意のままの走りを存分に楽しめる1台だった!
長野県の佐久穂町にある「130 COLLECTION」。ブレーキシステムやサスペンションなどを自社で製造している「エンドレス」の創業者で、現・会長の花里 功氏が2021年春に開設したカーミュージアムだ。
ホンダ初代「シビック」誕生から50年! オーナーに聞いた「シビック命」のクルマ人生とは
展示車両は、国産なら初代シルビア、チェリークーペ120X1-R、パブリカにコンテッサなど。輸入車ならBMW2002CSやベルトーネX1/9、アルファ ロメオ・ジュニアZといった、マニアならずとも時を忘れて見入ってしまう魅惑の空間だ。
花里会長が作り上げた「130 COLLECTION」がほかのミュージアムと違うところは、珠玉の名車を見るだけでなく運転席に乗り込むこともできるということ。今回も花里会長に特別に許可をいただき試乗させていただいたのでレポートをお届けしよう。
素性がはっきりしている由緒正しき1台
試乗車は初代シビックだ。シビックは誕生から2022年で50年の節目を迎えた。それを記念して2022年9月18日には、エンドレスの「130 COLLECTION」に全国からたくさんのSB1シビックと歴代のシビックが集まっていた。エンドレスがフルレストアしたSB1シビックは、CVキャブレターを2連装したフラッグシップの1200RSだ。このシビックも由緒あるクルマで、素性がはっきりしている。
「シビックSB1クラブの田玉周一さんから譲り受けたクルマなんです。シビックRSはボクが若いときに欲しかったFFスポーツの名車。悔しい思いが、このRSに込められています。田玉さんとの付き合いは、ブレーキキャリパーを作ってあげてからです。親しくなったら、4台持っているシビックのうちの1台をくれたのです。また、スペアボディも預けてくれました」
「リヤシート下などが腐食していましたが、完璧にレストアしました。ボディカラーはパールホワイトが好きですが、シビックRSはオレンジがイメージカラーですよね。ですが、最初に白を塗り、黄色を加えて純正色より鮮やかなオレンジにしました。エキゾーストマニホールドやダンパーを自作し、マフラーはフジツボのワンオフです。ブレーキはエンドレス製、8本スポークのアルミホイールはエンケイのオールワンですが、オートサロンで映えるように専用色としました」
と、花里功会長の思い入れは強い。
エンジンが絶好調で気持ちいい加速を披露
1972年7月にデビューしたシビックは、時代に先駆けて前輪駆動と2ボックスの台形ボディを採用した名車だ。そのフラッグシップとして1974年秋に加わったのが、ロードセーリングの頭文字を採った1200RSである。搭載するのは、CVキャブを2基装着した1169ccのEB1型水冷直列4気筒SOHCだ。パワースペックはグロス76ps/10.3kg-mと、それほど高性能ではない。だが、3ドアRSの車両重量は705kgと軽量だから、機敏な走りを披露した。
視界のよいコクピットに収まると、ペダルが左側にオフセット配置されていることに懐かしさを覚えた。わずか1200ccだが、パンチのある加速を見せ、3000回転を超えたあたりからパワーに加え、トルクも盛り上がりを見せる。尖ったところはなくフラットなトルク特性だからフレキシブルだ。4速ギヤまでがクロスしていることもあり、持てるポテンシャルを引き出しやすい。この個体はエンジンが絶好調で、気持ちよく加速し、回転落ちもよかった。奏でるエンジン音もスポーツ心を躍らせる心地よいものだ。
サスペンションも絶妙なセッティングで、意のままの走りを存分に楽しめる。ステアリングは少し重めだが、すぐに慣れるだろう。当時はアンダーステアが気になったが、この個体はボディがシャキッとしていて、ハンドリングも軽やかだ。狙ったラインに乗せやすく、アクセルを緩めると気持ちよく鼻先が向きを変える。そして絶大な安心感があったのが制動フィーリングだ。踏力に応じた減速感が素晴らしい。日常の走行シーンで操っている感覚が強く、楽しいのがシビックRSだ。
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