11月9日に発表されたヤマハの新型「XSR125 ABS」は、これまでなかった完成度の高い小排気量スポーツバイクだった! 河西啓介が解説する。
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ヤマハは、125ccのスポーツバイク「XSR125 ABS」を12月8日から発売する。XSRシリーズはオーセンティックかつレトロなテイストの外観に最新の技術が投入された、ヤマハが“ネオレトロ”と、定義するスポーツモデルだ。大型モデルの「XSR900」と「XSR700」がラインナップされているが、今回登場したXSR125はだいぶ年の離れた(排気量の小さな)弟分である。
発表会で実車を見たが、これがちょっと驚くほど大人びた弟分だった。車格、装備、質感……どれをとっても125ccには見えないのだ。見た目にも頑強そうなデルタボックス型フレームに軽量なアルミ製リアアームを組み合わせ、フロントフォークは剛性の高い倒立式を採用。LEDの灯火類、タックロール(縫い目を模した加工)シート、各部に配されたアルミパーツなど、骨格を成す部品から装飾パーツまで、仔細に観察してもおよそ、安っぽいところがない。
資料によればエンジンには吸気用バルブのカムを回転域によって切り替える可変バルブタイミング機構を備え、クラッチにはギヤチェンジの際のトルク変動を制御し、操作の負担を軽減する「アシスト&スリッパークラッチ」を使うなど、走りに関わるスペックも上位機種並みだ。137kgという軽量な車体にこれだけしっかりしたエンジンや足まわりを備えているということは、相当スポーティな走りが楽しめるであろうと想像される。
125ccクラスの場合、二輪の区分では「原付二種」、つまり原動機付自転車に分類され、そのため税金や保険料といった維持費が安いというメリットがある。いっぽう小排気量なりのアンダーパワーであることは否めず、高速道路にも乗れないから、少なくとも日本においては“モーターサイクル未満のコミューター”というイメージがあった。だからこそ「原付二種だから……」という妥協や言い訳を感じさせない内容、質感を備えるXSR125には、新しさを感じる。
あえてXSR125の“死角”を挙げるとすれば、税込み50万6000円(税別46万円)という価格だろうか。ここ数年の“原二人気”を牽引するホンダの原二シリーズ(スーパーカブ、ハンターカブ、モンキー、ダックス、グロムなど)が30万円台後半から40万円台前半であるのを考えれば、50万円をわずかに超えてしまったXSR125は、ユーザーには割高に感じられるかもしれない。
しかし個人的には、どこか妥協せざるを得なかった原二の常識を超えたという点で、XSR125には価格以上の魅力を感じる。共通のコンポーネンツ使いながら上手くキャラクター付けしてブームをつくったホンダ原二シリーズに対し、スポーツ性や作り込みの高さで勝負するヤマハ、という狙いにも思える。
1980年代に空前のバイクブームが巻き起こった当時、「HY戦争」と呼ぶホンダとヤマハによるニューモデル投入ラッシュがあった。最近、両社が登場させている魅力的な原二モデルを見ていると、かつての勢いを感じられずにはいられなかった。
125ccクラスに魅力的なモデルが増えるのは、二輪エントリー層や若いライダーには嬉しいはずだ。そしてホンダ、ヤマハをはじめ二輪メーカー同士がよきライバルとして切磋琢磨してくれればバイク業界が元気に盛り上がることも間違いない。
文・河西啓介 編集・稲垣邦康(GQ)
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