジンとのマッチングはATの方が良さそうだけど、そこをあえてMTで乗るのが“粋”ってもんだ!
後席も快適なフル4シーターハードトップ
「クラウン最後の2ドアHTモデルを5速MTで愉しむ」2.8Lシングルカムの5M-EUが味わい深い!【ManiaxCars】
4ドアセダンに4ドア/2ドアハードトップ、ワゴン、バンと、5つのボディバリエーションを誇ったS110系クラウン。6代目にあたるこのモデルは1979年9月に発売され、2ドアハードトップが最後にラインアップされた型となる。
その2ドアハードトップのグレード展開は、新開発2.8L直6SOHCの5M-EU(145ps/23.5kgm)を初めて搭載した最上級ロイヤルサルーン、2L直6SOHCのM-EU(125ps/17.0kgm)を載せたスーパーサルーンとスーパーエディション。今では考えられないけど、ロイヤルサルーンにも5速MT(と4速AT)が設定されてたことに時代を感じずにはいられない。
先代に搭載されていた4M-EU型エンジンのボア径をφ80.0mmからφ83.0mmに拡大し(ストローク量は85.0mmで同じ)、排気量を2759ccとした新開発の5M-EU型を初めて搭載。後にツインカム化した5M-GEU、ストローク量を91.0mmに延ばし3L化を図った6M-GEU、さらに4バルブヘッド仕様とした7M-GEUや、そのターボ版7M-GTEへと発展した。
高級車らしく、ウッド製シフトノブを持つ5速MT。ギヤ比は1速から3.287、2.043、1.394、1.000、0.853で、最終減速比は3.909となる。
その存在を知りながらなかなか足を運べず、4年越しにやっと実現した取材ってこともあって、北海道でこの2ドアハードトップロイヤルサルーンに改めて対面できた時、そりゃあ気分もアガった。
前後バンパーやサイドモールで全長と全幅を拡大しながらも、基本は5ナンバーサイズのボディ。それでも、直線基調のスタイリングにハッキリした顔立ち、各部に「これでもか!」とばかりに配されたメッキモールなどが混然一体となって強烈に放つのは、代が新しくなるにつれて確実に薄まりつつある“クラウンとしての風格”だ。この時代のクラウンはひと目でそれとわかる個性と存在感があったし、さらに言えば2ドアハードトップは流麗さまで身につけていた。
ピラーレスハードトップで、俗に“オペラウインドウ”と呼ばれるリヤクォーターウインドウを備えているのが2ドアモデルの特徴。オプション設定されていた2トーンボディ色を選ぶと、オペラウインドウやリヤウインドウ周りを含むルーフ後半を革張りとするランドートップ仕様になった。
ダッシュパネルやステアリングホイール、シフトノブなどにウッドがあしらわれたラグジュアリーなインテリア。さすが最上級グレードのロイヤルサルーン、オートデュアルエアコンやAM/FM電子チューナー録音機構付きカセットデッキなどを標準装備する。メーターパネルの中央にはスピードメーターが構え、右側にタコメーター、左側に水温計と燃料計のコンビメーターが並ぶ。
運転席パワーシートは前後スライドと座面の高さ調整が電動、リクライニングはレバーを引いての手動となる。また、ランバーサポートも備わり、助手席と合わせてヘッドレストは上下に加え前後の調整もできるようになっている。
座面中央部の盛り上がりで3人掛けは厳しいけど、天地方向、前後方向に余裕があって、大人2人なら快適に乗れる後席。スピーカーボード中央には、クールボックス機能も持ったリヤエアコン吹き出し口が設けられる。
また、センターコンソール後端には、後席から操作できるデュアルエアコンとオーディオのスイッチ、シガーライターも用意。4ドア車に全く見劣りしない装備や快適性が確保されるあたり、「さすがクラウン!」と感心するしかない。
5M-EU型エンジンは低中速トルクがたっぷりあるのは良いとして、実にのんびりしたフィーリングだ。はっきり言って、アクセル操作に対するピックアップは鈍いし、直6らしいスムーズさこそ感じられるものの、吹け上がりだって重い。ガンバって5000rpmまで回そうとアクセルペダルを踏み込んでみたけど、タコメーターの針がそこに到達するまでの時間は、冗談でなく永遠に思えるほどだった。
もっとも、速さを求めるクルマじゃないし、そこまで回さなくても走りには満足できる。2000~2500rpmでシフトアップして、トルクに任せて走るのがロイヤルサルーンには相応しい。たしかに5速MTのタッチ自体は悪くないし、ギヤもカッチリと確定してくれるけど、クルマというかエンジンというか、積極的なシフトチェンジを拒むような感じ…と言ったらいいんだろうか。そもそも回りたがらないエンジンで回す必要もないとなれば、ここは4速ATを選ぶのが絶対に正解だと思う。
それでも5速MTが設定されてたのは、MTに乗り続けてきたことで2ペダルATでの運転に不安を覚えるオーナーが当時、一定数存在したから。事実、80年の国内におけるMT/AT比率はまだMTの方が高かったわけだし。そういうオーナーたちに対するトヨタの救済措置が5速MTの存続だったんだけど、それも81年のマイナーチェンジで見直され、ロイヤルサルーンに残されたのは4速ATだけとなった。
クラウンとしては最後の2ドアハードトップで、しかも前期型にしか用意されなかった5速MT車。登場からちょうど40年を経た今、その存在が旧き佳き時代を思い出させてくれるのだ。
■SPECIFICATIONS
車両型式:MS112
全長×全幅×全高:4860×1715×1410mm
ホイールベース:2690mm
トレッド(F/R):1430/1400mm
車両重量:1475kg
エンジン型式:5M-EU
エンジン形式:直6SOHC
ボア×ストローク:φ83.0×85.5mm
排気量:2759cc 圧縮比:8.8:1
最高出力:145ps/5000rpm
最大トルク:23.5kgm/4000rpm
サスペンション形式(F/R):ウィッシュボーン/リジッド
ブレーキ:FRディスク
タイヤサイズ:FR185SR14
TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎
取材協力:ボディショップケイ 北海道札幌市東区東雁来8条2-8-20 ☎011-791-5915
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みんなのコメント
リジッドサスだったり、リヤヘッドレストが固定式だったり、トランクキーがむき出しなのは時代かな。
でも2000ならともかく2800だからやっぱり優雅にA/Tがよろしいかと。
こんなM/T個体もかなりレアなのは承知。