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海外でも大活躍のランドクルーザー!「ランクル」はオーストラリア人の信頼をいかにして勝ち取ったのか? 汗と涙と努力の秘話

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海外でも大活躍のランドクルーザー!「ランクル」はオーストラリア人の信頼をいかにして勝ち取ったのか? 汗と涙と努力の秘話

陸の王者の本領を世界の働く現場からルポタージュ

 日本が誇るヘビーデューティな四輪駆動車「ランドクルーザー」。歴史は古く、1951年登場の起源モデル「トヨタ・ジープBJシリーズ」から、最新モデル「ランドクルーザー300」まで70年に渡り、国内外で愛され続けるモデルだ。

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 日本国内での人気はもちろんだが、ランドクルーザーが本領を発揮するのは世界各国の仕向地で世界の経済を支えてきた、馬車馬に代わるワークホースとしての働きぶりにある。本稿では、写真家でありランドクルーザーに関する著書を数多く上梓している難波 毅(※敬称略)が、オーストラリアの地でファインダーに納めてきたランドクルーザーの姿をお届けする。

初出:ヨンクスタイルvol.4(※一部加筆修正)

「何があっても戻ってこられる」絶対的な耐久性と信頼感を誇るランドクルーザー

 35年前、自身のランドクルーザーを船に積んでオーストラリアへ取材に行った。半年間の旅のあと、写真家としての道が決まった。そこはランドクルーザーが、もっともランドクルーザーらしく活躍している地でもあった。奥地に行けば行くほど存在感は輝いていた。その後の取材の足は必ず、ランドクルーザー。

 このクルマならば何があっても戻ってこれる。世界で最も過酷な使い方をするといわれるオージーだが、それはランドクルーザーの耐久性に対する絶対的な信頼感があってこそのことだった。

24時間、365日止まらない鉱山での過酷な使用に耐える

「1分前……」。無線機からの金属的な声が静まり返ったなか響く。聞こえてくるのは人工物がまったく見えない平原に吹き渡る風の音だけ。

「……3、2、1」、目の前に迫る地上の大穴の底に突然、赤黄色い光がジグザグに走る。わずかに遅れて腹の下から持ち上げられるような爆破音をともなう空気の振動。クイーンズランド州北西部のエルネストヘンリー銅・金鉱山の露天堀り採掘現場で発破が行われた。

 鉱山の採掘現場は直径1kmのすり鉢状の穴の底。地表からの深さは400mを超す。大穴の縁を添うように地底へ降りていく岩だらけの道では、採掘現場で働く作業員の乗った車両が先を争うようにホコリを巻き上げる。発破に備えて全員が地上に退避していたのだ。地底の採掘現場では巨大パワーショベルがふたたび唸り声を響かせ、鉱石を積むため列をなして待機する220t積みダンプの排気管からは黒煙が上がる。

 つい1時間ほど前の日常が戻っていた。採掘現場は大型重機を除けばランドクルーザーばかり。鉱山では70系ユート(オーストラリアではピックアップをこう呼ぶ)、ロングバン、100系を改造したダブルキャブユートなど80台ほどが働く。

 エルネストヘンリー鉱山から西へ100km、マウントアイザの町の下には世界最大規模の地下銅鉱山が広がる。その坑道は地下1900m。最奥の切羽では最低限の明かりのなか採掘が行われる。足元は岩だらけで水が溜まり、さらに高湿度という厳しい環境だ。

 地下960mには作業員のための休憩施設、給油所、ランドクルーザーのワークショップがある。施設には空調が完備されており、ワークショップではエンジン、ミッションの脱着など、重整備以外の全メンテナンスが行われる。

 この地下鉱山でも大型重機を除けば、あとはランドクルーザーばかり。人員運搬用、高所作業用、機材運搬用とそれぞれに特化した荷台を取り付けた70系のユートなど120台ほどが働く。

「日々是改善」不断の改良が絶大な信頼を得る

 オーストラリアにランドクルーザーが本格的に入っていくのは1958年の「スノーウィマウンテン計画」という、世界でもっとも複雑に統合された水力発電・かんがい計画がきっかけだった。オーストラリアの会社として、初めて一部工区の契約を勝ち取ったレスリー・シースは、13台のFJ25型ランドクルーザーを現場に持ち込んだが、そのうちの1台は部品取り用だった。

 作業環境は過酷でどんなクルマでも故障が続出。しかし、ランドクルーザーの場合はすぐに日本から技術者が現場に出向き、泊りがけで故障に対応した。修理部品を空輸し、故障した部品は原因究明のため日本に送り返す。120psのエンジンを積んだFJ25型はこの現場で耐久性、信頼性という評価を勝ち取ったのだ。

 レスリーは自動車販売会社を設立し、1959年からクイーンズランド州でランドクルーザーの販売を始めたが、敗戦国日本の製品に対するバッシングはひどかった。そこで編み出されたのが〝実物対面販売〟である。農場や牧場へ現物を持ち込み、実際に使ってもらう方法だ。「いいものはいい」。口コミで評判が伝わり徐々に販売も上向きになっていった。

 また、部品やサービスのネットワークづくりにも早くから積極的。現在でも「ランドクルーザーは部品がすぐに手に入る」といわれる所以である。なかでもランドクルーザーの評価を決定づけたのが40系で、24年間モデルチェンジはなかった。それを引き継ぎ、現在のワークホースである70系は1984年の発売開始から現在まで、37年間もモデルチェンジしていない。

 しかし、開発陣は何もしていないわけではない。単なる化粧直しをしないだけで、各国の法規対応やユーザーの要望、信頼性、耐久性などを向上させるという改良は不断。ユーザーは「このクルマならばできる」、「命を預けられる」というランドクルーザーの絶対的な信頼性、耐久性、悪路走破性を体で知っている。オーストラリアでは、ランドクルーザーは国民車的4輪駆動車であり、老若男女に愛されている。

オーストラリアの経済を支え続けた「ランクル」の爪痕

ランドクルーザーは家族の一員

 カルトンヒルズ・ステーションは、8000頭ほどの牛を放牧する牧場。馬に乗った子どもたちが牛の群れを追う70系ダブルキャブユートと並走する。この日は乗馬の訓練を兼ねて、仔牛の放牧作業に連れてきてもらった。

 牧場内のフラットダートを砂ホコリを巻き上げて走る。8000平方kmと兵庫県並みの広さを持つカルトンヒルズの道は自ら作り、グレーダーなどで保守管理をしなければならない。想像もつかない労力と資金が必要だ。

 国立公園で維持管理作業に従事

 4輪駆動車でなければ辿り着けない国立公園もあるし、公園内には4輪駆動車だけが訪れることができるスポットもある。パークレンジャーは70系ユートの荷台に多種多様の資機材を積んで保守管理を行う。水タンクとポンプを積んで山火事の消火に当たることもある。

行政サービスでもなくてはならない存在

「アウトバック」と呼ばれる大陸内陸部の警察や消防。管轄地域が広大で道路状況にかかわりなく出動要請されるため、70系ロングバンやユートが幅広く使われる。奥地の先住民コミュニティではバスとしても利用。救急車を含めて命に直結するサービスで存在感は大きい。

鉱山の生命線でもある鉄路を守る

 鉄鉱石は内陸の鉱山から積出を行う港まで、約600kmを専用鉄道で搬出。線路沿いには保守用の道があるが、基地から100km、200kmと荒れた未舗装路を毎日走って現場に向かう。左写真は全長2kmにもなる鉱石積出列車の脇を走る70系ユート。写真右は、線路を走れるように改装したランドクルーザーの軌陸車だ。これも重要な道具となっている。

40年も前の40系もまだまだ現役

 群れからはぐれた迷子の牛を捕らえ、群れに戻す仕事に使われるのが「ブルバギー」と呼ぶクルマ。40系を改造したものが多く、車体の周りをケージで囲い、先頭部に牛を抱え込むアームを備える。ひとつ間違えば死亡事故にもなる危険な作業だ。

ウインドミルはアウトバックのシンボル

 澄み切った青い空の下でカラカラと回る風車(ウインドミル)は、家畜のための地下水をくみ上げるもので、牧場内にいくつも設置されている。この日は不調だったポンプの交換作業に来ていた。

荷台は代々使い続ける専用工具箱

 ニューサウスウェールズ州の内陸部にあるモリーは綿花の一大生産地である。”コットンキング”のピーター・グレーニーが経営するのがノーウッド・ステーション。全部で4台の70系ユートを所有し、年式の古い個体が一番の汚れ仕事に使われる。荷台は特注の「工具箱」となり、車輌の入れ替え時に荷台ごと乗せ換えていく。3~4月の綿花摘み取り時期は、寝る間もないほどの忙しさになるという。

遊びでもランドクルーザーを使い倒す

 70系ロングバンだけのFacebookグループがある。毎年冬にチャリティを兼ねた集まりを実施。200台近いロングバンが一堂に会し、極寒のキャンプを楽しむ。ほかにも各州に「ランドクルーザークラブ」がある。

□筆者プロフィール

難波 毅(なんば たけし)/1953年生まれ。日本経済新聞社のカメラマンを経て1986年独立。オーストラリアの奇岩風景がライフワーク。DVDの制作などを通じてユーザーと直接触れ合い、世界中でランドクルーザーがどのように使われているかを取材し続ける。30年以上関わり続ける豪州での情報量とネットワークは豊富だ。

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