最近の車はよくできている。お世辞でも忖度でもなく、ほとんどの新車は道具としてみれば無難にまとまっている。一方であっと驚くような画期的な車、失敗を恐れないチャレンジングな車も減ってしまった……そう感じているユーザーは少なくないだろう。
しかし、初代プリウスがそうであったように、短期的に見て失敗作であっても、時代を変えるのは、常にチャレンジ精神あふれる商品なのだ。
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では、なぜ独創的な車が減ってしまったのか? それは、自動車開発の“ある部分”が飛躍的に進化したことが関係している。
文:鈴木直也
写真:編集部、Honda、NISSAN
独創的な車が減った背景にある開発の変化
最近の車は、デザインを別にすれば中身は金太郎飴みたいで、メーカーごとの個性が少なくなった。
多くの人がそんな印象を抱いているのではなかろうか。その最大の原因は、いろんな意味でコンピュータが進化したからといえる。
ここ10年でモノ作りのコンピュータ化は飛躍的に進化し、マーケティングの分野でもコンピュータを使った市場予測の精度が上がっている。
たとえば、CAE(コンピュータ設計支援)の進化によって、今やほとんどの技術的課題がコンピュータ内で検討可能となった。
最初は製図板をコンピュータ画面に置き換えるレベルだったCADは、他の部品と干渉しないかといった初歩的なことから始まり、プレスした時にシワが出ない金型形状はどうすべきか、最適な軽量化のためにはどこを肉抜きすればいいか、流体力学的な特性シミュレートして空力特性を改善する形状はどれか…等。ちょっと信じられないくらい高度化している。
最近では部品単位の設計支援にとどまらず、エンジンや性能や排ガスレベル、また車両走行時の挙動などが、かなり正確にシミュレートできるところまで進化。この“モデルベース開発”といわれる手法を使うと、試作車を作っての検証は1回でOKとなり、開発コストや時間の大幅短縮に貢献している。
効率化が画一化を呼び、ヒット車は小粒に
ただし、みんながこういう手法を使うとどうなるか?
設計ツールとしてのソフトウェアは、たとえば3D-CADならほとんどの会社が「Dassault」の「CATIA」を使っているし、モデルベース開発の支援ツールも「dSPACE」をはじめ、有名どころの大手数社。みんながパワーポイントを使うようになって、どこのプレゼンを見ても似たり寄ったりになったようなことが車の開発現場で起きているのだ。
企画やマーケティングも同様。「これからはSUVが売れ線だ」という消費者動向がいち早く分かったとしても、その市場に我先に各社が参入すれば未開の荒野もアッという間に耕されてしまう。
経営がリスクをとって「我が社は別の土俵で勝負する!」という決断がてきなければ、どのジャンルも勝者はいつも同じで、似たような車がひしめくことになる。
こういう状況の中では、ダメな車は量産化に至る前にコンピュータ内でダメ出しされてボツになってしまう。ヒット作も小粒になった代わりに、アグレッシブな失敗作も見かけなくなったのはそんな事情があるからだ。
商業的には失敗でもチャレンジ精神に溢れていたホンダ車たち
そもそも失敗作にも2種類あって、市場で売れなかったという「商業的な失敗」と、車としてダメだった「技術的失敗」がある。
このうち、誰が見ても「技術的に失敗だったよね」といえるような車は、多分ここ半世紀くらいは出てない。失敗作のほとんどは、市場動向の読み違い、コストコントロールの失敗、技術的・デザイン的冒険が裏目に出た、といったケースだ。
例えばホンダの初代インサイトは、最初から商業的な成功を狙って作られたわけではなく、世界最初の3リッターカー(100kmを3Lの燃料で走る。つまりリッター33.4km走る車)として企画された。
だから、コストも実用性も度外視で、専用の1L・3気筒エンジン、NSXと同じアルミボディ、空力に徹した2シータークーペと、技術的にはやりたい放題の意欲作。見事に燃費のテーマはクリアしたけれど、実用性が不十分だったから大した数は売れず、おまけに超高コストで大きな赤字を残したといわれている。
ちょっと前のホンダはこういう「ひょっとしてこういう車作ったら売れるのでは?」というチャレンジ精神が旺盛で、CR-Xデルソル、HR-V、エディックス、エレメントなどの失敗作がたくさんあった。
デルソルはトランストップという電動ルーフが有名だが、そもそも2シーターのパーソナルカー市場という、魚のいない池に釣り糸を垂れたような車。
2列横3人がけシートのエディックス、SUVなのにぺったんこなHR-V、観音開きドアのエレメントなど、どれも新しい市場を創ろうとして玉砕している。
決してホンダを馬鹿にしているわけではなく、こういうチャレンジ精神を発揮できる環境がひと昔前のホンダにはあった、ということだ。
もちろん、会社としては失敗作ばかりではやって行けないわけだが、ヒット作を狙って作れるなら誰も苦労はしない。こういう失敗作の屍を乗り越えたところにしか大ヒットは生まれない、そう考えるべきなのだ。
再評価されたパイオニアにみる“意欲作”の意義
また、歴史の風雪に耐えて後に再評価されるクルマだってある。
初代プリメーラや三菱i-MiEVあたりは、販売台数は振るわなかったが、自動車の歴史に残る車といっていい。
プリメーラ開発時は日産が901活動で世界最高のシャシー作りに燃えていた時代。商品主管だった津田靖久さんは、その前にVWとの合弁事業で座間工場でのサンタナ生産を担当されていた方だが、「あれは相当に勉強になった」と述べている。
前マルチリンク/後ストラットのサスペンションは、現在では考えられない贅沢な造りで、結果として「FFのハンドリングに革命を起こした」と評価される名車が生まれた。そして、その陰にはサンタナから学んだ欧州車テイストが注ぎ込まれていたのである。
三菱i-MiEVは、典型的な「生まれるのが早すぎた」車といえる。
この時代にピュアEVに挑戦するというのは、あり得ないほどリスクの高いテーマ。電池以外の投資を最小限としなければ、どう考えても超赤字事業となる。
こういう条件のなかでパズルを組み合わせていった結果、スマートとエンジンプラットフォームを共有化を図り、軽のマーケット向けには同じボディでエンジン車とEVを出す。さまざまなリスク分散が図られたのだと思う。
結果的には時期尚早で「世界最初の量産EV」というタイトルだけが残ったわけだが、そのチャレンジ精神は敬服に値する。
失敗作というのは当事者にとっては辛いものだけれど、自動車会社のみならず、社会全体にこういうチャレンジ精神を讃える文化がないと、本当に革新的なものは出てこない。
赤字すれすれの凡庸な車をダラダラ作るくらいなら、何年かに一回でいいから失敗を恐れない冒険的なクルマ作りに挑戦してもらいたものであります。
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