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【R230型メルセデス・ベンツSL】電動格納式ハードトップを初採用したスポーツカブリオレ

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【R230型メルセデス・ベンツSL】電動格納式ハードトップを初採用したスポーツカブリオレ

歴代モデルとバリオルーフ採用の5代目に迫る

“SL”はメルセデス・ベンツのモデルラインアップとしてはオープンエアというキャラクターゆえに本流ではないものの、ブランドの価値を高めて多くのファンから愛され続けるラグジュアリースポーツだ。第5世代となるR230型はシリーズ初の電動メタルトップを持つクーペ&カブリオレ。デビューから17年の濃密な歴史を振り返る。

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 メルセデス・ベンツのファンにとって、”SL”の称号は特別な存在だ。ラグジュアリースポーツとして、いつの時代もファンの目を魅了し続けてきた。

 現在にまで続く”SL”の歴史が幕を開けたのは、1950年代半ばのこと。1952年にプロトタイプレーシングカーとして誕生した300SLこそが、称号を掲げた最初のモデル。当初はロードカーとして市販する計画はなかったが、モータースポーツでの活躍が報じられるとセールスを望む声は徐々に高まり、結果的に1954年のNYショーでロードモデル「300SL(W198)」を発表するに至った。

 ガルウイングドアを採用した流麗なボディデザインを持つ初代のSLは、きわめて高価格であったにもかかわらず、高級車市場で支持を獲得。また、300SLとともにNYショーで発表されたオープンボディの廉価版モデル「190SL(W121)」の人気も高く、さらに1957年に生産中止となった300Sクーペの後継「300SL」を発表。両モデルともにセールスは1963年まで継続された。

 2代目のSL、W113は1963年のジュネーブショーでデビュー。エクステリアは、さらにスタイリッシュに生まれ変わりソフトトップ仕様のロードスターやハードトップのクーペ、さらにソフトトップの収納スペースをコンパクトなプラス2シートに転用したカリフォルニア・ロードスターをラインアップされた。 ルーフ中央部が左右よりも一段低くなるデザインのハードトップをパゴタルーフと呼ぶことは、メルセデス・ベンツのファンには常識。このW113型は、クーペは1967年まで、ロードスターは1970年まで生産されている。エンジンは2.3リットル直列6気筒(230SL)でスタートし、続いて2.5リットル(250SL)、2.8リットル(280SL)を搭載した。

 ここまで2世代にわたって市場で好評を博してきた”SL”は、1971年に発表されたサードジェネレーションのR107型で、さらに高性能なモデルへと変貌。よりロングノーズが強調されたスタイリングは、現代の目で見てもなお魅力的なもの。ボディは、ソフトトップと着脱式ハードトップを備えるSLのほか、4シータークーペ「SLC(C107)」を設定。生産はSLCが1980年まで、そしてSLは1989年までと長期にわたった。メカニズム面での最大の話題は、Sクラスから流用されたV型8気筒エンジンの搭載。SLの主力エンジンとなり、欧州では販売されなかった5.6リットル搭載の560SLを、最終進化型として投入した。

 そして、生産期間が18年もの長きにわたったR107の後継車となった4代目SL「R129」は、1989年に誕生。着脱式ハードトップを装備するのは先代と同様だが、ソフトトップは電動化され転倒時に乗員を保護するロールオーバーバーを装備し、大きな話題となった。 さらなる高性能化を象徴する存在として語られるのが、1992年に追加設定された6リットルV型12気筒エンジンを搭載する600SL。1994年のマイナーチェンジでは、車名表記”SL”の称号を数字の前に掲げるものへと変更。ハイパフォーマンスであるAMGモデルも用意されたほか、エココンシャスな新開発のV型6気筒エンジンをそれまでの直列6気筒に代わって搭載するなど、その進化は2001年の生産中止まで積極的に続けられた。

先進的な技術を投入。美しさが際立つR230の登場へ

 このR129型の市場を受け継いだのが、今回のテーマであるR230型だ。2001年の発表時、世界を驚かせたのはシャープな造形から一転したボディデザイン。ヘッドランプなどのディテールにも象徴されるように、ボディはダイナミックな曲線で構成。長年採用されてきたハードトップは電動格納式ハードトップ=バリオルーフへと変更し、オープン&クローズのプロセスなど、使い勝手は一気に向上した。

 搭載エンジンは、5リットルのV型8気筒(SL500)。それに続いて5.5リットルのV型8気筒+スーパーチャージャー(SL55 AMG)、そして3.8リットルのV型6気筒(SL350)、6リットルV型12気筒(SL600)などが登場している。2006年のマイナーチェンジでは、V型6気筒は新開発の3.5リットル仕様(SL350)にスイッチ。5.5リットルV型8気筒(SL550)が新たにラインアップされ、走りのレベルはさらに高まった。

 ちなみに、ボディデザインは伝統とモダンの融合により構築。象徴となるのが、1950年代の300SLの“フィン”と呼ばれる翼状のサイドエアインレットだ。デザイナーはスポーティなトーンを演出するため、そのモチーフを導入。ボンネットエンドの、左右にある4つのアウトレットも同要素が表現したものだ。

 2008年に再び行なわれたマイナーチェンジは、丸目4灯から新デザインのヘッドランプを採用するなど大がかりなものだった。進化はデザインだけでなく、メカニズムや装備面も向上。2012年に現行モデルのR231型にフルモデルチェンジまで生産されるが、マニアックなスペシャルモデルが生み出されたことも忘れてはならない。 2008年にSL65AMGをベースにクローズドボディで登場したSL65AMG ブラックシリーズはその象徴的な例といえる。

【前期型(2001-2008)】

R230は2001年7月にデビュー。まず、306psの最高出力を与えたSL500が登場し、同年秋に476psを発揮するSL55 AMGが追加された。翌2002年には、SL350に続いて245psの3.7リットルV6仕様もラインアップ。2003年1月に500psの5.5リットルV12ツインターボを搭載したSL600がフラッグシップモデルとして発表された。

装備面としては、電子式イグニッションキー、多機能ステアリングホイール、フルオートエアコンなどに加え、オプション設定ながらアダプティブクルーズコントロールのディストロニックや自動緊急通話システムのTELEAID、COMANDシステム、電子式タイヤ圧力モニターなどの革新的な運転支援システムを搭載した。

また、476psを発する5.5リットルV8スーパーチャージャーを搭載し、専用のエアロパーツ、スポーツサスペンション、強化ブレーキを纏い2002年にデビューしたホットモデルも登場。SL55 AMGは、2006年にスペックが見直されて最高出力を514ps、最大トルク720N・mにグレードアップするなど、進化を続け2008年にSL63AMGが登場するまで人気を博した。

【後期型(2006-2011)】

2006年のジュネーブショーでR230のマイナーチェンジを発表。SL500(北米ではSL550)に5.5リットルのM273型V8エンジンを搭載したのをはじめ、SL350に新設計のM272型V6エンジン(出力は11%向上)を搭載。7速ATの7G-TRONICやABC(アクティブ・ボディ・コントロール/SL500とSL600に標準化)、メルセデスのプロダクションモデルでは初めてブレーキバイワイア”SBC(センソトロニックブレーキコントロール)”の採用など、その内なる部分を刷新。同時にフロントグリルまわりを小変更したが大幅なフェイスリフトを実施したのは2008年。丸目4灯から縦長のヘッドライトに意匠をあらため、ヘッドレストから温風を放つエアスカーフが採用された。

また、AMGパフォーマンススタジオがプロデュースしたスペシャルモデル、”SL65 AMG Black Series”も見逃せない。最高出力を670㎰(SL65 AMG比で58ps向上)に高めたのに加え、250kgもの大幅な軽量化、強化サス&ブレーキ、前後トレッド(フロント97mm/リア85mm)の拡大など、ワイドなクローズドボディと超絶なる性能が与えられた。

 メルセデス・ベンツ伝統のラグジュアリースポーツ、SLクラス。その存在はこれからも、世界のファンを大いに刺激してくれるであろう。

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