日本の量産ハイブリッドカーのパイオニア、そしてハイブリッドカーの世界的普及を促進したトヨタ・プリウスの5代目となる新型ハイブリッドモデルの公道試乗が叶った。
熟成のTNGAプラットフォームをベースに構築された新型プリウスは、低く構えた流麗なシルエット、寝かされたAピラーによって、乗降性は後退し、頭上空間は狭まってしまったが、それを許せそうなのが、スポーティカーを思わせるトヨタ車としてピカイチのエクステリアデザインだ。
bZ4X、RS e-tron GT、乗ってわかった電気自動車の実力
この@DIMEではすでに新旧パッケージング比較、一般販売のG、ZグレードとサブスクのKINTO専用車となるUグレードの違い、やや遅れて発売されるPHEVモデルのサーキット試乗記をお届けしているが、ここでは新型プリウスのメイン車種となるハイブリッドのZグレードFFモデルで公道を試乗。そのインプレッションをお伝えしたい。
公道を試乗してわかった進化のポイント
Z、Gグレードに積まれるトヨタ最新の2Lエンジン+2モーターによる第5世代ハイブリッドシステムは、システム出力が先代の1.6倍にもなる196psとなり、その上でWLTCモード燃費28.6km/Lを達成。タイヤはスポーティな下半身と低燃費を両立する、大径にして細身の195/50R19という異形サイズをフィッティングさせている。
運転席に着座すれば、bZ4Xにも採用されるアウトホイールメーター、先代のジョイスティック式ではなく、一般的とも言える自然な操作性となったガングリップタイプのシフター、最大12.3インチの大型ディスプレーオーディオ画面、凝ったインパネデザイン、これまたスポーティカーのようなサイドサポートと洗練されたデザイン性あるフロントシートなどが先進感とともに印象的だ。
とはいえ、全高の低さ、寝かされたAピラーによって、フロントウインドー下端までの距離が遠く、頭上方向の余裕はない。ただし、ガラスルーフを注文しても、頭上方向のスペースは非ガラスサンルーフ装着車と変わらないのはガラスルーフ派としては嬉しいポイントではないだろうか(後席も同様)。アウトホイールメーターはドライバーの体形によって、見やすい、見やすくない・・・の印象が分かれてしまうのが微妙で、メーターの見え方重視でシートハイトコントロールを上げて座面を高めると、ますます頭上方向の余裕がなくなるのが惜しまれる。本気のスポーツカーなら許せるかもしれないが、プリウスは世界に誇る実用ハイブリットーカーであり、セダンのように使われるはずのクルマだからである。
走り出せば、基本的に滑るように走るモーター走行が気持ちいい。静かなのは当然で2Lエンジンはまだ息を潜めたままだ。バッテリーの充電具合にもよるが、低中速走行では、トヨタのハイブリッドシステムらしく、粘り強くモーターだけのEV走行を行う。その車内の静かさの一方で、路面が荒れていたりすると、19インチタイヤのロードノイズが目立ってくる。が、エンジンが始動すれば、あるいはオーディオの音楽を楽しんでいれば、ロードノイズはほぼかき消される。先代モデルのウィークポイントのひとつがロードノイズの遮断不足だったのだが、新型ではEV走行時に気になるロードノイズも、比較すればずいぶんと抑えられ、かなり静かに走る・・・という印象が持てたのも本当だ。
モーターという動力源は瞬時にトルクが立ち上がるためアクセルレスポンスがいいのは当然としても、エンジンが始動してからのアクセルレスポンスの向上も見逃せないポイントだ。結果、混雑した市街地などでの走りやすさもまた向上している。言い方を変えれば、意のままの速度コントロールがしやすいということだ。
システム出力196psの加速性能は、システム出力223psを誇るPHEVモデルほどではないにしても、センターコンソール上にある、スポーツモードではステアリング制御も行う、Z、Gグレード専用のトグル式ドライブモードのスイッチ(ハリアーなどと同じパーツで小さく、操作性はいいとは言い難い)を、スポーツはもちろん、ノーマルモードにセットしたままでも瞬発力と伸びやかさある十二分な速さを備えている。
ただし、低音域を生かしたサウンドコントロールを行ったとされるエンジン音は、トヨタの4気筒ユニットにある”鼻づまり”感ある音から完全に脱していないところが惜しまれる。なにも”聴かせる”サウンドまでは望まないまでも、もう少しスカッとした抜け感ある音であってほしいところだ。
乗り心地は19インチ大径タイヤということもあって、ハリアーの19インチタイヤ装着車のような高級サルーンに匹敵するしっとりとした快適感あるタッチではない。路面によってはゴツゴツ感があり、路面の継ぎ目のショックもそれなりにある。が、それもまた、新型プリウスのスポーティなルックスに見合ったものと言えば、納得できそうだ。
文句なし!!と感動したポイントは?
パワーステアリングの素晴らしくスムーズで切れ味のいい操舵フィール、トヨタのハイブリッドカーとして最上級と断言していい自然なブレーキフィールもまた、新型ならでは。ゆえにプリウス史上でもっともキビキビした走りが可能であり、ブレーキを踏んだ際の揺れの少ない(カックンしない)制動が可能になっている。
公道を試乗したのは全2回。2回目は数日間、自宅を起点にあちこち走り回ったのだが、そこで改めて気になったのが、斜め前方、斜め後方、そして真後ろの視界だった。ただし、真後ろに関しては、デジタルインナーミラーが解決してくれそうだが、斜め方向の視界は最後までなじめなかった。
一方、文句なし!!と感動したところも数多い。プリウスに限った機能ではないが、プロアクティブドライビングアシストに含まれる歩行者、自転車運転車、駐車車両に対する操舵・減速支援、先行車に近づくと自動で減速してくれる減速支援、カーブに差し掛かかり、自車の速度が高すぎると判断されると自動で減速してくれるカーブに対する減速支援のありがたみを改めて強く実感。さらにトヨタブランド初として車線内走行時常時操舵支援、右左折時減速支援まで備わるのだから完璧だ。ACC(アダプティブクルーズコントロール)でも先行車に対して一定の距離を維持してくれるものの、ACCを使わない一般道の走行でも先行車をしっかり見てくれている安心感は絶大と言ってよく、絶妙なスピードコントロールという意味での走りやすさにも直結する。
そのほかにも、出合い頭の事故を防止してくれるフロントクロストラフィックアラートや前後方のサポートブレーキにもお世話に!?なったし、ドアを開ける際に後方から自転車、自動車が接近している際にアラートを発してくれる安心降車システム、あおり運転のような後方車両の接近を検知した際にアラート、ディスプレー表示に加え、音声通知によるヘルプネット(いわゆるオペレーター対応のSOSコール)接続の提案(警察への通報)まで行い、同時にメーカーOPのドライブレコーダー装着時ならイベント記録まで実施してくれる先進機能まで持つのだから万全だ。そう、全方位に守られ、いつでもオペレーターとつながる絶大なる安心感に包まれつつの運転、ドライブが可能になるのが新型プリウスでもあるわけだ。
そうそう、電気式4WDとなるE-Fourモデルはと言えば、車重がFFモデルに対して60kg増しになるものの、リヤモーターの追加でシステム出力が199psに高まるだけでなく、発進時に後輪からグイッと押し出される力強さがあり、加速レスポンスも格上。乗り心地もより重厚でしっとりしたタッチになり、段差乗り越え時のショックも軽微になる。カーブや山道の走行だけでなく、滑りやすい路面で威力を発揮してくれるのはもちろんだ。
一般販売のお薦めグレードはズバリ、Gではなく最上級のZである(FFか4WDかは使用環境で決めればよい)。Gに対して50万円高となるものの、エクステリアのブラックパーツが艶ありになって見た目の高級感がグンと高まり、静粛性を高めるダッシュサイレンサーが”上級”仕様になり、シートがデザイン性にも優れた合成皮革仕立てに格上げされるとともに、暑い時期に嬉しいシートベンチレーションまで備わるのだ。また、多機能なディスプレーオーディオが唯一12.3インチの大画面となるほか、最先端の自動パーキングシステムを含むトヨタチームメイトも標準装備され、トヨタ最新の新型プリウスらしさを存分に堪能できる機能、装備が満載だからである。なお、側方接触事故防止に役立つブラインドスポットモニター(安心降車システムなどを含む)はそのZグレードしか注文できない・・・。こうした安全にかかわる機能装備は全グレードに展開してほしいところだ。
文・写真/青山尚暉
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