年の瀬も押し迫る2023年12月末、日本最北の地である北海道・稚内にクロストレックとフォレスターのスバルSUV2台で日本最北&最寒試乗にチャレンジした。果たして、この2台のリアルワールドでの雪国性能はどうだったのか?
文/永田恵一、写真/中島仁菜
全方位性能で間違いない「クロストレック」とモデル末期でもコスパ抜群「フォレスター」に日本最北の地で試乗!! 改めて思うスバルSUVの底力とは!?
■クロストレックはスバルのグローバルでの主力モデルに成長
北の地で改めてクロストレックの雪国性能をチェックしてみた!
クロストレックは5ドアハッチバックモデルであるインプレッサの最低地上高を上げ、エクステリアは各部を黒い樹脂パーツ化するなどしたクロスオーバーである。
クロストレックは2022年のスバルの世界販売において20万台を超える最多量販車となるなど、スバルにとって重要なモデルなのもあり、車名を従来までのXVから世界共通のクロストレックに変えている。その現行型3代目モデルは2022年12月にベースとなるインプレッサより若干先行するタイミングで登場。
現行クロストレックはコンセプトやプラットフォームをはじめとしたクルマの基幹部分こそ先代2代目モデルを踏襲したものだが、フルインナーフレーム構造となり、剛性をいっそう高めたボディやハードウェアを最新のものとした最新型アイサイトなど、現世代の新しいスバル車にふさわしいアップデートが施されている。
また、現行クロストレックはFF車が加わったことも大きなトピックで選択肢が広がった効果もあり、日本国内でもインプレッサシリーズの柱となるモデルに成長した。
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■クロストレック上級グレードのリミテッドに北海道で試乗
今回試乗したのはクロストレック上級グレードのリミテッド。上級モデルとなるレヴォーグ同様にWピニオンステアリングを採用している
今回試乗したのは上級グレードとなるリミテッドの4WDだったが、まずありがたかったのが寒さ対策の装備だ。具体的に挙げると、リミテッドは前席シートヒーターを標準装備し、オプションでステアリングヒーターも設定され、ヒーターが効き始めるまでの寒さを和らげてくれるだけでなく、走行中も実に快適だ。
さらに雪道では視界確保に貢献するフロントウィンドウガラスとドアミラーの熱線、拭き取り面積の大きいワイパーや強力なデフロスターもありがたかった。
実際に走り出して印象的だったのは静粛性の高さだ。これは以前から感じていたことで、ルーフ(屋根)の接着に制振性に優れる弾性接着剤の効果が大きいようだが、この点はロングドライブになるケースも多い冬場でも快適性を大きく高めてくれていたようだ。
今回の本題となる雪道での走行に関しては、横浜ゴムのアイスガードという高性能スタッドレスタイヤを装着していたこともあり、路面はアイスバーン中心というコンディションでも普通に運転しているかぎりは何も起きず、安心安全のなかでスノードライブを快適に楽しめた。
■運転する楽しさを備え持つクロストレック
クロストレックリミテッドを北海道で試乗する筆者。快適な乗り心地に感心することしきりであったという
それだけに雪道はコンディションの急変なども起こりえるだけに、ドライバーの注意が散漫になるのが心配になるくらいだった。
快適といえば、これも以前から感じていたことながら、氷による大きな凹凸ができる雪道でも乗り心地は引き締まっていながらも不快な硬さはないという良質なものだった。
道中の筆者の運転中、同行した編集担当氏とカメラマンがウトウトしているシーンがよくあったが、筆者も編集担当氏のドライブ中に助手席と後席に乗ってしばらく移動したところ、ウトウトしてしまうのもよくわかった(笑)。
さらにクロストレックが素晴らしかったのは雪道でも安心&安全なだけでなく、コーナーでの回答性のよさやタイヤの状態を正確に伝えてくれるなど、運転する楽しさも備えていることで、この点もクロストレックを選ぶ大きな理由になるだろう。
■取り回しのよさと冬に必須な装備を併せ持つ!
2Lマイルドハイブリッドのe-BOXERを搭載するクロストレックには、筆者もその実力には納得していた様子
動力性能は2LNAエンジン+13.6psのモーターとなるe-BOXERということもあり、扱いやすさは感じるものの、特に印象的な部分はなく、普通といったところだ。それでも力不足を感じることもなく、燃費も一般道中心で14.0km/Lと、クロストレックが持つ安心&安全を加味すれば納得できるものだった。
また、今回は深い雪道があまりなかったのもあり、恩恵に預かることは少なかったのだが、クロストレックはクロスオーバーでありながら200mmという最低地上高や、よりトラクション(駆動力)を高めるX-MODEを持つなど、いざという時には平均的なSUV以上に頼りになるクルマである。
さらにクロスオーバー化に伴って高い最低地上高による乗降性や見晴らしの向上といった実用性をほとんど失うものなく備えている点も魅力だ。これで価格はアイサイトが付いて4WDで300万円台前半というのを見ると、インプレッサの柱となっているのが改めてよくわかった。
■モデル末期ながら商品力の高さ際立つ現行フォレスター
すでに米国では新型が発表されたフォレスターだが、現行型もそのコストパフォーマンスの高さはいまだに健在だ
ド真んなかの国産ミドルSUVとなるフォレスターもスバルの世界販売ではクロストレックに近い販売台数を占める、スバルにとっては重要なモデルである。
2018年に登場の5代目モデルとなる現行型は、スバル車らしく毎年のように改良を重ねながら今に至っており、現在のパワートレーンはクロストレックと同じく2LのNA+e-BOXERと1.8Lターボを搭載する。
2018年登場ということもあり、北米では次期モデルが登場しており、モデル末期なのは否めないが、今回は現行フォレスターにも試乗できた。
悪路に強い4WDと先進安全装備のアイサイトを持つ現行型フォレスターのコスパと本格SUV性能を筆者も試乗して改めて再確認
まず、現行フォレスターで魅力的なのは220mmというSUVのなかでも高い最低地上高や、500Lを超えるラゲッジスペースといった強いSUVらしさを備えることだ。この点は特に深い雪道をはじめとした悪路やアウトドアに使う際にはありがたいだろう。
試乗したのはe-BOXERを搭載し、アウトドアなどで有用な撥水シートやルーフレールなどを装備するX-BREAKだったが、モデル末期ながら古さを感じることはなかった。むしろアイスバーン中心だった今回の雪道では、スバル伝統の4WDやアイサイトを核にした安心&安全の高さのほうが際立ったほどだった。
そんな現行フォレスターであるが、価格を見ると4WDかつアイサイトも付いて306万9000円からと、車格が下のSUVが300万円超え、同クラスのSUVが4WDだと純エンジン車でも350万円超えが珍しくないのを考えると、お買い得感は高い。
■まだまだその競争力は侮れない現行フォレスターに納得!
日本最北の地を現行型フォレスターで訪れた筆者と編集担当。試乗したのは千葉スバル特別仕様車のフォレスターラギッド仕様
さらに、新年の初売りでは近畿地区や千葉といったディーラー単位ではあるが、横浜ゴムのジオランダー+北米仕様に設定されるオフロード志向を高めたウィルダネスモデルのホイールなどオプションパーツをセットにしたうえでリーズナブルな価格で装着した特別仕様車も用意される。
そういったことを総合すると現行フォレスターの競争力はまだ高く、SUVを選ぶ際には完熟という魅力も持つ現行フォレスターもぜひ候補に入れてほしい。
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