輸入車の売上が年々伸びている。2018年度の外国車販売台数は、前年度比1.2%増の30万7682台と、4年連続のプラス。国内新車販売に占めるシェアは9.2%(軽自動車を除く)と、過去最高を更新中だ。
見方を変えれば、日本車の人気が押され気味、という言い方もできる。ボルボが2年連続で日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞している昨今でもある。日本車は、輸入車に太刀打ちできないのだろうか?
買い物が悪影響?? クルマの血液 オイルの「シビアコンディション」とは
国産の人気ミニバン5車種に、輸入車5台をぶつけるガチンコ勝負。コストパフォーマンスも加味して検証してもらった。判定人は自動車ジャーナリストの岡本幸一郎氏だ。
※本稿は2019年5月のものです
文:岡本幸一郎/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年6月26日号
■トヨタ アルファード/ヴェルファイア vs メルセデス・ベンツ Vクラス
●トヨタ アルファード/ヴェルファイア(価格:337万6080~750万2760円)
いわずとしれた日本の皇帝は輸入車に対しても無双を貫けるか?
VS
●メルセデス・ベン Vクラス(価格:738万円)
「商用車ベースだから」という見方もあるかもしれないが。高級ミニバン界の戦いは厳しいのだ
そもそも生い立ちが違って、ミニバンの形をした“高級車”を突き詰めてきたアルファード/ヴェルファイアに対し、Vクラスは商用バンを高級に仕立てたクルマ。
ブランド力はもちろん、高速巡行時の安定感はさすがのものがあるし、日本向けに「スポーツ」を設定したり、アウトドアユースに対応するオプションを用意したりしているが、このクラスで大事なのはいかにラグジュアリーな雰囲気を味わわせてくれるか。
その点でアルファード/ヴェルファイアの圧勝だ。
■判定:アルファード/ヴェルファイアの勝ち…商用車ベースではベンツ車とて勝ち目ナシ!
■トヨタ ノア3兄弟 vs ゴルフ トゥーラン
●トヨタ ノア(価格:250万9920~328万6440円)
ハイブリッドも用意し、5ナンバーボディのなかに魅力を全部積み込んだ
VS
●VW ゴルフトゥーラン(価格:293万9000~411万9000円)
ドイツ車らしく走りは優秀。ディーゼルが選べるのも利点といえる
背高箱型vsワゴン派生とタイプの違うクルマではあるが、いずれも“定番”的でそつがない点では共通している。
そのうえで、走りを求めるなら重心が低く欧州仕込みのトゥーランに軍配で、このサイズながら3列目まで大きな不満もなく使えるパッケージングの巧みさはなかなかのもの。
とはいえ、圧倒的な広さやシートアレンジ性など、やはりミニバンとしての利便性においては、ノア三兄弟のほうが優れていることには違いない。
■判定:ノア3兄弟の勝ち…快適な乗員スペースこそミニバンの本懐だ
■ホンダ ステップワゴン vs シトロエン グランドC4スペースツアラー
●ホンダ ステップワゴン(価格:245万9200~399万6000円 モデューロX含む)
ハイブリッドはスパーダのみに用意
VS
●シトロエン グランドC4 スペースツアラー(価格:355万~447万5000円)
1.6Lターボと2Lディーゼルターボが用意される
三つ巴の国産Mクラスのなかでも、ちょっと変化球なステップワゴンに対し、存在そのものが独創的なシトロエンの独創的なミニバンがスペースツアラー。
が、その独創ぶりにハマる人が少なくないのがスペースツアラーであるのに対し、ミニバンとしての実力では上回るも、便利だが風変わりなテールゲートや個性的なデザインなどユニークさが敬遠される要因にもなっているのがステップワゴンという感じ。C4の勝ちかな……。
■判定:グランドC4スペースツアラーの勝ち…個性勝負となると変態ブランドが強みを発揮
■三菱 デリカD:5 vs VW シャラン
●三菱 デリカD:5(価格:384万2640~421万6320円)
悪路も走れるミニバンは世界的に見ても貴重な存在。3列目も広い
VS
●VW シャラン(価格:368万~479万円)
全長4855×全幅1910mmのボディは大きいが、見切りのよさもあって運転は難しくない
まったくキャラの違うもの同士対決。
SUVとの融合を図り、優れた悪路走破性やディーゼルの設定などミニバン界でも異彩を放つデリカに対し、シャランは大柄な車体による広い室内空間と乗用車的なドライブフィールという、VWらしいそつのなさが強み。
勝敗をつけるのも難しいが、ほかにない価値を持っているという点ではデリカのほうが上。
さらには内外装の質感や走りの洗練度が大幅に引き上げられ装備も充実した新型デリカはコスパの面でも優位だ。
■判定:三菱 デリカD:5の勝ち…世界的に見てもデリカ的なミニバンは少ないのだ!
■ホンダ フリード vs BMW 2シリーズグランツアラー
●ホンダ フリード(価格:188万~315万2520円)
4265mmというコンパクトな全長に3列シートを収め、若いファミリー層にも人気の一台
VS
●BMW 2シリーズグランツアラー(価格:413万~518万円)
全長は4300mmと短いが全幅は1800mm。FFながら走りにはBMWらしさがちゃんと感じられる
コンパクトサイズながら、大きな不満もなく使える3列シートを成立させているフリードのパッケージングは見事。
一方の2シリーズは、こういうクルマが必要だけどBMWが好きという人のためのクルマ。走りは誰でも“駆けぬける歓び”を感じられるよう味付けされている半面、肝心の後席の乗り心地は硬め。価格も割高感がある。
というわけでフリードの勝ち。日本勢の圧勝。やっぱりミニバンは日本のほうが優秀だと思うよ。
■判定:フリードの勝ち…コンパクトでもミニバンとしての本質は外さず!
【番外コラム】 国内に比肩するモデル、ナシ! 孤高の存在・トヨタ ハイエース
国内で絶大な人気を誇るハイエース。当然、彼にも輸入車と対決してもらおうと思ったのだが……、相手がいない。むろん海外メーカーに商用バンがないわけではない。ルノーにはエスパスがあるし、VWにも「T6」というモデルがある。
が、それらは日本に導入されていない。「キャラが違ってもいいから」と、ほかの輸入ミニバンを探したのだが、本企画に未登場のものは、もはやナシ。よってハイエースは不戦勝による勝利とする。おめでとう(←少しヤケクソ)。
ま、実際に戦っても勝つ可能性は高いのだが……
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