起源はロータスとの協働プロジェクト
1960年代を迎える前から、欧州フォードは自動車の民主化を他メーカーに先駆けて実践してきた。そしてその頃から、追加予算での興奮も提供するようになった。1963年のロータス・コルティナは、ベーシックなモデルから誕生した高性能モデルだった。
【画像】高性能フォード ロータス・コルティナからフォーカス ST170まで フォーカス STも 全123枚
以来、同社の姿勢は変わらない。多くのメーカーも、比較的手頃なファミリーカーをベースにした高性能仕様や、市民にも手が届くスポーツカーを販売してきた。それでも、フォードほど連綿と作り続けてきた量産車メーカーは、他にないだろう。
その実現に向けて、これまでには多様なアプローチが取られてきた。速いフォードと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、現在ではRSやSTといった2文字かもしれない。
しかし、起源をさかのぼればロータスとの協働プロジェクトへ辿り着く。また、1980年代から1990年代にかけては、コスワースとのコラボレーションも積極的に展開された。スポーティな派生グレードとしては、比較的手頃なXRから始まった。
フォードは、2023年7月にフィエスタの生産終了を決めたが、コルティナから始まった、60年間に及ぶ欧州での歴史は揺るがない。今回は、各世代から順に5台のモデルを振り返り、高性能フォードの魅力を再確認してみたいと思う。
協力:ライハウス・カート・レースウェイ
興奮に欠けていた当初のフォード・コルティナ
欧州フォードにとって、革命的な変化となったのがロータス・コルティナだろう。白黒テレビからカラーテレビへ切り替わったように、1960年代の量産車ブランドへ鮮やかな輝きをもたらした。
フォードとモータースポーツという、重要な結びつきを欧州で構築することにも繋がった。このきっかけを生んだのは、デザイナーやエンジニアではなく、販売部門に所属していたウォルター・ヘイズ氏だった。
彼は1962年にフォードへ入社するまで、英国のタブロイド紙、デイリー・メールの副編集長を務めていた。その頃、フォードはコルティナの開発へ着手した段階にあった。
ヘイズは、タブロイド紙のコラム枠のため、ロータスを創業したコーリン・チャップマン氏へ記事の執筆を依頼した過去があった。以来、親交を深めていったという。
その原稿料は、だいぶ高額だったらしい。「ジャーナリストとしてかなりの金額を彼(チャップマン)に支払っています。わたしがロータスを創業したんじゃないかと思うほど」。と後に言葉を残している。
完成へ近づいた新しいコルティナは、優れたクルマではあった。しかし、興奮には欠けるとヘイズは考えた。
そんな時、AUTOCARで技術関連の編集者も務めていたハリー・マンディ氏が、ダブルオーバーヘッドカム(DOHC)のヘッドを、フォードの1498ccユニット用に開発したという情報を入手。新たな可能性を見出した。
ツインカムエンジンにアルミ製ボディ
本来はロータスの新型ロードスター、エラン用に開発されたヘッドで、60psから106psまで最高出力を高めることができていた。さらに、レースへ向けて一層の性能向上を目指し、コスワース・エンジン・チューニング社へ持ち込まれ、改良が加えられた。
1600ccクラスへ最適化させるため、排気量は1498ccから1558ccへ拡大。ポートの設計も改められ、特別な4気筒ユニットが誕生した。
ヘイズはチャップマンへ協力を打診し、グループ2レースの参戦規定を満たすべく、1000台のロータス・コルティナを生産する契約を締結。フォードで組み立てられた2ドアボディは、ロンドンの北、チェスハントに構えたロータスの工場へ運ばれた。
届けられたボディには、広範囲に改良が加えられた。トランクリッドとボンネット、ドアだけでなく、クラッチとディファレンシャル・ギアのケースも、軽量なアルミニウム製へ置換。トランスミッションは、クロスレシオの4速マニュアルが選ばれた。
フロント側のサスペンション・ストラットは短縮され、車高も落とされた。さらにリーフスプリングが支えていたリア側は、新開発のコイルスプリング式へ新装。デフ側に固定されたA型フレームで太いトルクを受け止め、横方向の安定性を高めていた。
ボディシェルは、リアシート側からリアフェンダー付近を中心に強化。スペアタイヤも移設され、バッテリーは荷室内へ再配置。前後の重量配分の最適化にも繋がっている。
前輪を浮かせて疾走したジム・クラーク
殆どのロータス・コルティナのボディは、ホワイトのボディにグリーンのサイドストライプというカラーで仕上げられた。ロータスのエンブレムが各所を飾り、5.5Jのスチールホイールが、凛々しい見た目を完成させた。
1963年1月に販売が始まると、瞬く間に英国のモータースポーツ業界が注目。世界中のサーキットで、秀でた能力を証明した。
特に成功を残したのは、レッドのボディで戦ったアラン・マン・レーシング・チームだろう。だが、レーシングドライバーのジム・クラーク氏によるドライブで、コーナー内側の前輪を浮かせながら疾走するホワイトのマシンも、強烈な印象を残した。
当時のAUTOCARも、高く評価している。「名前からイメージする、荒々しい気質や扱いにくさなど、オイルで手を汚すレーシングカー的な部分はありません」。と。
ただし、発売当初のロータス・コルティナは完璧とはいえなかった。2年間をかけて、量産車としての完成度を高めていった。
1速で75km/hまで引っ張れた高いギア比は、マイルドにチューニングされたコルティナGTのものへ変更。1964年式からは、アルミ製ボディパネルはスチール製へ置換。リア・サスペンションも、ラジアスアームとリーフスプリングのペアへ戻されている。
内容としては、モータースポーツと距離を置く変更ではあったが、耐久性や信頼性が意識され、ユーザーにはメリットのある内容といえた。動的能力には殆ど影響がなかった。
サーキットがホームグラウンド
今回ご登場願ったロータス・コルティナは、1966年式。2006年からデビッド・クック氏が大切に維持している1台だ。ほぼオリジナル状態にあり、改良された点といえば、スプリント・カムシャフトが組まれていることくらい。15馬力も増えている。
デビッドによると、驚くほど信頼性は高いという。着座位置が高めの開放的なキャビンへ身を置くと、正面にはメーターが6枚並んだ、シリアスなダッシュボードが伸びる。ステアリングホイールは、クラシカルな3スポークのウッドリムだ。
運転席からの視界は素晴らしい。人間工学に基づいて、すべての操作系が適切に配置されている。
ストロークの短いシフトレバーを1速へ入れ、重めのアクセルペダルを傾ける。ツインチョーク・ウェーバーキャブレターから、記憶通りの唸りが放たれる。サーキットがホームグラウンドであることを実感させる。
1.6Lのツインカム4気筒エンジンは、1500rpm辺りから勢いが増し、6500rpmのレッドライン目掛けて美声を高めていく。リミット間際では、少し息苦しそうになる。
ペースを速めるほど、57年も前に作られたクルマだということが、信じられなくなる。ボディは軋む音を一切立てず、しなるような仕草もない。シャシーは落ち着いていて、ボディロールは最小限しか生じない。
コーナリングは、目をみはるほど正確。許される範囲で攻め立ててみたが、内側のフロントタイヤを浮かせることはできなかった。クラークのように。
ロータス・コルティナ(1963~1966年/英国仕様)のスペック
英国価格:1100ポンド(新車時)/7万5000ポンド(約1350万円)以下(現在)
販売台数:3306台(合計)
全長:4267mm
全幅:1600mm
全高:1372mm
最高速度:173km/h
0-97km/h加速:13.6秒
燃費:6.4-8.9km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:825kg
パワートレイン:直列4気筒1558cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:106ps/5500rpm
最大トルク:14.7g-m/5500rpm
ギアボックス:4速マニュアル(後輪駆動)
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