MAZDA3最新の改良で気になったのはエンジンではなく……
新型車の試乗は、基本的に自動車メーカーが主催する試乗会や広報車を借り出して行う。だから、なるべく試乗車の良い部分を多く見出だしリポートするよう心がけている。読者の皆さんから悪い部分もリポートしろとか、いいことばかり書いてメーカーからお金もらっているのかと指摘されることがあるが、試乗させていただく以上、評価の高い部分を引き出し紹介するのが礼儀というものだろう。
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とはいえ、気になった部分は試乗会場でメーカーのエンジニアや広報担当者に指摘し、場合によってはリポートさせてもらっているが、辛口コメントばかりだと主催者のメーカーも開催する意味がなくなってしまうだろう。
真実を正確に書き続けるのは重要だが、メーカーに辛口評論家だとレッテルを貼られ、試乗会に行っても誰も近づいて来ない場合もある。そんなときはクルマの完成度に自信がないのだな思うこともしばしばだ。しかし、いいことばかりが書かれたリポートだけを読む読者にとっては、皆が同じような褒め言葉ばかり書いていて食傷気味となるだろう。
そこで、今回は最近試乗した新型車のなかで、リポートには書ききれなかった良くも悪くも「ちょっと気になった」部分を、僕自身の「備忘録」としてここに書き留めておきたい。今回は、MAZDA3について。
商品改良を受けて2021モデルに進化したMAZDA3。その試乗会場で、わかる人にはわかる、わからない人にはわからない高度なAWDシステムについて言及があった。今回の改良はパワートレインに関するものが主体で、1.8リッターディーゼルSKYACTIV-Dのエンジン制御に関する変更が主だった。
だが配布資料の一部に気になる表記があった。それはAWDモデルのハンドリングに関する部分で、「MAZDA3のSKYACTIV-Xモデルではi-ACTIV AWDのシステムに特別な制御を取り入れていて、コーナーのターンイン部分でリヤをスライドしやすくしてアンダーステアを低減する後輪駆動寄りのトルク配分を可能としている」という部分。
GRヤリスで驚いた駆動力配分技術はMAZDA3が先行していた!
だが、ちょっと待てよと。MAZDA3のAWDは従来から電子制御カップリングを介して行う一般的なシステムで、前輪スリップに応じて後輪へ駆動配分する比較的単純なシステムだったはず。理論上はアクティブに前50:後50以上とはならないはずではなかったのか。
他社の多くが同様のシステムを採用する場合は直線路走行中にカップリングをフリーにしてFF(前輪駆動)状態で走行させ、走行抵抗を少なくして燃費低減を狙っているのに対し、マツダのi-ACTIV AWDでは微小にカップリングを締結していてリヤにも駆動力を与え、直進安定性の向上とカップリングをスタンバイ状態に維持して作動応答性を高めている、というのは聞いたことがあるが。「4駆使い」を自認する僕としては「後輪駆動寄りのトルク配分を可能にした」というのは主題のパワートレイン改良よりビッグニュースになるのだ。
そこで駆動系担当エンジニア氏にオンラインでインタビューすると、「直線ではFF状態で、前輪が滑ったときにカップリングで後輪へ配分しています」と。それでは従来制御より後退(?)したことになってしまう。ほかのエンジニア氏にも確認したが、意味が理解できておらず。後日i-ACTIV AWD専任エンジニアである梅津大輔氏とオンラインで特別に説明を受ける機会をいただいた。そこで梅津氏から衝撃の言葉が。
「中谷さん、GRヤリスに試乗されてAWDシステムについて解説されてましたよね。前後駆動系の減速比に0.7%の回転差を設定して後輪へのトルク配分を可能にしていると。じつはあれ、ウチ(マツダ)のほうが先に取り組んでいてMAZDA3はデビュー時から採用しているんです。しかもウチ(マツダ)は回転差を1%とより大きく取っています」と。
なんということでしょう。これには驚きました。MAZDA3のAWDは低ミュー路で限界走行させてもライントレース性の高いハンドリングで、バランスのいい走りだと感じていた。それはスナッピーなGRヤリスのハンドリング特性とは大きく異なっているが、駆動システムの理論的アプローチは同じなのだった。MAZDA3登場時にはそんな説明はまったく聞かされなかったが、おそらく「誰にも理解できない」と判断されたのか、極秘の取り組みとして触れられなかったのか。否、同じMAZDA3の開発エンジニア陣にも共有されていない奥深い内容だったようだ。
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みんなのコメント
100:0~50:50が限度。
現状横置きエンジン型では三菱自工のACD(50:50~0:100)を超えるものはない。