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【注目のクラッチレス機構を徹底比較・前編】ホンダ「E-Clutch」+CB650R/ホンダ「DCT」+CRF1100Lアフリカツイン

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【注目のクラッチレス機構を徹底比較・前編】ホンダ「E-Clutch」+CB650R/ホンダ「DCT」+CRF1100Lアフリカツイン

バイクで一番最初のハードルはクラッチ操作での発進、停止、滑らかな変速

4輪の自動車学校での教習で、習得に苦労したのは何かと言われて一番に思い浮かぶのは、発進、停止でのクラッチ操作ではなかろうか(筆者が免許を取得した1980年代半ばにはAT免許はなかった)。特に坂道発進など、最初からエンストなしで出来たなんて方は多分いないのでは? 2輪のバイクでも同じことが言えて、発進、急制動でのクラッチ操作、クランクコースや一本橋通過の際の微低速走行で使う半クラッチの操作。実技教習の大半は、クラッチ操作の習熟のためにあると言ってもいいかもしれない。

【画像17点】ホンダの同門クラッチレス機構「E-Clutch」、「DCT」を比較チェック!

エンジンを止めないようにクラッチをつなぐ/切る操作に、慣れが必要だからだ。また厳密に言えば、バイクは排気量やエンジン形式によってトルク特性もさまざまで、どれくらい半クラを使ってつなぐと滑らかに発進できるかとか、どれくらいのエンジン回転で変速してクラッチをつなぐと具合がいいか、微妙にさじ加減が違ったりもする。

そこが4輪のマニュアル車(国産車では今やかなりの少数派だが)とも違う、バイクのマニュアル車の第一の手強さ、面白さじゃないかと思ったりするが、現在はスポーツバイクにおいても、オートマでのイージライディングを求める潜在需要を無視することはできない。渋滞路に巻き込まれれば、いい加減クラッチ操作も飽きてくるし疲れてくる。変速が面倒くさくなる場合だってある。

都心に住んでいて、週末にツーリングで郊外まで足を伸ばせば、帰りはお決まりの渋滞。少し進んでは止まるを繰り返して家に着くまでにどっと疲れていた、なんてことも多々あるかもしれない。かくして、国内外の主要メーカーがスポーツバイクにもクラッチレス機構を入れ始めたのは必然の流れであり、現在出揃ったのがホンダの2つの機構と、ヤマハ、BMWがこのほど新搭載した計4つのクラッチレス機構なのである。

前置きが長くなったが、かくして登場したのがホンダのE-Clutchと、2010年以降から進化しながら続くDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)、ヤマハのY-AMT(ヤマハ・オートメイテッド・マニュアル・トランスミッション)、BMWのASA(オートメイテッド・シフト・アシスタント)。ここに紹介する機構は、カテゴリーも様々なバイクに搭載されていて公正な横並び比較は難しいが、各搭載機構を装着した仕様と非装着のSTDのベース車との比較もしながら紹介。まずはホンダの2機構を前編として取り上げてみる。

E-Clutch:自動制御はクラッチのみ、変速はあくまでライダー主導としたイージスポーツライディングの新提案

【ホンダ・E-Clutch】
試乗車:CB650R E-Clutch(価格:108万9000円/車重:207kg)
■STDモデルとの価格差/重量差:5万5000円/2kg

■特徴
通常のクラッチ操作も残しつつ、自動クラッチ制御(つなぐ/切る)を付加した機構。クラッチレバーが存在するため大型自動二輪AT限定免許には対応しないが(実際にこの免許を所持する人はごく少数だろうが)、クラッチレバーを使わない発進、停止が可能。クラッチレス機構の中では簡易なシステムと言え、STDモデルからの価格差・重量差も少なく、今後小排気量や中型スポーツバイクへの普及もしやすそうな機構と言える。

■長所
自動制御はクラッチ操作のみにとどめており、足シフトでの変速は通常と同様で、スポーツバイクの基本操作を残している。E-Clutch作動中は、スロットルを開ければ自動でクラッチが適切に滑りながらつながり、減速時も適切なタイミングで駆動が切れる。加速・減速時も、適切にクラッチを切って変速するクイックシフト的な機能も有する。一方、設定を切り替えると、通常のクラッチ操作&マニュアル変速に切り替えられる。

■短所
他の機構のような、AT変速モードは装備せず、変速は常にライダー主導。速度が落ちて停止しても、自動シフトダウンはしない(6速トップで停止したら6速のまま)。E-Clutch機構をオフにすると、加減速時のクイックシフト的機能もオフとなり、基本的に手動クラッチ操作が必要となる。

■ミニインプレッション
マニュアルクラッチのようにライダーがアイドリング回転からつないで、ジワリと走り出すようなことができないため、E-Clutch作動時は通常のマニュアル発進よりは車体が前に多めに出やすい。そのため発進即Uターンのような操作はやや苦手。リヤブレーキを通常より多めに使って速度を制御してやるほうがUターンはスムーズにできる。そのため、ゼロ発進からのUターンに限れば、クラッチを切って(この動作でE-Clutchは一時的に解除されるし、こうしたマニュアルの介入は走行中も可能)走り出すのがスムーズかもしれない。

しかし、少しでも車体が動いていればクラッチのつながり、切れともに自然なタイミングで(半クラッチでの滑り挙動も含めて)、渋滞路でのトロトロ発進や停止を繰り返すシーンでは自然な挙動で便利。ワインディングでも基本的に滑らかなシフトアップ・ダウンが味わえ、ストレスのない走りを味わえる。

クラッチをマニュアル作動にした場合は、普通のミッション付きバイクそのものの操作と挙動で、普通にスポーツライディングを楽しめる点は、ほかのクラッチレス機構にはないE‐Clutchならではの特徴。STDと比べて価格差、重量差が少なく、E-Clutch付きを選びやすい気軽さがあり、疲れたときにクラッチ操作はさぼりたいけど、ATでの変速は要らないという向きは、これ一択で決まりだ。

現在のところ、この機構は試乗車のCB650RほかCBR650Rにしか採用されていないが、順次採用機種を拡大してもらいたいところ。

<ホンダCB650R E-Clutch主要諸元>
■エンジン 水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク67.0×46.0mm 総排気量648cc 圧縮比11.6 燃料供給装置:フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力70kW(95ps)/1万2000rpm 最大トルク63Nm(6.4kgm)/9500rpm 燃費21.3km/L(WMTCモード値)
■変速機 6段リターン 変速比1速3.071 2速2.352 3速1.888 4速1.560 5速1.370 6速1.214 一次減速比1.690 二次減速比2.800
■寸法・重量 全長2120 全幅780 全高1075 軸距1450 シート高810(各mm) キャスター25°30′ トレール101mm  タイヤF120/70ZR17(58W) R180/55ZR17(73W) 車両重量207kg
■容量 燃料タンク15L エンジンオイル2.6L
■車体色 マットバリスティックブラックメタリック、パールディープマッドグレー
■価格 108万9000円

DCT:熟成を重ねてきた自動クラッチ/自動変速の「大御所」機構

【ホンダ・DCT】
試乗車:CDF1100Lアフリカツイン・アドベンチャースポーツES・DCT(価格:205万7000円/車重:253kg)
■STDモデルとの価格差/重量差:11万円/10kg

■特徴
マニュアルトランスミッションの構造はそのままに、クラッチ操作と変速操作を自動化した機構。1-3-5速/発進用クラッチと、2-4-6速クラッチの2つのクラッチ(デュアルクラッチ)を備え、電子制御によって、つながりのいい変速を実現。既存のエンジンをベースに「メインシャフトの二重化」「専用設計の直列配置クラッチ」「エンジンカバーに集約した油圧回路」などが採用されたDCTは二輪用に適したコンパクトさも追求しているが、重量はSTDより10kgほど重くなる。
ホンダでは、750cc以上のミドル~大排気量モデルを中心にDCT搭載車を拡大しており、国内販売車ではNC750X、X-ADV、レブル1100/T、CRF1100Lアフリカツイン/同アドベンチャースポーツES、ゴールドウイングに採用。クラッチは自動制御でつなぐ・切るを行い、レバーは非装備のため、大型自動二輪AT限定免許でも運転可能。

マニュアルモード(MTモード)での変速は左グリップ部でのハンド操作で、親指で押すボタンでダウン、グリップ向こう側のボタンを人差し指で押してアップ。またマニュアルモードでも、停止時には1速まで自動で下がり、速度の低すぎる割に高いギヤに入っている場合にもシフトダウンが自動介入。

またMTモードATモードを問わず、各種ライディングモードのパワー特性が反映され「TOUR」、「URBAN」、「GRAVEL」、「OFF ROAD」のほか「USER1」とUSER2」というライダーが任意で好みの設定をできる2つのカスタムモード)もあり、選択できるパワー特性は多様。

■長所
2010年のVFR1200Fで初搭載された後、着実に進化しながら熟成されてきたDCT。初期のDCTのATモードでは違和感の出る場面もあったシフトアップ・ダウンの作動は、徐々に自然な変速へと進化。選択できる特性の多様化も実現している。そのためATモードでは、ライダーの意に沿わないシフトアップ・ダウンはほぼなく、変速時のショックもごく少なめで、操作から作動までのタイムラグも気になる場面はない。またATモード作動中にマニュアルボタンを操作し、任意にシフトアップ・ダウンを介入させることも可能。
MTモードでは、左グリップ部ボタンでのハンド操作だが、アップ、ダウンともに確実にタイムラグなく作動。また、足で変速操作もしたいというニーズにも対応して、試乗車のアフリカツインほか、ゴールドウイング、NC750Xに「DCTチェンジペダルキット」が別売りアクセサリーで用意されている。

■短所
欠点のない機構ではあるが、マニュアルモード変速でのダイレクト感が希薄というのが個人的な印象。そのほか、アフリカツインに限って言えば、ライディングモードの多様さに加え、個別に設定も可能なパワー/エンジンブレーキ/トラクションなど諸々の設定が複雑に思える。オーナーとなれば、機能も楽しめるだろうが……。左側操作系のスイッチ・ボタンの操作項目の多さ、複雑さにも慣れるのに時間がかかった。

■ミニインプレッション
MTモードでは、変速したときのスイッチ感が強く、マニュアルミッションを操作している感触が薄い印象。変速にタイムラグや違和感があるわけではないが(初期のDCTには多少なりともあった)、複雑かつ緻密な機構のせいもあるだろうが、乗り手の操作とトランスミッションの作動の感覚的な距離が遠い印象。そのせいか、スポーツライクな雰囲気が盛り上がらないというのは、あくまで個人的な感想だが……。

そのほか、STDな仕様に対して、重めの機構を積んでいる印象は(実際にはSTD+10kg)、比較すると実感できるだろう。そういう個人的な感触・印象も含めて、クラッチレス機構の各車の中では、ATでずっと乗り続けていたい気分にさせる機構だった。

また上記のような印象からすると、オートマ感とマニュアル感の振り幅、排気量帯での棲み分け、コストを反映した価格設定も含めて、同メーカー内でのE-Clutchとの共存は、図りやすいのではないかとも感じた。

<CRF1100Lアフリカツイン アドベンチャースポーツES DCT主要諸元>
■エンジン 水冷4ストローク並列2気筒ユニカムOHC4バルブ ボア・ストローク92.0×81.4mm 総排気量1082cc 圧縮比10.5 燃料供給装置:フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力75kW(102ps)/7500rpm 最大トルク112Nm(11.4kgm)/5500rpm 燃費19.6km/L(WMTCモード値)
■変速機 電子式6段変速 変速比1速2.562 2速1.761 3速1.375 4速1.133 5速0.972 6速0.882 一次減速比1.863 二次減速比2.625
■寸法・重量 全長2305 全幅960 全高1475 軸距1570 シート高840(各mm) キャスター27°30′ トレール106mm  タイヤF110/80R19 M/C(59W) R150/70R18 M/C(70H) 車両重量253kg
■容量 燃料タンク24L エンジンオイル5.2L
■車体色 パールグレアホワイト
■価格 205万7000円

report●モーサイ編集部・阪本一史 photo●岡 拓/ホンダ

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